「その手は届かない」(本多・正純)

 アニメ『境界線上のホライゾン』#5「月下の卒業者」のネタバレ感想です。これにて原作の1<上>の内容が終了。トーリたちがはっきりと目標を定めるまでにはもう一悶着ありますが、視聴者にとっては本作の目標がはっきりした回だったかな、と。正純の言葉を借りれば、その手を届かせ、掴むこと。


 本多・忠勝と鹿角のやり取りが素敵。これからトーリとホライゾンの関係が始まるの?どうなの?って言うときに、夫婦のその先、最期を見せるのはやっぱり何か意味を感じるよなぁ。

 神として天上にあがる前の前史(いわば、ぼくらの知る現実の「歴史」)をなぞっているというのが本作の基本的な流れでしたが、ここに来てその「歴史再現」に反旗を翻したのが三河当主松平・元信。言ってみれば、「末世」を乗り越えるために(来年以降の歴史は描かれていないので、この年で世界は消滅するのかも?っていうのが現状)、歴史は自分で考え、紡ぎ出せということ。

 正信の忠実なる臣、本多・忠勝が、二代目と立花・宗茂の再戦のために、「蜻蛉切り」を襪紡す辺りもそうなんですが、徹頭徹尾三河陣営の者は「未来」を見据えているわけですね(当然二代目となる人物にとって、忠勝の姿は一つの未来でもある)。

 ちなみに、物語のエッセンスは大体ファーストエピソードに込めるというのが持論ですが(もう少し厳密に言うなら、いずれ描かれることがミクロに、小さく描かれる)、トーリの告白が「末世を越えた未来を創る」ことに対応しているのだと思います。そもそも、十年前に死んだはずの女の子に告白するなど、ありえるはずもなかった未来だった。

 ここまで、五話すべてにおいていろんな視点で描かれてましたが、当たり前に来ると思っていた「明日」が来ない、当たり前に続くと思っていた「日常」が続かない、というのは、来年以降がないかもしれない「末世」のミクロ版。告白しようと思った明日、ホライゾンが処刑される。これからの未来を共に進みたいという宣誓の日に、その子の歴史は停止する。

 その最大級の困難さをもって、未来というのは、直近の「明日」だろうが、「来年」だろうが、自分で紡がないと始まらない、と迫る脚本がお見事。偶然だろうけど、この年にそのテーマをどこまでも突き詰めていこうとする作品がアニメ化するんだから、創作の世界は奇跡に満ちている。

 そして、「自分の好きな人に想いを通す」ことがこれほど困難ならば、その先にある「世界を救う」(=末世を越える)という物語にありがちな目標はどれほど困難なのかと。そう感じるけれど、でも、やっぱり思うのは、どちらも、同じぐらい大変なことだよなぁ。「セカイ系」の文脈なんかだと、そもそもキミとセカイが同義だったりするけれど(ぼくはそれ自体が「キミ」の軽視だと思うけれど)、本作はまた違った意味で、どちらも大事(おおごと)だと思えるよ。

 んー、やっぱりこの作品も副読本としては、『まおゆう』をおすすめします。



「やらねばならない。たとえ加速に耐えられず、この身が滅しようとも」(立花・宗茂)

 そんな三河者が「未来」を見据えている中、「いま、ここ」に全力でコミットして、燃焼し尽くそうとしているのが若者、ガル茂さんですね。二代目との再戦時に重要になってくるのですが、原作読まない限りはまずわからないので、二人のこの対比は押さえておいた方が良いです。

 今回みたいに台詞回しでちらっとでも良いから、二代目と宗茂さんとの「違い」を描いてくれたら、大満足だなぁ。映像的にどう動いているかはさっぱりながらも、原作は言葉で魅せてくれたから。

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