「あれが結城新十郎……、敗戦探偵」(海勝梨江)

 アニメ『UN-GOアンゴ』(原作坂口安吾『明治開化 安吾捕物帳』#1「舞踏会の殺人」のネタバレ感想です。フジテレビOn Demandにて第一話無料配信。水島精二監督×高河ゆんさんでダブルオーコンビと見るか、水島精二監督×會川昇さんでハガレンコンビと見るかとか考えてたら、水島精二監督×高河ゆんさん×會川昇さんで新境地だった。



「人間は堕落する。聖女も英雄も。それを防ぐことはできない。それが救いだ」(結城新十郎)

 水島精二監督前作『機動戦士ガンダム00』の「俯瞰-実感」というテーマを引き継いだ作品と見た(詳しくは1stシーズン感想へ)。なので、昇降を表す「エレベーター」がキーファクターとして描かれるし、海勝麟六は外に出ることなく、俯瞰する。そして、海勝梨江は堕ちるのではなく、自ら降りることができる子。

 ファーストエピソードに作品のエッセンスを十全に詰め込むものだと思うんですが、そう考えると、「ずっと堕ちてる」と嘯く新十郎と因果がエレベーターで上にあがるシーンから現れるのは見逃せない。

 「ずっと堕ちてる」と言った直後に、坂道をのぼるし、その直後に夕日は沈む。OPから、まるで黒<ヘイ>さんのような(笑)、新十郎が描かれますが、加納同様彼も戦争時代は「英雄」と呼ばれるような立ち位置にあったのかも?

 ということは、これ、完全に「俯瞰と堕落」、新十郎はその狭間で揺れ動いている描写ですよ! そのまま黒<ヘイ>さん。

 水島精二監督のダブルオーの流れを汲みつつも、ダーカーの「狭間の者」描写も描かれている感じ。ダブルオー×ダーカー+推理ものって、どんだけで自分の好みを狙い撃ってくるんだ。海勝ロックオンには撃たれたくはないが、作品には狙い撃たれたい。

 閑話休題

 とはいっても、新十郎達は堕ち続けているわけで、美しいものを直視することはできない。これは、新十郎が一度死んでいるのにも関係あるのかな? 麟六や梨江の語る「美しいもの」は死者には関係がないと(特に、麟六の語る「美しい結末」は生者にとって意味があるもの)。

 でも、そんな堕ち続けるだけの新十郎達に、わざわざエレベーターで下に降りてまで追いかけてくる梨江の存在は、やっぱりなにか意味があるのだと思う。

「美しいものを美しいものとして、終わらせるか。俺達には縁のない話だ。ずっと堕ちている途中なんでね」(結城新十郎)



 他にも、もし仮に、新十郎が戦争時における「殺しの達人」なら、探偵として殺し方に精通しているというのも納得がいく。そして、逆にそういう人間だからこそ、動機がわからないというのも上手い。

「問題は誰が? ではなく、何故? かもしれないな」(結城新十郎)

 森博嗣じゃないけれど、誰かが人を殺した動機なんて、他人にわかりようがないんだから、因果の異能任せというのは、潔くて良い。戦争時における「大量死」に言及されていたり、本格ミステリーの流れも押さえている感じなので、そーゆー意味でも今後が楽しみな作品だ。

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明治開化  安吾捕物帖 (角川文庫)
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