「その時は、黒<ヘイ>が教えてくれる」(銀<イン>)
DTB黒の契約者外伝第四話のネタバレ感想です。流星の双子と同じく、ラストに希望が残る展開は良かったー。
◇
外伝最終話を見て、思い浮かべたのは、流星の双子最終話での、この会話。
「終わったな――」(小林悟郎)
「いえ、ここからが“はじまり”です」(霧原未咲)
三鷹文書の予言阻止を狙って組織された三号機関にとって、災厄が放たれてしまっては、組織としての存在意義に関わる。ゆえに、実質の敗北宣言であるゴルゴ課長の言葉に対して、未咲さんが言ったのは「ここがスタートライン」であるという言葉。これは何にとってのスタートかというと、もちろん前期ラストで黒<ヘイ>と未咲さんが選んだ第三の道――契約者と人の共存。未咲さんは貫いたのだ。第一期で思い描いた、夢を。星に願いを掛け続けることを。
結局のところ、この『黒の契約者外伝』と『流星の双子』は、改めて黒<ヘイ>に問い直すということが主眼になっている物語なのだ。第一期で彼は選択した、いや、文字通りゲートと「契約」した未来を本当に生き抜く覚悟はあるのか?と。
やっぱり、それを今回明確に描いてくれたのが嬉しい。
イザナミ化することによって、黒<ヘイ>を傷つけてしまう。だから、自分を「殺して」と黒<ヘイ>に言い続ける銀<イン>なんだけど、そこに黒<ヘイ>の意志は当然ながら、ない。そして、もう一つないのは「どうしても生きていたい」(=黒<ヘイ>と一緒にいたい)という銀<イン>の気持ち。一緒にいたいのにいられないという二律背反の想いのようでいて、黒<ヘイ>に殺される覚悟をしてしまっている(だからこそ、「殺して」と言えてしまう)。
だけど、ラストで謎の光と会話している時の、彼女にそういう「覚悟」は見られない。彼女は、こう言うのだ。
「その時は、黒<ヘイ>が教えてくれる」(銀<イン>)
これは、きっと黒<ヘイ>が選んだままに、「生きる」覚悟も「死ぬ」覚悟もできているということ。先ほど黒<ヘイ>に再度問い直していると言ったけれど、もう少し正確に言うなら、きっと銀<イン>にも問い直しているのだ。それでもなお、黒<ヘイ>と共に在りたいのか?と。黒<ヘイ>と銀<イン>が一緒に生きるというのも、何度も言ってますが、人と契約者の共存。前期ラストで「一人にしないで」(=一緒にいて)と叫んだ彼女にもまた、問うている。
そんな二人が改めて出会って、何を願ったのか?
第一期で、選んだ未来の結果として(というか、実際その「未来」を生きてみて)、銀<イン>はイザナミ化し、より一層契約者と人の共存は困難となった。
『流星の双子』では黒<ヘイ>の望んだ未来とはまったく違った、紫苑の夢(契約者のいない世界を作ること)が肯定されもした。
こんなにも二人にとっては生きにくい世界で。
それでもアンバーは災厄が生まれることを願っていたし(彼女は予言書通りになることを望んでいた)、未咲さんもまた災厄を決して終わりだとは認識していない。
そして、
「まだ間に合う」(銀<イン>)
と言った彼女。だけど、なぜだか「災厄」は表れている(=間に合っていない?)。今までずっと隠れていた、BK201の能力が復活したことといい(それは第一期の人間と契約者の狭間を生きる男の復活でもある)、やっぱり願わずにはいられない。
こんなにも生きづらい世界で、生き難い世界でも二人は生きようとしたのだと。
◇
岡村天斎監督をはじめ、スタッフの方々、素晴らしい作品をありがとうございました。この外伝を待ちに待っていた八ヶ月間は、ともすれば放送していた三ヶ月よりも幸せの日々だったかもしれません。
これまでずっと僕の感想を読んでくださった皆さんも、今までどうもありがとうございました。製作者の方の言葉を信じるなら、これにてダーカーの世界での物語はおしまいですが、また何か縁がありましたらお会いしましょう。ではでは。
→「ずっと一緒にいる」という言葉から考える、契約(未来)と再契約(いま)/あと理想的なプロポーズの話とか。
→前期のファンブック発売の際、発売当初は入手困難な状況だったので、予約しておいた方が良いと思います。
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→前回黒の契約者外伝第03話の感想へ
→岩原裕二『Darker Than Black−漆黒の花−』の感想インデックスへ
→第一期『Darker Than Black−黒の契約者−』の感想インデックスへ
→『Darker Than Black−流星の双子(ジェミニ)−』の感想インデックスへ
コメント
こんばんわ。
かもめさんには、先日はチャット会まで開いていただき恭悦至極に存じています。
・黒の契約者外伝
本当に面白かった。時系列では1期と2期の中間の物語ですが、
内容はシリーズの集大成と言える出来栄えだったとおもいます。
外伝視聴後に双子をみていくとグッくるものがありますね…。
今度一期から全部見返してみたいです。
・黒と銀
やさぐれます(笑)そりゃあ、やさぐれますとも!
