「絶園の魔法使い」が!(鎖部葉風)

 城平京原作『絶園のテンペスト』第十四話「大渦巻(メェルシュトレエム)に呑まれて」のネタバレ感想です。ちなみに今回のタイトルは、エドガー・アラン・ポーの短編小説。


「一族内に殺人を犯した者はいません 犯人は一族にいないのです!」(鎖部哲馬)

 あー、もう真広への自信満々な演説から、愛花殺しの犯人が判明し逆転か……と思いきや、さらにあっさりと逆転されてしまう左門さんがたまらなく可愛い。何だろうな、ここまで不憫な人も珍しい。渾身の策を何度も練っているにも関わらず、決して逆転できない御仁。美味しいよ、すげー美味しいキャラだよ左門さん。『絶園のテンペスト』で最萌キャラ。

 左門さんはさておき、またまた面白い展開になってきてます。魔法によって、この世界では殺人を犯すとすぐに露見してしまう。

 そして、それがわからない場合はただ一つ。
 はじまりの樹に赦された鎖部の者だけ。しかし、罪を許されるためには儀式が必要であり、鎖部の人間とて完全には逃れることはできない。にもかかわらず、愛花の犯人は見つからない(鎖部の中にはいない)という展開。

 そこで示唆されたのが、「はじまりの樹」の理に影響を受けない、「絶園の樹」の御子――すなわち、絶園の魔法使い――の存在なんだけど、これはさすがに愛花なのかなー。葉と花がどちらも「樹」に関わっていますし、葉風も愛花も現在過去に置き去りにされている(どちらも現在時空では死んでいる)という点で非常に似通っているので、いちいち怪しい。



 しかし、この吉野の台詞は、

 ――おかしい
 魔法の網に掛からない犯人が他にいるとでも……!?(滝川吉野)


 まるで彼が愛花を殺した犯人を知っているかのようだなぁ。愛花とのデートを一度すっぽかしている理由といい、彼には何かあるとは思っているんだけど、どういう役回りなのかなぁ。もう一度、彼の台詞に着目して読んでみようかな。彼は本当に愛花の死の真相を辿ろうとしていたのか?

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