「信じろ!」(シンドウ・スガタ)
『STAR DRIVER 輝きのタクト』第二十三話「エンペラー」のネタバレ感想です。お待たせしました。
◇
「ワコを守り続ける自信はあるか?」(シンドウ・スガタ)
「全然! だって、タクト君とスガタ君が揃っていたら、無敵だもん」(アゲマキ・ワコ)
ワコだけが、すごく「わかっている」感を出してるのが、格好良い。タクト君だけでも、スガタ君だけでもダメで、二人が揃っているからこそ、ワコは笑顔で居続けることが出来るという。ワコなりにどちらを選ぶか?という答えは出ているのだろうけど、いま大切なのは、きっとこの三人で青春を謳歌すること。
……にも関わらず、スガタは結局「二人と一人」になる未来を見て、タクトはやっぱり変わらぬ、昔の輝いていない頃の自分を思ってしまっている。
特に、前回タクトは、サリナ部長たちの問いに、
「もし僕に命のオーラの輝きがあるなら、それは船を動かすためのものではなく、彼女の笑顔を見るためのもの。たとえナイフを持っていたとしても、それは彼女を守るためのものです」(マルク/ツナシ・タクト)
と、おそらく作中解となることをいっているにも関わらず(詳しくは前回の感想で)、今回はスガタとワコのデートが気懸かりで、色々とダメダメな感じ。
例えば、この部分以外でも、ヘッドを殴ってしまうところとかも、そうですね。
「とりあえず、一発殴ってきた」(ツナシ・タクト)
確かに、この島に来る前から「一発殴らないと気がすまない」ということを言っていたけれど、今回の「一発」はヘッドの希求している「力」に近い。というか、既にタクトはヘッドに対して一発殴っているんですよね(十六話の時点で)。
「皆見の巫女を守っているアイツは、結局力尽くで排除するしかない」(ヘッド)
ずっと感想で、サイバディが再生可能になったところで、サイバディを破壊することの意味が変わってきたと言ってきたけれど。そして、その過程でタクトの持つ強さはヘッドの求めるものとは、何か違う。本当の強さとは、彼が持っているようなものなのだろうと、カナコ様やベニオが気づいた。だから、彼女たちは、再びサイバディに乗ろうとは思わなかった。
その辺りの「本当の強さ」とは何か? という僕なりの考察は、
STAR DRIVER 輝きのタクト/感想/第13話「恋する紅い剣」/誰かの「ヒーロー」になるということ。
この記事に書いてますので、そちらに譲るとして。そんなタクトだったにも関わらず、今回は素で殴ってしまうという。ここで、描かれているのは、きっと、良くも悪くもタクトが「普通の人」だということ。ヘッドなどは幼少の頃からスタードライバーの訓練を受けていて、「特別」というようなことを言外に言っているけれど、タウバーンが地球製というだけで、タクト自身はヘッドと変わらない普通の人だった(前回「神話前夜」でタクトがやった役マルクも、別段何と言うことはない、「普通の少年」だった)。
#今回、僕はかなりタクトとヘッドを似せて、描いているという印象を受けました。
むしろ今回顕著に描かれていたのは、スガタの特別性で。タクトが結局普通の少年という描かれ方(映画館で放置される描写や、銀河美少年としてではなく後輩としてフィラメントに心配されてるシーンなど)をしているのに対して、スガタは至る所で「選ばれた人」「持つ者」「絵になる人」(笑)として描かれている。
そんな彼が、彼のためだけに用意された「綺羅星十字団第一隊エンペラー」の「キング」として加入し、またその圧倒的な「力」(演劇で喩えるなら、ナイフ)の前に、タクト自身が持っていた「輝き」すらも吹き飛ばしていきそうなところに、ワコは笑顔で言うわけですよ!
「全然! だって、タクト君とスガタ君が揃っていたら、無敵だもん」(アゲマキ・ワコ)
二人が揃っていれば、無敵だと。そう、少女の笑顔を守るためには、命のオーラの「輝き」と「ナイフ」が必要なんですね。ヘッドの求める「力」は否定されがちですが(事実、キング・ザメクの計り知れない力にミドリ先生は危惧しておりますが)、実は前回のエピソードを経て、少女の――あるいは少女「たち」の――笑顔を守るためには、必要不可欠なものと反転している。
#まあ、ヘッドさんの求める力は、ソラさんを守るためのものではなさそうなので、次回タクトとスガタによって否定されそうですが。
だから、若干の不安を感じずにはいられませんが、スガタ君を信じて待ちたいと思います。演劇「神話前夜」は結局のところ、マルクとコルムナが同時代に存在しなかったがゆえに、少女クレイスが救われることはなかった物語。だけど、いまのスタドラの物語は、マルクとコルムナが同じ時代に存在している。やっぱり、彼らは三人揃ってこそ、無敵。
「信じろ!」(シンドウ・スガタ)
◇
もう一点だけ。前回の「神話前夜」で、クレイスが何を選択したのかは描かれていない。ようは、彼女自身が何を考えていたのか見えてこないというのが、もう一つポイントだったと思うんですが、フィラメントの二人がそれに答えていてびっくりした。た、確かに、彼らも三人組だったな。
スガタとタクトは「俺に勝てばワコをやる」だの問答している中、普通にベニオさんの答えを待っている騎士っぷりが格好良い。さすがにタクトたちよりも一つ年上というだけあって、先に進んでますね。多分、タクトたちもこの辺りの関係に落ち着くのではないかと、想像していたりします。
