アニメ『境界線上のホライゾン』#12「平行線上への相対者」のネタバレ感想です。世界征服の長台詞、カットなし。福山潤さん、凄すぎ。
◇
「見ているのは私ではなく、自分の速度の到達点ですか!」(立花・宗茂)
以前「速度」で負けた際に、ちらっと書いたような気がするけれど、「いま、ここ」の最高速度を出そうとするガル茂さんと「いま、ここ」からの最高速度を目指す二代の対比が鮮やか。
これは二人が使う術式にも現れていて、ガル茂さんは強化系(今回あっさりと決着がついたように見えるのはすでに限界近くまで上げていて、燃え尽きていたからですね)、二代の方は禊ぎ系(抵抗などを払うことで、自分の持つ本来の最高速度に近づく)という違いを持っていたりもします。だから、ガル茂さんの術が踏み込むために後方とかに出ていてるのに対して、二代の方は自分の進むべき方向に出ていたりする。
そして、自分の速度の到達点(それは父本多・忠勝のことでしょう)を目指す、つまり未来を見据えるという選択は、三河陣営らしいものでもあるんですね。第五話の感想にも書きましたが、忠勝らは徹頭徹尾未来を見据えていた。そんな彼らが戦った意味と、父忠勝の勝利を確信して、初めて二代が未来を見据えた戦いに臨むというのはもう格好良すぎ。そして、その戦いが本当の意味で結実するのが、アニメと並行して刊行されていた第4巻ということで、本当にもうどこまでグッとこさせるのかと。
◇
「そこは危ねえよ。だから救いに行くけど、――オマエもこっちに来い、ホライゾン」(葵・トーリ)
ついに果たされる「平行線の会話」。これまで感想で多くの平行線、そして、それが重なる境界線を切り取ってきたつもりですので、それに任せて堪能していただきたい。お互いにお互いを相容れない存在とし、それでも尚同じ場所へと辿り着かんとする姿をとくとご覧あれ。
そして、今回はそれから先。
これまた第五話を思い返しつつ見てほしいところではあるんですが、あの時手を伸ばしたトーリの手は届かなかった。それは何故か?
あるいは、どれだけ彼女を救うのが困難なのか、それでも尚方法はあるとどこまでも誠実に突き詰めたとしても、それだけでは彼女を救うことは出来なかった。それは「平行線の会話」へと至る前の二人のやり取りを見ても明らかなわけですが、それは何故か。
その答えがここにある。
どれだけトーリが彼女を助けようと手を伸ばしたとしても、ホライゾンが彼へと手を伸ばさなければ意味がない。ここに来て、臨時生徒総会の各戦いのあとにさらっと握手する姿が描かれた意味がわかる。
たった一人の女の子を救う。
ただそれだけのことがどれほどの困難を秘めているのか。こちら側がどれだけそれを求めても、方法を尽くしたとしても、最後にそれを手にとってくれないと、手を伸ばしてくれないと届かない。
ここにちゃんと「助けられる」側の視点が入っていることが、僕がどうしようもなく『境界線上のホライゾン』を好いている理由だったりします。ここまで誠実に真摯に誰かを助けられることを突き詰められるだろうかと。破壊力が凄くあるというわけではないんだけれど、ラストの二人の姿を見て、じんわりと来てます。イイ。

TVアニメ 境界線上のホライゾン エンディングテーマ-Side Horizon- 「Stardust Melodia」

TVアニメ 境界線上のホライゾン エンディングテーマ-Side Ariadust- 「Pieces」
→第11話「武蔵の不可能男」の感想へ
→次回第13話「境界線上の整列者達」の感想へ
→アニメ『境界線上のホライゾン』の感想インデックスへ
→原作小説川上稔著『境界線上のホライゾン』の感想インデックスへ
コメント
トーリとホライゾンの相対は言うまでも無く素晴らしかったのですが、
今回私が一番感動したのは一番最初の二代の咆哮シーンでしたね。
前の喜美の台詞にもつながる、まさしく「泣くような叫び声」で、二代の感情を良くあらわした名演技だったと思います。
戦闘シーンも良く要所を押さえていて、サンライズの底力を見た気がしました
>アルタさん
>トーリとホライゾンの相対は言うまでも無く素晴らしかったのですが、
>今回私が一番感動したのは一番最初の二代の咆哮シーンでしたね。
>前の喜美の台詞にもつながる、まさしく「泣くような叫び声」で、二代の感情を良くあらわした名演技だったと思います。
彼女が何を得て、何を失ったのか。それを文字通り言葉なしで描いた瞬間だったと思いました。あの咆哮まで、台詞を挟まなかったのは、絶妙でした。原作に対してどこまで理解がある、理解しようとして作ってくれたからこその、ワンシーンなんでしょうなぁ。
>戦闘シーンも良く要所を押さえていて、サンライズの底力を見た気がしました
動きだけでなく、必要な駆け引きの方も台詞に込められていて、ガル茂VS二代戦は本当に見応えがありましたねー。