「だから、その夢が叶ったら、結婚してください!」(真城最高) 

 アニメ『バクマン。』第一話「夢と現実」のネタバレ感想です。


「絶対に漫画家になってやる。そして、僕は空豆と結婚する!」(真城最高)

 インターネットの普及によって、メディア側の権威が落ち始めて(かつ個人からの発信がしやすくなったこともあり、大手サイトと個人ブログなどがユーザーの観点から並立して並んでいる現代(その辺りを詳しく書いてるのはこちらになります)。直木賞だとか芥川賞なんかを取った作品の隣に、萌え萌えな同人誌が並んでいる本棚も珍しくはないですよね(まあ、僕の本棚がそんな感じなんですが(笑))。読者にとって、今はそんな時代。

 一方で、「創る」側の人にとっても、大きく変化している時代でもあります。
 iPadやkindleなんかのデバイス面も普及しつつあり、徐々に出版社を通さずとも個人で小説や漫画を書いてユーザーに届けるシステムが構築されつつあるわけですが、そんな時代に少年達が『週刊少年ジャンプ』の連載を勝ち取るという「椅子取りゲーム」に挑む! というのが熱いですね。

 最近だと、『けいおん!』なんかが代表だと思うんですが、「日常に“輝き”を求める」物語類型というのがありまして。過度の「競争」をして、成功とか出世しなくとも、日常の中に「輝き」や「幸せ」がある(見いだせる)というのが、主だったストーリーライン。そういうのがある一方で、『バクマン。』は真逆の路線。

 サイコーは退屈な毎日を嫌悪しつつも逃れることができなかった。だけど、そんな「日常」は亜豆との「約束」によって、あっさりと吹っ飛ばしてしまいます。

「僕が絵を描いて、こいつが原作。だから、僕たちの漫画がアニメになったら、ヒロインに亜豆さんを予約というか……」

(中略)

「だから、その夢が叶ったら、結婚してください!」(真城最高) 


(中略)

「絶対に漫画家になってやる。そして、僕は空豆と結婚する!」(真城最高)

 競争の果てにある「輝き」に照準があった瞬間、無味乾燥で殺伐としている(かもしれない)「椅子取りゲーム」にサイコーは挑む決意をします。ここで、亜豆の「結婚相手」という限られた椅子と、博打打ちではなく漫画だけで食っていける「漫画家」という限られた椅子が、同義に描かれる。当然といえば当然ですが、日常を輝かせてくれる「愛する人」と、競争の果てに得られる「安定した職」は切っても切り離せないのです(笑)。

 とまあ、冗談はさておき。

 ここが非常に面白いところですね。
 『バクマン。』の好きな部分でもあります。

 先ほどは、『けいおん!』で描かれる日常の「輝き」と、『バクマン。』で描かれる競争の「輝き」を対比する形で書きましたが、そういう意味では『バクマン。』の方はもう少し「その先」――その両義である二つを内包する形で――を描こうとしているのかな、と思ってます(これについては、もう少し先で高木秋人が思わせぶりな話をしますし、現在連載中の展開を思うと、腑に落ちるかと)。『けいおん!』よりもどっちかというと、『バクマン。』の方が僕はしっくりと来るんですが、その辺りが原因なのかなぁ、と。

 その辺りの部分を再考していきたいというのもあって、時々アニメの方の感想を書こうと思います。ついでに、漫画の方も再読しようかな。

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