「そうか、保留か」(折木奉太郎)
TVアニメ『氷菓』第一話「伝統ある古典部の再生」のネタバレ感想です。
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「省エネのために、全力を尽くそう」(折木奉太郎)
原作『氷菓』のファーストエピソードに、シリーズ第4巻『遠まわりする雛』の短編「やるべきことなら手短に」を、加えて描かれたアニメ第一話。時系列で並べているというのもあるかもしれませんが、この二つのお話をセットにすることで、より折木奉太郎という人間の「矛盾」(里志の言葉を借りれば、「屈託」)が鮮明に映されている。
「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」(折木奉太郎)
省エネ主義を標榜しながらも、不慣れな千反田さんに対して、奇策で迎え撃ってしまった奉太郎。その態度を指して、福部里志には「保留」と言われてしまうわけですが、この物語においては「保留」することができるということが、一つ「かけがえのない」こととして描かれていきます。
誰もが「保留」することができるわけではないのです。
いつでも思いとどまれるわけでもない。
ゼロ年代のサブカルチャーでは、「決断主義」というものが横行していましたが、ある意味それのカウンター。安易に決断せずに留まる、灰色で「いられる」ということの意味が、今後丁寧に描かれていくと思います(最新の第四話では、色に関するくだりもありますね)。そもそも件の「氷菓事件」が、その「灰色」であることについて語っている物語でもあるので。
その一方で、千反田えるという少女に関しては、すでに一つの「決断」が為されている。これまたゼロ年代に大流行した「契約もの」のように、彼女はすでに一つの契約をして、日々を生きているのです。それが、ともすれば灰色に感じがちな日常に対して、いろんな疑問や輝きを見出してしまう彼女の姿に繋がっている。
「私、気になります」(千反田える)
そして、自身で見つけた、日常における「気になる」点の解決を、折木奉太郎という他者に委ねてしまう(あるいは、委ねざるをえない)という彼女の姿が、遠回しに千反田えるという一人の少女の存在そのものに光を当てる様に、ぜひ痺れてください。
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