人と契約者の共存という夢を砕かれたというのもちろん、
黒さんは1期のラストで共存という選択をしたことによって、大切な人たちを失くし、
最後に残った大切なものが銀であって、そしてクロードが言っていたように、
2人で安寧に暮らせる日が来ることも夢見ていたのだと思います。
(1期で南米時代でのアンバーとのやり取りに黒にそういう気持ちがあったと察することができると思います。
しかしそれも、イザナミの覚醒により崩れ去ってしまったわけで…。
そして双子の選択ではかもめさんの言う通りの選択を黒がとってくれたと願わんばかりです。
・クロード
契約者が人に使われる存在となってしまうのは、社会的要因が大きいのでしょうが、そうした状況を変えようとしていたのでしょうか。
彼は根っからの契約者至上主義者でしたが、アンバーや黒やアルマなどと同じく契約者の未来を見ていたのでしょう。
憎むべき相手でしょうが、私は野良犬ともども好きですよ。
さて、長くなってしまいました(汗
思い起こせばダーカーという作品に出会って何年でしょうか…。
ここまで虜にさせてくれたこの作品を作ってくださった岡村監督を始め、制作スタッフに最大限の感謝の言葉を。
外伝で十分満足したので、謎はまだ残っていますがこれで終わりだとしてもうなずけます。
もちろん新たな発展を遂げてくれるのなら嬉しいですが(笑
まぁあ、なにはともあれ…
岡村監督の次回作に期待!
>労馬さん
どうもです。チャット会、盛況で嬉しかったっす。
外伝、本当に面白かったですよねー。第一期とは違ったスタンスで描かれるかと思いきや、一貫して同じテーマで描かれていたので、満足度が高いです。というか、ここまで深く掘り下げてくれたからこそ、最後に黒<ヘイ>が選べたにせよ選べなかったにせよ、その選択に納得してしまう。
そりゃあ、もう、やさぐれちゃいますよね。これで、双子第一話を見たら、繋がるわけですねー。んー、素晴らしいッス。二度美味しい物語。
安穏に二人で生活する、そんな普通の夢でさえ、本気で取りに行かねば叶わないという。
だけど、そもそも願い事なんて願えなければ叶うはずもないわけで、やはり彼らがそう選んでくれたことを願うばかりです。
クロードもいいキャラでしたね。実際のところ実に契約者らしい、合理的な男だったように思います。銀<イン>や黒<ヘイ>、アンバーなどの思い描いてた未来は、やはり契約者としては異端なわけで。
そういう意味では、なかなか「らしい」男だったなぁ、と。こういう人も良いですねー。
数年間、この作品が自分の中に在ったという事実が、本当に何にも増して嬉しいです。
できれば同じ作品が良いですが、別の作品でも、そんな感傷を抱いた者同士みんなでまた集まれると良いですね。
岡村監督の次回作、本当に楽しみッス!!
かもめさん、こんばんわ。チャット会ではお世話になりました。
最終話視聴して間がなく、考察がこなれていなかったのですが(その割りに言いたいこと言ってましたが・笑)皆様との会話で補い合い、推論に方向性が定まっていく過程は楽しいものでしたね。
ところでアンバー=星見様説ですが、もっと単純に考えて姉妹、それも一卵性双生児であったならどうでしょう?
