結局120冊読むという目標には全然届きませんでしたが、今年のベスト5の紹介になります。「読書120」については、条件追加縛り強化で、来年リベンジしようと思ってます。


■第1位 橙乃ままれ(ママレードサンド)/魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」

まおゆう魔王勇者 1「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」

 勇者と魔王の戦いの「その先の物語」。誰もが、魔王を倒すだけで平和になるなんて嘘だと知りながらも、その先を決して描くことが出来なかった。だけど、2ちゃんの一つのスレから生まれたこの物語は、そんな壁をあっさりと越えていく。

「経済史」という武器を持ちながら、愛を糧に、魔王と勇者は誰も見たことがない「丘の向こう」を目指す。これは決して奇をてらった夢物語ではなく、僕らに関係のない世界の話でもない。

 だから、読んでほしい。手にとってほしい。
 この物語は、すでに目の前にあるのだから。

勇者「誰よりも利に聡く、誰よりも真剣に損得勘定で
 生きている商人は、もしかしたら世界で一番最初に
 損得では割り切れないものを見つけるかもしれない」


■第2位 犬村小六/とある飛空士への恋歌4

とある飛空士への恋歌 4 (ガガガ文庫)

 カルエルの復讐劇、ここに終結。ゆえに、あとはただひたすらにお姫様を救うのみ。さあ、飾り立てられた追放劇に始まったこの物語は、誰もが追いかけて止まない追想劇へと姿を変える。次巻が最終幕。開演を待とう。

■第3位 川原礫/ソードアート・オンライン1 アインクラッド

ソードアート・オンライン〈1〉アインクラッド (電撃文庫)

 アスナがキリトを好きになった理由に、悶えまくり。誰かを好きになる理由は、こうでありたい。

「いま、ここ」に生きることはとても難しい。だから、この物語はゲームの中で「死」を顕在化させることで、それを達成した。これとは真逆で決して死なない中で「生」を獲得しようとするWeb小説『ログ・ホライズン』(橙乃ままれ著)と読み比べてみても、面白いと思います。

■第4位 米澤穂信/ふたりの距離は概算

ふたりの距離の概算

 うーん、これだから、米澤穂信を読むのはやめられない! 古典部シリーズは本当に巻を重ねるごとに面白くなっていく。

 奉太郎に芽生えたとある「自覚」は、また新たな物語への引き金を引くだろうし、タイトル『ふたりの距離は概算』にもやはり二重三重に意味がある。これまでのエピソードを生かして、物語全体を締めるのはミステリー書きの真骨頂と以前作者はどこかで語っているけれど、まさにそれ。それがしかも一冊の短編集だけでなく、数年おきに出されるシリーズでも描かれるなんて、もうたまらない。一冊新しい巻が出る度に、それまでを文字通り「読み直し」たくなる。

森見登美彦/四畳半神話大系

四畳半神話大系 (角川文庫)

 四つのパラレルワールドの物語。結末はすべて一緒。だけど、本当にそうだろうか? と考えた瞬間に生まれた新たなる世界観。描かれている部分が同じだからといって、その先が同じとは限らない。

 だから、それに気づいてからの、「八十日間四畳半一週」を大切にしたい。この「私」を応援してやりたい。そして、明石さんとずっと幸せに暮らして欲しい、そんな願いを強く持った。