「立ち向かい続ける私こそ主人公だと思わないか」(鎖部左門)

『絶園のテンペスト』第二十話「理不尽な話だ」のネタバレ感想です。先日発売された第4巻直後のエピソード。抜けてる2巻分の感想は、また補足します。


「いちゃいちゃしてるな」(鎖部葉風)
「いちゃいちゃしてますね」(滝川吉野)


 潤一郎さんの横槍が入ったことで、葉風、ついに吉野への「恋」を自覚す。胸板や肉付きがいいとか、耳たぶならば一晩は触っていられるとか、吉野への思いを1ページにわたって長々と語り聞かせた後に、自覚。えっ、わたし吉野のことそんなに好きだったの? と気づき、あたふたする葉風さん可愛い。城平作品において、極めて貴重な「普通の恋」をしてる。うん、これは成就しないな(きっぱり)

 案の定、これ以上彼のことを好きになったら、葉風のために「はじまりの樹」が吉野の彼女を殺すかもしれないという指摘を受け、愕然とする葉風。でも、これは読者的には、吉野の彼女が不破愛花で死んでいることがわかっているので、問題ないんだよな。城平京のファンは、さらにメタ的にうまくいかないだろうことを予感するだろうけど。

 この吉野の彼女が死んだ愛花であるという、読者にとって自明なことを、今後どう使っていくのか。麻耶雄嵩の『螢』のような「騙し」の構造になっていたりするのかな。

絶園のテンペスト(4) (ガンガンコミックス)
絶園のテンペスト(4) (ガンガンコミックス)
螢 (幻冬舎文庫)
螢 (幻冬舎文庫)

前回第14話「大渦巻に呑まれて」の感想へ
次回第21話「何やら企んでいるようであり」の感想へ
『絶園のテンペスト』感想インデックスへ