STAR DRIVER 輝きのタクト(1) (ヤングガンガンコミックス)「本土に行けば あたしにも別の景色が見えるかな?」(アゲマキ・ワコ)

 漫画版『STAR DRIVER 輝きのタクト』第一巻のネタバレ感想です。大まかな流れは変わっていませんが、要所要所でアレンジが効いています。こっちのワコは、スガタ一筋という感じ。


 原作版と比べて、ワコとスガタのぎこちなさが異常。その点で、原作アニメよりもよっぽど、ラブコメっぽい展開になっている。いちいちスガタは「ワコとの関係は親が決めたことで、僕には関係ない」という態度を取ってるし、そう言いつつ影ながら、「王の柱」でワコを守っていたりするし(今の所、原作のようなリスクのある力として描かれていない>王の柱)。スガタ君、ツンデレです。

 いまの書き方だと「原作とは別物」という誤解を与えてしまいそうだけど、それぞれの登場人物が持っていた設定を「深化」させてるような、そんな印象を受ける。

 ある意味、アニメ版第四話の時点で、ワコは「答え」を出している(すでに「止揚」されている)のだけど、こっちのワコは未だ苦しんでいる途中なんですよね。

「本土に行けば あたしにも別の景色が見えるかな?」(アゲマキ・ワコ)

 島の外に出て歌手になるという夢は、巫女であることを知った日に潰えてしまったけれど、それでもこの島でこの島なりの幸せを見つけることができる。そのことに気づいていたアニメ版ワコに対して、こっちのワコはこの島から出ていくことで自分が変えられるんじゃないか? そんな期待を持っていたりもする。

#その過程で、アニメ版では、誰とも本気で向かい合っていないと否定されたスガタの態度が、ポジティブなニュアンスに変わっている。同じ場所にいながらも、別の場所を見られるスガタが羨ましいとワコはいう。

 そして、そんな細かい設定の変化を捉えて、「イカ刺しサム」に新しい解釈を見出しているのが素晴らしい。

 漫画版では、

「けれど サムが恋したのは―― その少女だったのか それとも銀河の世界だったのか」(サカナちゃん)

 という台詞を、タクトとワコに被せるんですよね。これ、原作では、結局ソラさんの美しさをキャンパスの中に閉じ込めようとするのか(銀河の世界、超古代文明の遺産の比喩)、ソラさん自身を欲していたのか、という問いをヘッドに発して、サカナちゃんは「(あなたは決して認めようとしないけれど)ソラさんでしょう」と糾弾しているわけですが、その質問をそのままワコに投げかけている。

 タクトに対してここまで何度となく頬を染めるシーンが描かれ、かつばっちゃんにタクトの話をしているワコは楽しそうだと、少なからずこの段階でタクトのことを意識しているワコ。

 だけど、その好意は果たして、本当にタクトに向いているのか? タクトの背後にある本土――この島ではないどこか――に対する憧憬ではないのか? とワコにとっては、なかなかに厳しい問いかけ。

 こうした問いを発すれば、原作の七話八話該当エピソードがまた違った形で描かれることになると思うので、次巻も楽しみです。進み具合で見ても(今巻で三話途中ぐらい)、七話八話該当エピソード辺りで締める形なのかなぁとも思いますし、放送終了後も気長に読んでいこうと思います。スタドラは、メディアミックス作品がことごとく面白い出来になっていて、いいですな。

STAR DRIVER 輝きのタクト(1) (ヤングガンガンコミックス)
STAR DRIVER 輝きのタクト(1) (ヤングガンガンコミックス)

STAR DRIVER 輝きのタクト 銀河美少年伝説
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