「ベニオがやめない限り、俺たちはフィラメントだ。今も昔も、アイツの騎士(ナイト)か」(ゴウダ・テツヤ)
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STAR DRIVER<スタードライバー>輝きのタクト 3 【完全生産限定版】 [Blu-ray]
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→前回第22話「神話前夜」の感想へ
→次回第24話「ひが日死の巫女」の感想へ
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コメント
スガタの綺羅星入りがほぼ確定した辺りから、奇天烈衣装は覚悟していたんですが、
BONESのお抱え『鎖骨職人』の存在を忘れておりました。いや鎖骨どころの騒ぎでは
ありませんが(笑)。
ヘッドの支配欲が投影されたスガタの肖像画さながらに尊大な帝王を演じつつ、
綺羅星内部から壊していくつもりであるのかも知れませんね。
タクトとワコは惹かれ合いながらも、今はまだ三人組でいることが心地良いのでしょう。
すり寄ってきたヘッドに、古代銀河文明に固執する理由を聞き出すという手段も
あった筈ですが、デートから弾かれてあっさりと平常心を失ったタクトは、問答無用で
顔面パンチを喰らわせてしまいました。
タクトの右腕が機械鎧でないのが惜しいところでしたが、このところ余りに良いところ
無しのヘッドは、このままでは親父ならぬ“お父様”の轍を踏んでしまいそうな(汗)。
おそらく他人の人生を狂わせて手に入れてきたもの全てを無くすのでしょうが、
救いも必ず用意されていると信じています。
花火合戦以来、好感度の上がったゴウダ・テツヤらフィラメント組の決定権が
ベニオに委ねられているあたり、選択権をワコに任せたタクト達とまた見事な
対比構造ですが、せっかく啓蟄…もとい、ジョージもいい先輩っぷりを発揮したこと
ですし、彼等がタクト達に加勢する展開が欲しいですね。
>れおぽんさん
どうも、かもめです。大変遅くなって申し訳ないです。れおぽんさんのコメントに返信するときは気合いを入れる必要があるので、なかなか気持ちが乗っていないときは難しいのです。
>スガタの綺羅星入りがほぼ確定した辺りから、奇天烈衣装は覚悟していたんですが、
>BONESのお抱え『鎖骨職人』の存在を忘れておりました。いや鎖骨どころの騒ぎではありませんが(笑)。
満を持しての登場ということで、ただただ違和感しかありませんでした(笑)。最初から仮面をつけて登場してくれれば、他のキャラ同様すんなり受け入れることが出来たとは思うんですが、なまじ普段のスガタのまま出てきたので、面白可笑しい気持ちにしかなれませんでしたな。仮面による表情の変化は面白いなぁ、と。
>ヘッドの支配欲が投影されたスガタの肖像画さながらに尊大な帝王を演じつつ、
>綺羅星内部から壊していくつもりであるのかも知れませんね。
「与えられた役を演じるのは得意」という彼ならではの“戦い”ではありますね。ある意味「支配」すること、強大な力(=ナイフ)を持つだけでは人は救われないことを身をもって示すためとも取れるのかもしれません。ヘッドと似ている彼だからこそ、そーゆー役を演じることが出来るのだと。
>タクトとワコは惹かれ合いながらも、今はまだ三人組でいることが心地良いのでしょう。
ある意味で、スガタとタクトは、ワコに答えを迫っているとも言えるかもしれませんね。その点が大きくフィラメントの三人とは違っていると。彼らは、ただただベニオが答えを出すのを急かそうともせず、ただ待っている。さすがに、タクトたちよりも一つ年上だけあって、“大人”の描写になっていますよね。
続きます。
続きです。
>すり寄ってきたヘッドに、古代銀河文明に固執する理由を聞き出すという手段もあった筈ですが、デートから弾かれてあっさりと平常心を失ったタクトは、問答無用で顔面パンチを喰らわせてしまいました。
>タクトの右腕が機械鎧でないのが惜しいところでしたが、このところ余りに良いところ無しのヘッドは、このままでは親父ならぬ“お父様”の轍を踏んでしまいそうな(汗)。
>おそらく他人の人生を狂わせて手に入れてきたもの全てを無くすのでしょうが、救いも必ず用意されていると信じています。
ポジション的には十分“お父様”っぽい立ち位置ではないだろうかと思いますね。親父ポジションはカタシロさんの方で。
こう、つくづく思ってしまうんですが、きっとヘッドは役者に向いていないんでしょうね。やるべきこととやりたいことが決定的にズレている。あの年までずっと夢を追い続けていることを凄いと思う反面、悲しいですね。誰が彼に「現実」を見せるのでしょうか。サカナちゃんカモーン。
>花火合戦以来、好感度の上がったゴウダ・テツヤらフィラメント組の決定権がベニオに委ねられているあたり、選択権をワコに任せたタクト達とまた見事な対比構造ですが、せっかく啓蟄…もとい、ジョージもいい先輩っぷりを発揮したことですし、彼等がタクト達に加勢する展開が欲しいですね。
まさにそのような展開が用意されているっぽいですねっ!>最終話。
フィラメントの三人の関係があれほど完成されているのは、きっとそこに「恋愛感情」が存在しないからでしょうね。少なからず「恋愛感情」には支配欲や独占欲が介在してしまうものですが、彼らにはそれがない。