「お前はいつも強くない」(阿良々木暦)

 アニメ『偽物語』第肆話「かれんビー 其ノ肆」のネタバレ感想です。


「ぼくや火憐ちゃんや月火ちゃんが、自分の弱さを受け止めなければならないように――お前は、自分の強さを受け止めなければならない」(阿良々木暦)

 ちょうど『猫物語(黒)』を読み終わったところだったので、ここで語られる「強さ」というものがなんとなくイメージできるようになってきました。ようはあまりに正しすぎて、かつ火憐ちゃんとは違って強すぎるというのが、羽川翼という少女なのでしょう。阿良々木くんが今回語った正義の第一条件は「強いこと」ですが(強さが正しさを担保する)、自身が課した「正しさ」を、造作もなく達成できてしまうほどに、羽川翼は強かった。

 ゴールデンウィークのエピソードは羽川さんが強さを受け止められなかったがゆえに起こったものだったというのは、『化物語』でもさらっと語られていたような気がしますが、ということは、白の方はその強さを受け入れるエピソードなのだろうな、と。

 そうした本物の葛藤もまた楽しみなところですが、今回は『偽物語』。徹頭徹尾、偽物たちの物語。

 他の人はそんなに強くない、と。自分たちファイヤーシスターズは正義の味方を自認したところで、貝木泥舟を前に、火憐は正義を行使できなかったように。そして、その弱さを、火憐は受け入れることができなかった。

「あたしは正しい」(阿良々木火憐)

 なので、阿良々木くんがご丁寧にも語ってくれているとおり、「かれんビー」という物語は、この「弱さ」(羽川翼という本物に対する偽物)を受け入れる話なんですよ。「つきひフェニックス」での「偽物」とは、微妙に意味が全然違ってきてます。

 そして、今回なし崩しに達成された忍野忍との和解もまた、彼らが「偽物」であることを受け入れた(あるいは現状を甘んじた)シーンなんですね。忍の甘言通りに許して殺してしまったら、阿良々木暦は文字通り本物の人間に、忍野忍は怪異の王らしく消えることとなる。だけど、それは出来ないというのが、阿良々木さん。

「僕達は死ぬまで生き続けるんだ」(阿良々木暦)

 本物は本物らしく、偽物は偽物らしく、死ぬまで決して変われず救われもせず、それでもなお生き続けなければならない。これが西尾作品の基本軸になるんじゃないか、と思っています。そして、戯言遣いシリーズや刀語といった完結したシリーズを考えれば、後者の「生きる」というのに重点を置かれているんじゃないかな、と。

#ちなみに、結構重要な点として、阿良々木さんは正義の味方としても偽物(羽川翼との対比)だけど、人間としても偽物(半吸血鬼)であるという事実があります。この二つの「偽物」を押さえておけば、少なくとも『偽物語』を理解していく上で、そこまで外さないんじゃないかと。

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