DARKER THAN BLACK-流星の双子- (1)(Blu-ray Disc)「僕は蘇芳と一緒にいるのが好きなんだ」(ジュライ)

『Darker Than Black−流星の双子(ジェミニ)−』第十二話「星の方舟」のネタバレ感想です。あんまり好きじゃないんですが、メタフィクションの観点を入れると、ラストの解釈がわかりやすいと思います。離れていった地球はまんま『流星の双子』。


 メタ的に解釈すると、コピーされた地球が『流星の双子』世界で、未咲たちが残ったのが『黒の契約者』世界なわけですよ。最終的に、『流星の双子』世界が離れていったことで、『黒の契約者』 世界が持続されることになった。だからこそ、『流星の双子』は前期ラストの結論――人と契約者の共存――が否定されたお話にはならなかったわけですね。コピーされた地球には契約者がいないので、一見前期を否定しているかのようですが、コピー地球を本来の地球から離すことで、前期の結論と今期の結論を両立させている。前期のようなヤツらはヤツらでちゃんと生きてます、二つは別個のお話ですよ、って感じですね。

 第一話でエイプリルを退場させた辺りで、第一期を壊しにかかっているなぁ、と思ったんだけど、奇しくもそれがそのまま実現されたのが、この『流星の双子』という作品だったんじゃないかと。良い意味で『黒の契約者』世界を壊して、ちょっとだけ進めてくれました。



 『黒の契約者』という物語は何だったのかというと、黒<ヘイ>が過去と決別して、現実に立ち向かい始めた物語ですよね。妹白<パイ>と再会するという夢を持っていた彼が、最後にそれを放棄して、世界と向き合う、現実へと立ち向かっていくというお話だった。ここで現実へと立ち向かっていくために、人と契約者がわかりあう未来という新しい夢(未来)を描いたのだけれど、それが砕けてしまったがこの第二期『流星の双子』で(というかその間の黒の契約者外伝)。

 で、その結果として、今回彼はイザナミこと銀<イン>を殺さずにはいられない状況に立ってしまった。人と契約者の共存という夢を抱いたのに(黒<ヘイ>と銀<イン>もまた人と契約者の組み合わせ)、それが叶わないというのがわかってしまった。だから、この『流星の双子』という物語が始まった時点では、彼は銀<イン>を殺さずに世界を救うという可能性(夢)を見ることができなかったわけですよ。

 だけど、これは願望でもあるんですが、それが今回の『流星の双子』を通じて変わっていった。この作品自体がメタ的に言えば、紫苑の「夢」だったわけですが、その夢を通じて、黒<ヘイ>の選択もまた変わった。アンバーが三鷹文書を忠実に再現してほしいと願っていたことからも、それはわかると思います(災厄は起こるかもしれないけれど、希望はこの未来にしかなかった)。
 一期ラストに人と契約者の共存を願って、だけど、銀<イン>の覚醒によってその夢を砕かれた黒<ヘイ>が、再びその夢を抱いて、災厄に挑もうとしたのがこの物語だったのではないかなぁ、と思ってます。

 「私を殺して」という銀<イン>の言葉のあと、一期を彷彿する彼の穏やかな表情がそれを物語っているんじゃないかぁと。そして、同じく人と契約者の共存という夢を見ながらも、四課を追い出されて、その夢を見ることができなかった未咲さん。彼女もまた黒<ヘイ>とは別のきっかけで夢を失ったのが、今回新しい「組織」を作ることでまた同じ夢を見始めた。

 最後に未咲によって、改めて黒<ヘイ>は同じ道に立ったと語られたけれど、それが明確に語られる――というか、黒<ヘイ>の選択がわかる――のは、外伝視聴後かな、と思ってます。現段階で妄想込みで『黒の契約者』として解釈してますが、多分外伝視聴後に見るとちゃんと『黒の契約者』になっているんだろうな、と。『流星の双子』でもあり、『黒の契約者』でもある。そういう凄まじい構造になっているんだろうなぁ、と思うと、今からやばいですね。すごすぎる。

それでも私は彼が生きていると、信じている(霧原未咲)



 では、この『流星の双子』が『黒の契約者』世界に影響を与えるだけのものだったのかというとそうではないんじゃないかと。まず前提として、この『流星の双子』は『黒の契約者』のセルフパロディ、というか二次創作みたいなものですね。シミュラークルとか呼ばれているやつでしょう。

 紫苑の能力がコピーで、一部属性を反転しているのは明らかですが(だから、最後の銀<イン>のような少年は彼のコピーのはず)、この『流星の双子』も『黒の契約者』のコピーで一部反転していると思うと、わかりやすいですね。EDがabingdon boys schoolでOPが「ツキアカリ」なのも、ある意味反転。そして、「恋」「ゲート」「得る代わりに失う」辺りのキーワードが、奇しくも前期第十一・十二話「壁の中、なくしたものを取り戻すとき…」と酷似しているのも面白いところ。

 言ってみれば、この『流星の双子』は『黒の契約者』が第十二話で終わってた場合のifのようなものなんじゃないかなぁ、と思うわけです。十二話に拘っているのもその辺りに原因があるんじゃないか、と。前期第十二話も黒<ヘイ>にそっくりなニックが登場したエピソードでしたが、蘇芳もまた黒<ヘイ>自身が語っているように彼に似ている。黒<ヘイ>とニックの夢は同じで、紫苑は言葉では否定していますが蘇芳と同じように家族での団らんを夢見ていたように描写されている。この辺りの類似点を洗っていくと、狙ってやっているとしか思えないんですが。

 でも、ラストが違う。前期十二話では黒<ヘイ>が同じように夢を見ようとはしなかったんですが、今期十二話では蘇芳がその夢を願った。ここもまた反転している。紫苑のコピーのように同じだけど、どこか違っている。

 そして、『流星の双子』が『黒の契約者』のコピーであるならば、当然本編中に蘇芳が思い悩むように偽物なわけですよ。僕たち前期のファンからすると、どうもしっくり来ない部分がある。だけど、未咲が、黒<ヘイ>が、ジュライが、第一期のキャラたちがそれを否定してくれた。特に、ジュライに至っては

「僕は蘇芳と一緒にいるのが好きなんだ」(ジュライ)

 といって、本来の居場所であった『黒の契約者』世界から『流星の双子』世界まで渡ってくれたわけですよ! そんな作品そのものが蘇芳と同じく虚構であったのに、それを第一期のキャラが認め、結果として『Darker Than Black』という名前を冠した作品として独り立ちしていった、という意味では間違いなく大団円だったかなぁ、と思ってます。



 岡村天斎監督をはじめ、スタッフの方々、素晴らしい作品をありがとうございました。三ヶ月間おつかれさまです。まだDVD&Blu-ray収録の外伝はありますが、ひとまずはここで僕のDarker Than Black感想は終了です。それでは、皆さん。また外伝を見た時にでも会いましょう。

→DVD&Blu-ray第二巻にはOVA黒の契約者外伝が収録

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