DARKER THAN BLACK-流星の双子- (1)(Blu-ray Disc)「俺にとっての蘇芳はお前だ」(黒<ヘイ>)

『Darker Than Black−流星の双子(ジェミニ)−』第十話「偽りの街角に君の微笑みを…」のネタバレ感想です。


「蘇芳」(黒<ヘイ>)

 水族館での思い出さえも偽りということで、俄然追い込まれていく蘇芳でしたが、そこからがすごかった。まだはっきりと自覚したわけではないにしろ、好きな人に自分を見てもらうことで救われるという。

 確かに自分の存在も記憶も偽りなのかもしれない。
 だけど、たった今感じているこの気持ちは紛れもなく「ほんもの」。

 黒<ヘイ>が信じてくれなかったのが悲しくて、銀<イン>ばかり見ているのが悔しくて、そして、何よりも名前を呼んでくれた(ここではちゃんと自分を見てくれた)のが嬉しかった。だからこそ、流れ出る涙。自分を決して見てくれなかった母の前では流れなかったけれど、自分を見てくれる人の前ではやっぱり流れた。心が動いてる証。

 そう感じている自分はちゃんと存在していると。
 それは紛れもない事実。

 前回の感想に書いたようなこと――たとえ自分が偽物だとしても、ちゃんと見てくれている人がいる――が、そのまま描かれて、大満足の一話でした。でも、それは黒<ヘイ>にとっての銀<イン>も同じなんだよな。



「蘇芳に妹の姿でも重ねたか?」(猫<マオ>)

 蘇芳に白<パイ>を重ねて、(取り戻せなかった白<パイ>の代替として)取り戻そうとしたのか、というのが含意だと思うんですが、ここではっきりと黒<ヘイ>が「否」といったのが良かったですね。

 むしろ自分と重ねていたと。

 妹に守られていたことにずっと気づかず、偽りの目標へとひたすら走り続けていた黒<ヘイ>と今の蘇芳が重なると。そして、

「俺も蘇芳も、これ以上揺れている時間はない」(黒<ヘイ>)

 もう迷っている時間はない。イザナギとイザナミが出会えば、災厄が起こる。これ、設定的に解釈するとどうなるかよくわかりませんが、ストーリー的に解釈するならば、黒<ヘイ>と銀<イン>が出会うことで、蘇芳の初恋が終わるということでしょうね。

 何度となく感想で、蘇芳は無自覚だったけれど、ニカのことが好きだったのでは? と書いているのは、この辺りが原因で。第一話で無自覚に通り過ぎてしまった初恋の終わりを、今度は何もかも自覚した上で乗り越えなければいけないという。それが蘇芳の成長に繋がっていくんじゃないかと考えてます。そう考えると、構造的にすごく美しい気がするんだけど、どうだろうなぁ。

→DVD&Blu-ray第一巻12月23日発売

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