
『Darker Than Black−流星の双子(ジェミニ)−』第十話「偽りの街角に君の微笑みを…」のネタバレ感想です。
◇
「蘇芳」(黒<ヘイ>)
水族館での思い出さえも偽りということで、俄然追い込まれていく蘇芳でしたが、そこからがすごかった。まだはっきりと自覚したわけではないにしろ、好きな人に自分を見てもらうことで救われるという。
確かに自分の存在も記憶も偽りなのかもしれない。
だけど、たった今感じているこの気持ちは紛れもなく「ほんもの」。
黒<ヘイ>が信じてくれなかったのが悲しくて、銀<イン>ばかり見ているのが悔しくて、そして、何よりも名前を呼んでくれた(ここではちゃんと自分を見てくれた)のが嬉しかった。だからこそ、流れ出る涙。自分を決して見てくれなかった母の前では流れなかったけれど、自分を見てくれる人の前ではやっぱり流れた。心が動いてる証。
そう感じている自分はちゃんと存在していると。
それは紛れもない事実。
前回の感想に書いたようなこと――たとえ自分が偽物だとしても、ちゃんと見てくれている人がいる――が、そのまま描かれて、大満足の一話でした。でも、それは黒<ヘイ>にとっての銀<イン>も同じなんだよな。
◇
「蘇芳に妹の姿でも重ねたか?」(猫<マオ>)
蘇芳に白<パイ>を重ねて、(取り戻せなかった白<パイ>の代替として)取り戻そうとしたのか、というのが含意だと思うんですが、ここではっきりと黒<ヘイ>が「否」といったのが良かったですね。
むしろ自分と重ねていたと。
妹に守られていたことにずっと気づかず、偽りの目標へとひたすら走り続けていた黒<ヘイ>と今の蘇芳が重なると。そして、
「俺も蘇芳も、これ以上揺れている時間はない」(黒<ヘイ>)
もう迷っている時間はない。イザナギとイザナミが出会えば、災厄が起こる。これ、設定的に解釈するとどうなるかよくわかりませんが、ストーリー的に解釈するならば、黒<ヘイ>と銀<イン>が出会うことで、蘇芳の初恋が終わるということでしょうね。
何度となく感想で、蘇芳は無自覚だったけれど、ニカのことが好きだったのでは? と書いているのは、この辺りが原因で。第一話で無自覚に通り過ぎてしまった初恋の終わりを、今度は何もかも自覚した上で乗り越えなければいけないという。それが蘇芳の成長に繋がっていくんじゃないかと考えてます。そう考えると、構造的にすごく美しい気がするんだけど、どうだろうなぁ。
→DVD&Blu-ray第一巻12月23日発売

DARKER THAN BLACK-流星の双子- (1)(Blu-ray Disc)
DARKER THAN BLACK-流星の双子- (1) [DVD]
→前回第09話「出会いはある日突然に…」の感想へ
→次回第11話「水底は乾き、月は満ちる…」の感想へ
→岩原裕二『Darker Than Black−漆黒の花−』の感想インデックスへ
→第一期『Darker Than Black−黒の契約者−』の感想インデックスへ
→『Darker Than Black−流星の双子(ジェミニ)−』の感想インデックスへ