劇場版マクロスF サヨナラノツバサ netabare album the end of”triangle”「もうおまえを姫とは呼べないな」(ミハエル・ブラン)

 上映中の『劇場版マクロスF サヨナラノツバサ【恋離飛翼】』のネタバレ感想です。こちらは、いつも通り内容を掘り下げていく記事となります。


 ランカが振られることをわかっていながら、自分の気持ちに決着を付けるべく想いを伝えるシーンや、シェリルが自分の命を懸けてでも歌うシーン、あるいはグレイスとシェリルとの関係など、語るべきところはいくつもあるとは思いますが(この辺りはパッケージ化されたときにでも)、やっぱりこの完結編を見た直後に語るとすれば、アルトのことでしょう。

 姫だなんだと言われ続けたアルトが、紛れもない「漢」として飛び立ったシーンはやばかったです。燃えた。まさか、アルトくんに燃える日が来るとは思わなかった(笑)。

 イツワリノウタヒメの感想にも書きましたが、『マクロスF』という作品は結局のところ「出会い、愛し、愛される」ことがテーマで、アニメ本編の方ではその中でも「出会い」の方にフォーカスされていました。その結果として、アルトが家を飛び出してまでも、目指した「飛翔」行為は誰かと出会うためのものだっと裏返る最終話が素晴らしかったわけです。

 ですが、その一方で、実は自身の家問題、女形という「役者」とどう向かい合っていくのか明確に描かれてはおらず、そこだけ消化不良になっていた。家問題に決着がつかない限りは、「出会い」のあとの「愛し、愛される」パートに移行できない(誰かを愛するということは、最終的には家庭を持つことだから)。

 だから、三人の「出会い」の場面を飛ばしてまでも、「愛する」パートに重点を置いている劇場版では、きっとアルトがその問題に答えを出すはず……。そんな期待を、アニメ版の「続き」として、劇場版を見ることを勧める記事にも書きました。

 そして、そんな期待は軽く上回っていったサヨナラノツバサ。これは心底震えた。

 シェリル救出時、何気なくアルトくんが「女装」していたりしましたが、これって自分なりに「女形」に向かい合うことが出来たからこそですよね(それまで頑なに拒否していた)。オズマ隊長の「俺はガキだ!」宣言から来る、誰もが――役者じゃなくても――何か役を演じて生きている。だから、俺たちに出来るのは、その「役」が一体どんなものかということを決めるだけ。

 元々アルトくんが悩んでいたのは、役にのめり込むことで「自分」がいなくなるのではないかという不安だった。だけど、それは実は小さな悩みだった。ここに来て、これまでずっと視覚的に是として描かれていた「閉鎖空間をぶち破っていく」描写を転覆させるとは思わなかった。むしろ劇場版で問われているのは、閉じ込めるのでもなくぶち破るのでもなく、アルトは一体何を纏うのかということ。

#これ、イツワリノウタヒメを今朝方見返していて気づいたんですが、シェリルの気持ちを察するとき、シェリルの姿を纏っている(この時なぜかアルトはシェリルと同じように、フォールドクォーツを耳に付ける)んですよね。

 そして、女の姿を纏うことで、役者としての自分に決着をつけたアルトですが、この後がすごかった。なんと彼は、バジュラの気持ちになれば、攻撃を躱せると、バジュラを纏うのである。これ、本当にその手があったのか、と痺れた。バジュラにだって気持ちがある、心があるという話なので、理詰めで考えればその通りなんだけど、この展開を大真面目にやりきったのが、すげえ。

 そして、この舞こそが、「漢」早乙女アルトとしての飛翔行為。彼が、本当の意味で飛んだ瞬間。シェリルたちも言っておりましたが、本当にただただ美しかった。



 そして、だからこそ、アルトは行方不明、シェリルは眠りにつくという彼らの結末にまったく悲しみを感じなかった。悲恋と言いたくなる気持ちもわかるんですが、これ以上ないまでに、彼らはすべてを出し切っていたんだから。想いを伝えあったのだから。

#アルトなどは特にイツワリノウタヒメ冒頭で、「堕ちてもいいから飛びたい」とそう言っているんですね。そして、シェリルにとって「歌は祈命(いのち)」。

「愛している」という言葉を、アルトもシェリルも相手に伝えられたのか。「想いを伝える石」フォールドクォーツが直後に光っているので、すべてちゃんと伝わっているはず。

 だからこそ、すべてを伝え終わったあと、BGMも挿入歌も台詞も効果音も音という音がすべて消えて、生まれた「一瞬」の静けさ。歌がテーマだというマクロスシリーズだけど、本当に何かが僕らに伝わったのはこの「刹那」ではないかな、と、そんな風に思います。

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