「俺いま、『DEATH NOTE』のジェバンニな気分」(高木秋人)

『バクマン。』第三話「親と子」のネタバレ感想です。ジャンプではなくジャックかー。ややこしいので、感想では「ジャンプ」に統一しますね。


「もうハンパなんかやらない マンガ 亜豆美保 命を懸けるつもりで」(真城最高)

 第一話の感想にも書きましたが、「日常」の輝きとしての亜豆美保の「結婚相手」と、「競争」の果ての(博打打ちではない)「漫画家」を同義に描くのが、『バクマン。』の特徴です。競争して競争してそれでも叶わないかもしれない「漫画家」はさておき、「日常」を彩ってくれる亜豆(亜豆母)と結婚するのは、サイコー(おじさん)にとって実は簡単なのです。亜豆母が言っているように、

「お互いに好きっていってくれるのを待ってたのかも」(亜豆美雪)

 命など懸けずとも、マンガなんて書かなくても良い。ただありふれた言葉として、「好き」といえば、ただそれだけで良かった。だけど、それを二人とも良しとはしない。「好き」なんて特別な言葉、そんな簡単には言えないんだ

 シュージンは「どこまで純情なんだよ」と叫んだけれど、確かに二人は超純情なのかもしれないけれど、個人的にはアリ。というか、そっちの方がそれこそ「好き」だなぁ。逆に安易に「好き」と言っちゃって……というエピソードが描かれるのがシュージンの方なんですよね。こういう対比もこれから効いてきます。

 でも、そんなこと言ったって、漫画家にもなれず、亜豆母とも結婚できなかったおじさんは不幸じゃないの?とカウンターが来そうなところに、ちゃんと亜豆母が答えるのが本当に素敵。言ってみれば、フった本人なんだけど(笑)、夢と不安にまみれる若人たちのためにも言いたいことははっきりと言います。おじいちゃんから背を押され、父親からも励ましの言葉をもらい、果てにはおじさんの思い人からのエール。

「その中に、男の浪マンっていうヒーローが出てくる話があって それを読んだ時はちょっと泣けちゃった。真城くん、やっぱりこういう気持ちだったんだってわかって」(亜豆美雪)

 亜豆母との結婚を目指して、おじさんが漫画家を目指した日々は、競争の中を駆け巡った日々は決して無駄ではなかった。その夢は結局叶わなかったけれど、ちゃんと「好き」だという気持ちは「届いてる」。もちろん亜豆母とおじさんのエピソードは、サイコーたちのifストーリーなわけで。たとえ、亜豆さんとサイコーが親たちと同じ道を辿ったとしても、そこに周りが予感するような不幸は存在しない。

 ここまで周りが障害をぶっ飛ばしてくれるなら、やらなきゃ本当に主人公じゃないぜっ!!とばかり、漫画家になる決意を新たにするサイコーが熱いです。

「これでやらなきゃ男じゃない…… 男じゃねえよ!」(真城最高)

 ここまでお膳立てされなきゃ、現代の物語は動かねえのか!という突っ込みはひとまず置いといて、ここはひとまず熱く燃えておきましょう。あんまりリアルに考えちゃうと、さりげなく亜豆母が「真城くんはわたしの手紙とっておいてくれたんだ」という言葉の真意に気づいてしまいます。真城くん取っていた=亜豆母は捨てて、今をエンジョイしてるとか、『DEATH NOTE』ばりに台詞を深読みできる『バクマン。』は、ロマンチックでもありリアリスティック、そんな物語なのだ。最後のでもうなんか台無しだな!(笑)

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