DTB世界では、兄弟や双生児が物語の重要なポイントに配されていますし、契約者とドールの双生児、という設定も面白いかと。双子の共感能力でキャッチしたアンバーの見聞を、星見様が予言の如くつぶやいていた、とか。
ただし、黒さんの老婆タラシは変更無しですが(笑
黒は、自分の大切な人が次々に死んでゆくことに傷つき恐れ、それ故に好意を寄せてくれる者に対し、更に一歩踏み出した関係を構築することが出来なくなったのではないでしょうか。
「これ以上大切なものを失いたくない」…もしかして銀は、おそらく黒のたった一つであろう望みを叶えるために、か細い体でイザナミを抑え込み、黒に決断を下すまでの猶予を、人類には災厄に備えるための時間を与えるための行動を起こしたのでは、と考えるようになりました。
銀の自我までも飲み込むことで、無慈悲に全ての生命を吸い取るものに変貌する存在が“イザナミ”だと仮定するならば、白い銀(本来の銀)を抹消することでその力を削ぎ、災厄を「希望」に変えうる可能性が生まれた、とは考えすぎでしょうかね。
コピーされた少年・銀に入り込んだものが、銀を消されて不完全体となったイザナミ(金の真理くん→銀のサイヤくん?笑)だと仮定するならば、今度は彼が銀の想い人である黒を待っているのかもしれません。
そして、お互い取り残されることを極端に恐れていた黒と銀の願いが叶えられるのならば、銀の魂はきっと黒の中に存在するのだと信じたいです。
>れおぽんさん
こんばんはー。返信遅くなって申し訳ないです。チャット会、勢いがある時にやった方が面白いなーと感じてます。みんなの方向性が固まっていない、けど、発散したい「何か」があるという状態がイイッスね。
おー、ここで双生児設定が来ますか。
兄妹や双生児と言った血縁関係があるというよりは、どこか「似ている」という感覚が強かったので、そういう発想はしてませんでした。面白いッスね。
年をとり続けた星見様と若くなりつづけたアンバー。違うとようで、似ている二人に何か関係はあったんですかね。
大切な人を失いたくないという「願い」だけではどうしようもない(同じく人と契約者の共存を願うだけではどうにもならない)。ただ願うだけではやっぱり足りなくて、では何をすればいいのか、そんなことを考えるための時間を銀<イン>は与えたかったんじゃないですかね。
良くも悪くも命を賭して、自分の夢にかけた紫苑は願いを叶えているので、黒<ヘイ>にもまた近い覚悟を迫っているのでは?と感じます。
双子ラストでイザナミの方も、かなり物わかりが良くなっている印象を受けたので、何かしら銀<イン>が行動したのだろうな、と思ってます。れおぽんさんが仰っているようなこともあったのかも。
だけど、それはそれで蘇芳と紫苑のやり取りの繰り返しになってしまうので、何か別の方向を模索したと考えたいですかね。やっぱり二人とも生きていてほしいので!
こんばんわー、またコメントしに来ちゃいました(汗
いえ、漆黒の花最新話を見てテンションが上がったのと、
自分もれおぽんさんに習って最後にネタを投下していこうかと思いまして(汗
・アンバー=星見様説
を議論しているときに思ったことです。
契約者としては間違いなく最強の部類に入るアンバー「時間渡航」ですが、
その能力を使ったとしても、
ゲート誕生以前に戻れるんですかね?
戻ったとしても、溶けるちゃうような…
・札幌
でイザナミが蘇芳を助けた理由
というのは
おそらく、ジュライが彼女を助けるように依頼したんじゃないですかね?
ん…、これって前に誰か言ってたかな…?
以上チャット会で話しそびれたネタなんですけど、折角ですので…
それにしても今季は何を見たらよいのやら
>労馬さん
どうもです。返信遅くなって申し訳ないです。
>契約者としては間違いなく最強の部類に入るアンバー「時間渡航」ですが、その能力を使ったとしても、ゲート誕生以前に戻れるんですかね?
これは僕ができないと考えてます。あくまでも偽りの星が能力を持っている形を想定しているので(BK201という星が力を持っている)、その星がない時代は能力の有効範囲外かなぁ、と。あと、対価の関係でも厳しいんじゃないかと思ってますが(いや、あの対価って遡る時間は関係ないんでしたっけ?)。
>でイザナミが蘇芳を助けた理由
んー、銀<イン>が蘇芳を庇ったのかと最初は思いましたが、今となってはイザナミが目をさましてすぐでしたので、イザナミの暴走であり、蘇芳を助けたのは偶然だったのかな、と思ったりしてます。
なにかジュライが銀<イン>と繋がっていそうな描写ってありましたっけ?
