STAR DRIVER<スタードライバー>輝きのタクト 3 【完全生産限定版】 [Blu-ray]「あたしは、それでもクレイスは幸せなんだと思う」(ニチ・ケイト)

『STAR DRIVER 輝きのタクト』第二十二話「神話前夜」のネタバレ感想です。


 神話前夜。
 マルク、クレイス、コルムナという三人で語られてる、文字通り「劇中劇」。ゲーム版「銀河美少年伝説」でも、タクトたち三人をモデルに書いているという旨の発言をサリナ部長はしているんだけど、ものすごい勢いで「劇中劇」。

 そして、どういう理由かは不明ですが(サリナ部長とサカナちゃんの関係は不明ながらも)、「イカ大王」という共通したワードから、(少なくとも視聴者的には)「神話前夜」と「イカ刺しサム」は繋げて考えていいっぽい。

#不死になった王(コルムナ)は、その後「イカ刺しサム」の物語で死ぬことがなることから、時系列的には「神話前夜」→「イカ刺しサム」。そして、「イカ刺しサム」は、ヘッドのためだけのサカナちゃんの物語だから、タクトたちの物語はこの後。

 「イカ刺しサム」に秘められた、サカナちゃんの想いは第20話の時点で解き明かせるようになっているんだけど(詳しくはこちら)、そこではっきりとわからなかった場合はこの回で、それ以前に起こっていたことも含めて納得出来るような、そんな仕掛けになっている。

 簡単に説明すると、イカ刺しサムの物語は、神話前夜の「繰り返し」になっているんだと思います。ヘッドがサリナ部長に言っていたことの引用になりますが、

「だって、あれ以上続けると、今度はマルクが船の魔力に取り憑かれて、クレイスがさらに悲しむ場面が増えてしまう」(ミヤビ・レイジ)

 船の魔力に取り憑かれたマルクの「if存在」として(世界観的には遠い未来の出来事として)、サムが描かれているんですね。銀河の海へ飛び出していくために、本当に大切だった少女を殺してしまったサム。コルムナと同じように愛ではなく、野心を選んだ少年。

 ただ「イカ刺しサム」の物語は、単純に「歴史は繰り返す」ということを伝えたかったのではなかった。なぜなら、そこにはちゃんと「続き」があったから。「神話前夜」の物語を受けて、サカナちゃんは一つ「希望」を乗せた。人は、悲劇に終わった物語を前にしたとき、ほんの些細な願いを抱く。それは、こうだったら良いのにな、という小さな夢。サムは愛(=少女)よりも野心(銀河の海に旅立つこと)を選んだけれど、本当に大事なものは何だったのか、最後には気づいた。大いなる船(ザメク)に握りつぶされた魔女アイン(アインゴット)の力が、少しだけ効いた。

#ゲーム版「銀河美少年伝説」の描写から、カタシロの第1フェイズ(真実の眼?)は、ヘッドに受け継がれていることが窺える。

 何度も書いていますが、サカナちゃんは、暗にヘッドが超銀河文明の力を欲しているのではなく、本当はソラさんが欲しかったのでしょう、と言いたいのだと思います。だから、それを認められない――なぜならそれを認めるということは、結局ソラさんはカタシロの方を向いていたのだから、自分が振られた=自分が負けたことを認めることになる――ヘッドは、サカナちゃんを追い出した。そして、今回の「神話前夜」、息子の決意の言葉を聞いてもなお、気持ちは動かない。

 この「神話前夜」の物語を受け、あくまで「イカ刺しサム」の物語しか、紡ぐことが出来ない(だからこそ、それを転覆する力を欲する)ヘッドと、別の可能性を見せんとするタクトの対比が素晴らしかった。

 だけど、それはただ単純にヘッドがダメでタクトが良いという話ではなく。やっぱり、そこはコルムナのように、ヘッドのように決してならなかったスガタがいたから、なんですよね。カタシロ・リョウスケとツナシ・トキオのように、どうしようもなくなる前に、拳を交えて、お互いの気持ちをぶつけ合う相手がいたから。

#スガタだって、力に興味がなかったわけではない。でも、それがすべてではなかった。

「もし僕に命のオーラの輝きがあるなら、それは船を動かすためのものではなく、彼女の笑顔を見るためのもの。たとえナイフを持っていたとしても、それは彼女を守るためのものです」(マルク/ツナシ・タクト)

 だから、サリナ部長の問いかけに答えたこの言葉は、決してタクトだけのものではなかったはず。ワコの誕生日の日、決してスガタが自分からは贈れなかったプレゼントを、タクトが届けたように。輝いていたナツオから受け継いだタクトの「輝き」と、ずっと誤解され続けても隠し持ち続けていたスガタの「ナイフ」。

 この二つが揃って、初めて少女の「笑顔」を「守る」ことが出来る!

 それまで悲劇に終わっていた二つの、二人ぼっちの物語。『イカ刺しサム』は少女やサムだけでなく不死の王も救われず、『神話前夜』も実はコルムナを救済することが出来ていない。これは結局、コルムナたちの時代に、マルク少年がいればあるいは……? と形にはなっているものの、悲劇に終わっている。

 第七話(だったかな?)で、サリナ部長は、タクトがこの島に来るまでワコとスガタが幸せになる未来を想像できなかったと言っていた。そして、ゲーム版の補完でも、三人目の登場によって、この「神話前夜」がどうなるのかを見ていた(この時点では、救いようのない悲劇だったと思われる)。

 そんな二つの悲劇を受け、コルムナとクレイス、そして、マルクが揃った現代の物語がどうなるのか? やっぱり三人の物語の着地は、第2クールOPラストが良いなぁ、などと思ったりします。

→PSP用ゲームソフト『STAR DRIVER 輝きのタクト 銀河美少年伝説』の感想/プレイ日記はこちらからどうぞ。

→Blu-ray&DVD第3巻から再度追っかけます!

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