「宇宙(そら)」や「重力」なんかをキーワードにしながら、今回は「地上」と「天上」の構図を明示した回かなぁ、と思います。現段階で、ガンダムマイスターの中で分けるなら、ロックオン、アレルヤ辺りが地上派で、刹那、ティエリア辺りが天上派かなぁ(でも、もっと視野を広げてみると、結局ガンダムマイスターは皆天上派です)。
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ところで、今回ソレスタルビーイングの行動によって、紛争が止まったけれど、これは額面通りに受け取って良い所なんでしょうか? このあまりに早い反応をどのように捉えれば良いのか、悩む。レイフ・エイフマン教授にソレスタルビーイングを肯定するかのような発言をさせているので、ソレスタルビーイング以外にも彼らの行動を肯定する人達(その影響を受ける人達)が出始めた「変革の序章」だ、みたいなシーンなのか、それとも自作自演なのかと。イオリア・シュヘンベルグが二百年前から根回しし、自身の足跡を消していたのであれば、二百年前から根回しし、各紛争地域にソレスタルビーイングの関係者を配置することも難しくないのでは?と思うんですが。
この辺りは、結局ソレスタルビーイングをどのように描きたいのかにもよりますよね。ある程度その理念(戦争を根絶させるために、悪を買って出ること)を肯定したいのか、実は違う目的があって終いには否定したいのか。
さて、どっち?
まあ、アレハンドロ・コーナーと王留美(ワン・リューミン)の対談は、心底胡散臭かったけれど(苦笑)。いや、パワーバランスを掴みかねているだけなのかもしれませんが、アレハンドロの「ほう、それは楽しみだ。刮目させてもらうよ」という反応がちょっと違和感。
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「地上」と「天上」の関係については、口を酸っぱくして、こことかこことかで言っているので、詳しく触れないけれど、今回はとにかくセルゲイ・スミルノフ中佐良いね。「天上」と「地上」という構図では、地上に属する彼だけど、何より、
「私は、自分の目で見たことしか信じない男だ」
という台詞が良い。この「自分の目で見たことしか信じない」というのは、幾千幾ばくのデータを検証、処理することで「戦術予報」とする(らしい)スメラギ・李・ノリエガさんとは対極を成す観点で、僕はこちらの観点が重要だと思ってます。データとか知識よりも実感が大切だろ、みたいな。この辺り、スーパーコンピュータ並みの処理能力を持っている(これも、らしい)スメラギさんが、いかにも一世代前のPCとか“こだわり”で使ってそうなセルゲイ中佐に一杯食わされる展開とかあったら、燃える、めっちゃ燃える。
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そして、この「自分の目で見ること」と「データとして見ること」(前者と“対照的な観点”という意味で使ってます)を念頭に今回を見ると、アレルヤが行ったミッションが印象的。アレルヤ的には、人も殺したわけでもなく、ただ麻薬を焼き払っただけで万々歳なんだけど、結局アレルヤも天から俯瞰して見ているに過ぎないので、それを見て呆然としている人々の姿が見えていない。焼かれた畑を見て、呆然としている人達は、おそらく麻薬を売ることで生計を立てていた人達。さて、生きる術を失った彼らは、明日からどうやって生きるのか。確かに、麻薬は紛争の原因だったかもしれないけれど、それを寄る辺としてしか生きられなかった人達は、それを突然奪われた明日からどう生きればいいのか。この辺り、確かに今回紛争は終わったけれど、そこにいる人達は、それで本当に幸せになれたのか、という部分と共に再び取り上げられたりするんじゃないか、と思うんですが、はてさて。そして、こういう時に活躍するのが、王留美とは違う意味で世界中を飛び回らざるを得ない、我らがマリナ・イスマイールさんです(次回再登場)。
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沙慈とルイスに「将来」の話をさせたりしているので、ダブルオーは結構長い歴史の物語なのかなぁとも思います(ソレスタルビーイングの行った行動の影響が、どのように拡がっていったのかを描くためにも、長い時間が必要なんじゃないかと思いました)。「漠然」とした沙慈くんの将来が、刹那と関わることで変わるというのは、何かやばい気がするので、そこはルイスでお願いします(マリナさんもそうだけど、この子が幸せになれないと、僕は泣きそうな気がする)。
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前回と今回、実存するワードを使用することに抵抗を覚えられた方もいらっしゃるかもしれませんが、これはプレ感想でも書いたとおり、「現実に起こっていることを知るきっかけにしてほしい」という水島精二監督からのメッセージ。重要キーワードだけを語って、詳細についてあまり触れないのも、そこから先を作中で語るのがダブルオーの目的ではないからで。その先は興味を持った視聴者が自分で調べてみることを水島監督は願っているんじゃないかと思う。あるいは、そういう詳細な背景を考慮しないソレスタルビーイングの在り方に対して、それってどうなの?と問題提起するニュアンスも含まれているのかもしれません。いずれにせよ、そう目くじらを立てずに、(アニメなんだから)気楽に視聴しましょう。そして、そういう水島監督の意図を尊重したいのであれば、感想なんかを書く時に、実名をなるべく使わないように配慮した方が良いんじゃないかと思いました(検索する際に、ダブルオーの感想が大量にヒットしては、情報の密度が薄まるため)。僕はそうしてます。
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な、何か『グラハム・エーカーさんの
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■今週のマリナ・イスマイールさん
ま、また出てこなかったっ! ……でも、次回出てくるみたいなので、一安心。
→DVD
機動戦士ガンダム00 (1)
→主題歌CD
DAYBREAK’S BELL
罠
→前回第02話「ガンダムマイスター」の感想へ
→次回第04話「対外折衝」の感想へ
→『機動戦士ガンダム00【ダブルオー】』の感想インデックスへ
コメント
何回読んでも、かもめさんの文章には独自の視点と真面目な考察があって、私はやっぱり、凄いなぁ好きだなぁ、と思ってしまいます。
今回も、そんな感じ。
私が一人グラハム・エーカーさんにKOくらってる間に(笑)、こんなに良いレビューを書いてらっしゃる。 真似できません!!
沙慈が見た世界の変化、あまりに早かったですよね。 これがどう出るのか・・・しかもアレルヤが行った麻薬畑の焼き払いより、ある意味地味だった作戦の方が効果を上げているっていうのが面白い点ですね。 たしかに、何らかの力が及んでそうだけど・・・その辺も、楽しみですw
あ、名誉会長に就任してくださるんですか?(笑)
名誉会長というのは、得てして名前だけのもので(笑)、喜んで引き受けますよ。
どうもです、りるさん。
僕もグラハムさんメインで感想を書こうかなぁ、と思っていたら、りるさんが書きまくっていたので、諦めて真面目に感想を書きました(笑)。今回はセルゲイさんがなかなか良かった。やっぱり地上側の視点から見ている方が、ダブルオーは楽しめると思います。グラハムさん然り、セルゲイさん然り、沙慈くん然り。
そうですね、あの紛争停止はいかにも……って感じです。この辺り、ダーカーを見たあとだと、やはり怪しんでしまいますよね(苦笑)。麻薬とあの紛争については、頭の片隅に置いておいた方が良いんじゃないかと思いますが、はてさて。絹江さんのラインも興味深いんですよね(その実態を報道してくれそうで)。