>それにしても今季は何を見たらよいのやら
個人的なオススメなら、今期はダントツ『世紀末オカルト学院』ですねー。ものすっごくB級アニメですが、ノストラダムスとかノスタルジーな内容です(笑)。
あとは完全におバカなアニメ『アマガミSS』とか。
初めまして。厘と申します。
今更になってDTBの魅力にドップリはまってしまい、いろいろな考察サイト様を巡るうちに管理人様のブログにたどり着きました。
毎回なるほどなあ・・と深い考察に考えさせられてしまします。
特に、「改めて黒に問い直す」という視点が納得させられました。外伝でも感じたのですが、黒と銀の二人は全力ですれ違っているんですよね。
「信じて。」と言った後の銀に黒は「お前こそ俺を信じろ。」と返していますが、これは銀に対する答えではないんですよね。「分かった、お前」を信じる。」という。結局独りよがりになっていしまっていて・・・・。
個人的には銀は生きているのでは・・と思っています。
黒が銀に見せたあの笑顔、実はあれこそが一期でアンバーが言っていた「黒の本当の笑顔」だったのではないかと感じました。
一期終了後はあれはアンバーと妹達に「さよなら」を告げた後の黒の笑顔の事かとも思いましたが・・・。
そう考えるとアンバーの黒に対する想いは恋人というよりも母性に近いものがあるかもしれませんね。
「イザナミがお前を待ってる。」
「一度は覚醒が収まった。」
これらの事実を知ったとき、黒は銀がどれ程自分との未来を夢見て、またそのための覚悟があるかを知ったのではないかと。その上で黒が選んだ選択が「共に生きる事」であったと信じたいです。
長くなってしまいましたが、管理人様書かれる考察が大好きです。本当にDTBという作品が大好きでいらっしゃるのだと感じました。
3期、じつは密かに期待しています。笑
>厘さん
>初めまして。厘と申します。
初めまして。当ブログの管理人かもめと申します。ご返事遅くなって申し訳ないです(汗)。
>今更になってDTBの魅力にドップリはまってしまい、いろいろな考察サイト様を巡るうちに管理人様のブログにたどり着きました。
放送が終わっても、新しいファンを虜にしてしまう辺りが、DTBらしいですね。おそらく相当数あるだろうDTB考察サイトから、当ブログを発見していただき、ありがとうございます。こうして、昔書いた記事が縁で、新しい人と知り合えるのが、ブログのいいところですね。
>毎回なるほどなあ・・と深い考察に考えさせられてしまします。
ありがとうございます(^^) 多分他の作品の感想記事と比べたら、そのテンションの違いに驚かれるのではないかと思います。気持ちが乗らないと、いい文章を書けない質なので(苦笑)。
>特に、「改めて黒に問い直す」という視点が納得させられました。外伝でも感じたのですが、黒と銀の二人は全力ですれ違っているんですよね。
>「信じて。」と言った後の銀に黒は「お前こそ俺を信じろ。」と返していますが、これは銀に対する答えではないんですよね。「分かった、お前」を信じる。」という。結局独りよがりになっていしまっていて・・・・。
そうなんですよ。どこまでも、黒の契約者外伝から二人はすれ違っていた。だけど、だからこそ、黒<ヘイ>の答えを静かに待つことを決意した銀<イン>に、出した答えが二人の願い通りであることを願わずにはいられません。
続きます。
続きです。
>個人的には銀は生きているのでは・・と思っています。
僕もいろんな理由をつけて、そちらを主張していたりします(笑)。
>黒が銀に見せたあの笑顔、実はあれこそが一期でアンバーが言っていた「黒の本当の笑顔」だったのではないかと感じました。
>一期終了後はあれはアンバーと妹達に「さよなら」を告げた後の黒の笑顔の事かとも思いましたが・・・。
なるほど。確かに。言われて初めて気がつきました。僕はなぜかどうしようもないほどに、あの時の黒<ヘイ>の笑顔が好きなのですが、もしかしたらその理由は彼が見せた「本当の笑顔」だったからかもしれませんね。
>そう考えるとアンバーの黒に対する想いは恋人というよりも母性に近いものがあるかもしれませんね。
後の銀<イン>との関係を思うと、確かにそうですね。元々一期の四人組の関係は家族っぽさを感じていたので、その中にアンバーも入れたのかも。
>「イザナミがお前を待ってる。」
>「一度は覚醒が収まった。」
>これらの事実を知ったとき、黒は銀がどれ程自分との未来を夢見て、またそのための覚悟があるかを知ったのではないかと。その上で黒が選んだ選択が「共に生きる事」であったと信じたいです。
僕らに出来ることは、本当に未咲さんと同じように彼らを「信じる」ことなのだと思います。だけど、僕は少しわがままなので(笑)、厘さんと同じように共に生きることを選んだと信じています。
続きます。
らすとわん。
>長くなってしまいましたが、管理人様書かれる考察が大好きです。本当にDTBという作品が大好きでいらっしゃるのだと感じました。
ありがとうございます。考察の深さなどが認められるのも嬉しいですが、やはりストレートに作品が好きだという気持ちが伝わるのは、嬉しいものですね。文章における感情表現は苦手な方なので、伝わっているのが本当に嬉しいです。
>3期、じつは密かに期待しています。笑
OVAで天国戦争編をやってもらいたいです。第二期ラストの結論を明かすのは、やっぱり野暮だと思ってしまうので。あるいは、もう少し先のエピソードをやるとか。いまは、コミックス版の最終巻が発売されるのが楽しみです。