というわけで、今年も残すとこあと一日となりましたので、行ってみましょうか。対象となるのは、今年発売されたものではなく、今年読んだものとなります。独断と偏見と諸事情によるチョイスです。


■5位:ロートケプシェン、こっちにおいで(相沢沙呼)

ロートケプシェン、こっちにおいで


 北山猛邦先生の「私たちが星座を盗んだ理由」と迷ったのですが、どんだけ講談社ノベルスを入れるんだ、という突っ込みが湧いてきたので、こちらをチョイス。珍しく「青春もの」が入っていなかったのも選んだ理由だったりします。

 僕はもうとにかく、青春期にありがちな悩みとミステリー(もとい探偵の在り方)を重ねて描く作品が好きなんですが(その中でも米澤穂信先生の『古典部』シリーズが最高ですね!)、このシリーズもそうした頂きを目指していることを感じさせてくれます。

 多くの探偵が事件に介入していくのは事件が起こってからで、大事が起こるまでは無力です。そんな探偵の在り方を揶揄するように、作中である登場人物は何かが起こったわけでもないのにそこまで他者に深入りするの? という問いかけを起こす。人との距離感に悩むのは、もはやそれを過ぎ去ってしまった人にとっては青春期の醍醐味でもあると思いますが、当人たちにとってはやはり大きな悩み。そんな問題に、主人公である須川君と酉乃さんは、探偵として真っ向から挑んでいきます。その姿が素敵。

■4位:空ろの箱と零のマリア〈3〉〈4〉(御影瑛路)

空ろの箱と零のマリア〈3〉 (電撃文庫)空ろの箱と零のマリア〈4〉 (電撃文庫)

「箱」のデスゲーム的にも、3、4巻の「王降ろしの国」はシリーズ屈指の出来だと思っていますが(ルールの穴をついた3巻ラストの急展開は見事だった)、個人的に面白いと感じたのは前半も前半。これまで、非日常の「箱」を破壊し、「日常」に固執してきた一輝に対して言った、醍哉の一言。「お前の目的は、他人の“願い”を踏みにじることだ」。この一言で持って、「日常」という言葉の意味を転覆させていったわけですが、「今年」を思えば、その意味もなんとなくでもわかるのではないかと。

■3位:メルカトルかく語りき(麻耶雄嵩)

メルカトルかく語りき (講談社ノベルス)

 これは、普段ミステリーを読まない方にぜひ読んでいただいて、ビッミョーな顔をしていただくのが大変楽しみな作品です。読み終わってからは至る所でこの作品を紹介して、微妙な反応が返ってくるのに、至福の笑みを浮かべておりました。

 麻耶雄嵩ですから、まぎれもなく「本格」ですが、これほどまでに読者をもやもやさせる「本格ミステリー」もないでしょう。とくに、「答えのない絵本」が爆笑ものです。論理的に真相を導くというのが本格ミステリーの本懐ですが、それを突き詰めていった果てに一体何があるのか。それを見せてくれる一冊で御座います。

■2位:虚構推理 鋼人七瀬(城平京)

虚構推理 鋼人七瀬 (講談社ノベルス)

 後輩と二人で、密かに「説得系」と読んでいるミステリーの類型があるんですが、本作はその中でも珠玉の出来。とはいえ、ちゃんとした定義をしているわけではないのですが(笑)。僕は、名探偵コナン君的「真実」(僕の言葉なら、「事実」)ではないにも関わらず、説得力のある虚構が真実に成り代わってしまう作品のことを指して、説得系と読んでます。他にも米澤穂信先生の『インシテミル』とか、僕は未読ですが『丸太町ルヴォワール』なんかがあげられるという話ですね。

 本作では、巨乳アイドルの変死からそのアイドルが亡霊として鉄骨をぶんぶん振り回しながら、闊歩するという都市伝説に発展。そして、マジで亡霊として受肉して猛威を振るっている中、主人公たちが幽霊退治に挑みます。ちなみに、ヒロインは幽霊と会話できるとかなんとかで、アイドルの変死が事故であることはすぐ明かされます。真実がわかっているところからの虚構推理合戦が見所です。真実の鬩ぎ合いならぬ、虚構の化かし合い。とくとご覧ください。

■1位;境界線上のホライゾン1〈上〉〈下〉(川上稔)

境界線上のホライゾン1〈上〉―GENESISシリーズ (電撃文庫)境界線上のホライゾン1〈下〉―GENESISシリーズ (電撃文庫)

 もはや言葉は不要。読め、ただそれだけです。――以上。