境界線上のホライゾン1〈上〉―GENESISシリーズ (電撃文庫)「――境界線上です」(ホライゾン・アリアダスト)

 川上稔著『境界線上のホライゾン1<上><下>』のネタバレ感想です。アニメ放送が待ち遠しい。細かいところとか、キャラ萌えとかは原作準拠だというアニメの際に語るとして、ポイント絞って二点ほど感想を残しておきます。


「それはどこだいホライゾン? 平行線の俺達が共に納得出来る位置は、一体どこにある?」(葵・トーリ)
『Jud.、――それは、平行線の重なる場所、異なる考え方の一致する場所。それは――』(ホライゾン・アリアダスト)


 境界線上。
 いわば、「丘の向こう」(@まおゆう)。まだ誰も見たことがない「明日」。

 アニメのPVで壮絶にネタバレを喰らってしまったシーンではあったんですが、この辺りの台詞を聞いたからこそ、その後期待五割増ぐらいで読むことができました。で、実際、どこまでも平行線で対立し合うトーリとホライゾンの二人を目の当たりにして、涙。・゚・(ノД`)・゚・。

 とある理由で歴史再現を行っていて、ちょうどいまは1648年。史実で言えば、確かこの年のウェストファリア(ヴェストファーレン)条約(世界初の国際条約)で、主権国家体制が確立され、現代から言うところの「近代」と呼ばれるような時代になった辺り。その「近代」に特徴的で、かつ現代まで連綿と浸透している「二元論」に、重要な意味を持たせてる作品だと思います。

「二元論」については、「反」「親」という言葉がぼくは最も喩えとしてわかりやすいと思っていますが、味方か敵かで分けてしまう考え方。ちょっと前にどっかのテレビ局でしょーもないデモが起こっていたように、近代発生から400年余りが経ったいまでも馴染み深い発想。

#ちなみに、ウェストファリア条約を締結することになる三十年戦争は、カトリックが自分たちとは違うプロテスタントを排除しようとして、プロテスタント側から反乱が起こったのがきっかけだったかと(自信はあまりないですが)。まさしく、「二元論」より生まれた戦争。

 冷静に、厳密に、そして、作中でトーリがホライゾンに対してやったように誠実に相手のことを見ていれば、わかろうとすれば、その間に分かり合う余地があることぐらい気づきそうなものなのに、なかなかぼくらはそれができない。

 だけど、そんな決して交わることができないものが存在し、その相手がそうなのだということは前提として、それでもその平行線が重なる場所を目指そうと、手を取り、繋ぐトーリとホライゾンが、カッコイイ。そこに至るには、どちらか一人だけが頑張るだけじゃあダメなんだ、と相手に助けを求められる二人が、壮絶にカッコイイ。

 まさに、いま、二人がいるその場が境界線上。

 一週巡って(この長大な物語に臨む覚悟はできました)、最終巻に間違いなく再び描かれるだろう境界線上での相対(会いたい)を想ったら、もはや号泣では済まされないだろうなぁ。また手に手を取って、ほしい。

「手繋ぎ」描写、ぼくほんとうに大好きなんですよ。この手繋ぎに至るまでに、ホライゾンの胸をトーリが突っついて(これもまた境界線上での話)、笑いを取ってからのこともあって、反動で泣けてきた。このシーン、早く映像で見たい。



 第1話にその作品のエッセンスを込めると言われるものですが、先の「境界線上」ともう一点注目していたいのは、立花・宗茂と本多・二代の戦いですね。基本文章ベースの戦闘は映像化できない自分ですが、そのハンデを補っても余りある魅力的な戦闘でした。

 宗茂の方が、あとの負担を考えず、「いま、ここ」の最高速度を得ようとする中、「これから」到達すべき最高速を目指して、どんどん加速していく二代の対比が凄まじかったです。

#ウチの読者さんだと、『C』の三國さんと公麿の対比を思い出していただけるとわかりやすいかな。

 で、勝った二代が、父忠勝(先人=過去)を立て、宗茂のいまを下げない辺りがよかったです。(あとのことをまったく考えず)「いま、ここ」の一瞬にすべてをかける、というのは、確かに勇ましさすら感じて、憧れますが、どこか危うさも感じますので。その点、二代の方は「過去-現在-未来」すべてを見据えた上で戦っているっぽいのが、素敵。

 この辺りの視点が、現在歴史再現を行っていて、今年「末世」という終末を迎えるにあたって、これからの歴史をどうしていくのか、とか後半の展開にかかってきそうなところだと思います。過去から連綿と続いてきた歴史を汲んで、今ここにいる周りの人たちの想いを汲んで、それでも「これから」を目指せるのかと。

 そして、その「末世」に相対するため(ようは未来を掴むため)、ホライゾンの失われた「感情」を取り戻すというストーリーラインを用意してあるのが、まだはっきりとした言葉にはなりませんが、とにかく「すごい」(笑)。ほんとうに「すごい物語」を目撃することになりそうです。

境界線上のホライゾン1〈上〉―GENESISシリーズ (電撃文庫)
境界線上のホライゾン1〈上〉―GENESISシリーズ (電撃文庫)
境界線上のホライゾン1〈下〉―GENESISシリーズ (電撃文庫)
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境界線上のホライゾン 4 上 GENESISシリーズ (電撃文庫)
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