
『Darker Than Black−流星の双子(ジェミニ)−』第十一話「「水底は乾き、月は満ちる…」のネタバレ感想です。
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「そうだ。だから蘇芳なんだ。紫苑じゃないんだ。紫苑のコピーはいつもなにか一カ所ほんものと異なる点がある」(ミハエル・パヴリチェンコ)
これ、何気に紫苑の心境を推し量るのには、重要な部分な気がする。第七話の感想で、契約者の能力と対価の関係を、
能力:表面的な願い
対価:本来の願い(人であった時の名残)
と捉えてみたけれど、そこから紫苑像を考えてみると、疑問に思っていたことが解けるんですよね。何を疑問に思っていたかというと、母親の麻子さんが紫苑を怖れていたわけではなかったという点です。
第九話で蘇芳を紫苑だと勘違いした時も、彼女は再会を喜んでいた。彼が契約者であることも麻子さんは知っていたはず。それにも関わらず、彼女はその再会を大いに喜んでいた。ということは、契約者としての彼を怖れていたわけではないわけですよ。
だけど、所変わって、昔のエピソードではトイレに連れて行って、といった彼にびくついている。そして、蘇芳は一人折り紙をし、お留守番をできる女の子で。八年前だから二人とも年齢は六歳。
この辺りから推察するに、紫苑は蘇芳に比べて成長が遅かったのではないかと。そして、それを麻子さんは蘇芳と比較して見てしまい、彼はそのことに感づいていたのではないかなぁ、とそんな風に考えてしまいました。
だから、彼のコピーがいつも異なる点を生んでしまうのは、彼自身が他とは違っていた、そのことの肯定の意味もあるんじゃないかなぁ、と思ったり。だけど、上でも書いているようにそれは表面的な願いで、本当は歩きたくなかったんじゃないかなぁ、と。
誰と? といわれたら、やっぱり蘇芳と、って答えてしまうんですが。何といっても、母親からそういう目で見られるという原因を生んだのは、彼女なわけで。親愛の情を見せる反面、実はすごく嫌っていたのではないかなぁ、と。
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「おまえはずっと……私の蘇芳だ」(ミハエル・パヴリチェンコ)
この言葉をポジティブに取るかネガティブに取るかはちょっと迷うところ。上記に上げた台詞でも、紫苑のコピーだけど女性だから蘇芳だ、と言っているので、微妙なんだよな。そして、前回の
「俺にとっての蘇芳はお前だ」(黒<ヘイ>)
とは同じことを言っていても、明らかにニュアンスが違う言葉なんですね。黒<ヘイ>がいっていたのは、黒<ヘイ>の接した(二年前から生きてきた)「蘇芳」を指しているけれど、パヴリチェンコ博士は死んだ蘇芳もひっくるめた上で一人として捉えている。
どんなに偽りの生活を続けていたとしても、生きている限りほんとうだった。そういう生き方を肯定している作品のような気がしているので、二年前に生まれて、今まで生きてきた「蘇芳」を僕は肯定したいんだけどな。そういう意味では、結局今の「蘇芳」をパヴリチェンコ博士は見ていなかったんじゃないかと思えて、少し寂しくなってくる。
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そして、ラスト一話。反転する物語構造がいよいよ極まりという感じになってきて、本当に楽しみです。紫苑の能力も別の捉え方をすれば、大きいものが小さく、男が女へと変わっていっているので、反転していると捉えられる辺りもなるほどなぁ、と。ほかに前期と反転しているところを挙げるなら、
物語の焦点が、黒<ヘイ>から銀<イン>(蘇芳)へ(男から女)
契約者を守った銀<イン>が、今は逆の立場へ
蚊帳の外だった未咲さんが、事件の中枢へ
大黒班(太陽)から弓張り月へ
マスコットキャラだった猫<マオ>が、麻子さんやマダム・オレイユと旧知の仲だという重要なキャラに(笑)。
辺りが重要な所でしょうか。となると、やはりこれはずっと書いていますけれど、前期銀<イン>から伸ばした手を、今度は黒<ヘイ>から伸ばしてほしい。そして、前期は黒<ヘイ>が原因で逃げまくることになりましたが、今期は銀<イン>を守るために逃げるという反転を見せてくれたら、もう言うことがない。
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→前回第10話「偽りの街角に君の微笑みを…」の感想へ
→次回第12話「星の方舟」の感想へ
→岩原裕二『Darker Than Black−漆黒の花−』の感想インデックスへ
→第一期『Darker Than Black−黒の契約者−』の感想インデックスへ
→『Darker Than Black−流星の双子(ジェミニ)−』の感想インデックスへ
コメント
こんばんわ。先日は挨拶も中途半端に、チャット会にお邪魔してしまって、お恥ずかしい限りです。どうやら、少し舞い上がってしまってたようで(汗)。
かもめさんや皆様ととても楽しい時間が過ごせました。ありがとうございます。
8年前、紫苑は母親に自分の相手をして欲しくて我儘を言ったんじゃないでしょうか。
結果、蘇芳は爆発に巻き込まれて死んでしまった…紫苑はそのことが後ろめたかったのかも知れず、ずっと蘇芳に謝罪したかったのではないか、そう考えると余計に切ないですね。
泣いても笑ってもあと一話ですが、DTBに相応しい“大団円”で締めてくれると信じています。
>れおぽんさん
また遅くなって申し訳ないです。チャット会僕も楽しかったです。基本僕も初対面の人ばかりなので(笑)、あんまり気にしなくても大丈夫だと思いますよ。
流星の双子終わってしまいましたね。紫苑の心情として、れおぽんさんが仰るような部分もあったのかなぁ、と思いました。そこをぼかす辺りがまたダーカーだなぁ、と。切ないところでもありますが。
僕としては十二分に大団円と言って良い出来でしたが、どうでしょうか。またコメント楽しみにしております。っではー。