「オマエらは、出来る。――出来ねえ俺が、保証するさ」(葵・トーリ)

 アニメ『境界線上のホライゾン』#9「高嶺の花」のネタバレ感想です。これだけこっちの感情を揺れ動かされたら、そりゃあ人だの国だの時代も動くよなぁ。バンダイチャンネルでの配信を視聴しての感想になりますので、引用する台詞は微妙に間違っているかも(原作小説の方から持ってきてるので)


「エロけりゃあ、誰にでも身体赦すと思ってんの」(葵・喜美)

 葵・トーリが時代、人を「動かす」男だとすれば(それすなわち、「通す」人間だということ)、葵・喜美はそれを「通さない」女だと言えますよね。これまた一つの境界線(「平行線」ではないのは、二人の見ている先、辿り着くところが同じだから)。

 というわけで、本多・二代対葵・喜美戦が描かれた第九話。
 生徒総会延長戦。

 映像化されると聞いて、最も楽しみにしていたと言っても過言ではない場面だっただけに、この出来は、本当に大満足でした。ただ舞って、二代の攻撃を回避し続けていると思い込んでいただけに、結界張ったり、鳥居で攻撃防いでいたり、何よりも『通し道歌』(テクノVer.)が素敵だったり、「通さない」女としてどこまでも一貫して描かれていたのが素晴らしかった!

 僕にこの作品を薦めてくれた後輩が、今回も熱く深く語ってくれているし、おすすめする際に言ってくれていたことですが、各人が使う「異能」がその人のパーソナルに密接に関わっている辺りがホント、素敵! 

「異能バトルもの」の「異能力」を考えるとき、その能力が後天的なものか、先天的なものかと二通り分かれると思いますが(そもそも理由がないというのは論外)、『境界線上のホライゾン』は間違いなく前者。その中でも、最も顕著に現れているのが、今回描かれた賢姉の「高嶺舞」。

#僕が例えば『Dies irae』というPCゲームをこよなく愛しているのは、彼らの生き様に彼らの異能が密接に関わっているからですね。『ギルティクラウン』が好きなのも、ヴォイドがそういう役割を果たしているから。ダーカーは「対価」で、それを表現していたように思いますね。

 自分と同じ高みにのぼってほしいから、そこに至るまでは誰も通さないという。だけど、そこまでのぼりつめたのなら、そこからは「通す」女なわけですね。そして、彼女が唯一通したのが、葵・トーリという弟。

 これはただ弟だからというわけではもちろんなく。
 だけど、第一巻の結末に密接に関わってくる部分なので置いとくとして。

 そんな彼女だからこそ、ホライゾンを亡くした直後のトーリを、向こう側に通さなかったというのはお見事。いや、ここで通さなかったからこそ、いまの彼女が在るというべきか。ただはっきりと言えることは、まぎれもなく「いま、ここ」に繋がるようにキャラが「生きている」ということ。

「喜美には皆、頭が上がらないんです。――トーリ君を向こうに行かせなかったので」(浅間・智)

「淫乱な身なれど正確なご助言、忝のう御座る!」(本多・二代)




 そして、喜美が「通さない」女なのだとすれば、トーリは「通す」男。何を通すのか、動かすのかといえば、例えば、人であったり国であったり時代であったりと難しいですが、今回でいうならば、「夢」でしょうか。

 端折り気味に描かれているので、過去の回想シーンがわかりにくい部分ではあったんですが(ここも原作を読んでほしい箇所)、彼が「ホライゾンが夢を持てる国を作る」「みんなの夢が叶う国をつくる王様になる」という夢を吐露したのは、極東がそうした場所ではなかったからなわけですよ。

 しかし、誰もが夢を描きながらも(ホライゾンだけはちょっと別の夢を抱いていたのですが)、それが叶う場所を作ろうとは言えなかった。本当に叶うとは思えなかった。

 そんな中で、ただ一人のトーリだけは「王様になる」という夢を抱き続けたわけですよ(実は正純が、武蔵に呼ばれるのが遅かった理由、そして父正信に呼ばれた理由はここにあったりします)。厳密には、ホライゾンが死んだときに折れかかっていますが、なにはともあれ、ここまで続いている。

 王様――言葉は悪いかもしれませんが「支配者」と呼ばれるような人が、結局何をやっているのかと言えば、それは「動かす」ということなんですね。自分を動かし、人を動かすこと。それは物理的な意味での「移動」もそうだし、心の部分、感情を動かすという意味においてもそう。

 彼が子供の頃に馬鹿馬鹿しい夢を描いたからこそ、「いま」この瞬間がある。彼がみんなを動かし続けたから(夢を諦めさせなかったから)こそ、いまこの瞬間にホライゾンを助ける道があるという風に繋がっている。

 そんな男が、自分自身の力では何も出来ない男が、ただ一人動き出して、他の出来るやつが何もしないなんてありえないだろうとばかりに、仲間たちが駆けつけていくラストは、涙なしで見ることが出来ない。最近涙腺が弱くなっているとはいえ、今回は二度ほど涙が。・゚・(ノД`)・゚・。

 これぞまさに王とそれに仕える者たち、と言えるラストの集合絵が、もう本当に素敵すぎる。川上先生のツイートで気づいていたのですが、階段を下りていく彼らの足音が次第に重なっていくということで、いや、もう素晴らしいの一言だった。それしか言葉が出ない。ありがとうという言葉しか出てこない。

→通し道歌テクノVer.はサントラ収録とのことです。

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