STAR DRIVER<スタードライバー>輝きのタクト 1 【完全生産限定版】 [Blu-ray]「アプリポワゼ!」(シンドウ・スガタ)

『STAR DRIVER 輝きのタクト』第六話「王の柱」のネタバレ感想です。


「第一フェイズ……、僕にもあるのかな」(ツナシ・タクト)

 誕生日に「止まった」時計が「動き出す」ことに象徴されているように、タクトの第一フェイズは止まった時間(「ゼロ時間」や閉じられた関係、空間の暗喩)を動かす、ぶち開けるみたいなトコロにあるのかな。ミセス・ワタナベによれば第一フェイズは必ずしも超能力ではないということだし。

「異能の力は、持ち主を不幸にするだけかもしれない」(ワタナベ・カナコ)

 良くも悪くも、そうした力が必ずしも良い結果を生むわけでないということが、描かれたのが今回のエピソード。こうした両義性は本当に一貫して描かれているのがスタドラです。

 何かとミセス・ワタナベはスガタのことを語っていたりするんですが(参照:第03話感想)、おそらく今回のこれはスガタだけでなくタクトの方にも通じる言葉なんですね。

 ゼロ時間の不可視の壁をぶち破って登場するタウバーンと呼応するように、島の外から「ありえない方法」でやって来た(島の境界をぶち破ってきた)タクト。そんな彼でも、ワコとスガタの生まれたときからずっと築いてきた関係は破れないし、それを破ろうとした結果、スガタはアプリポワゼし眠りについてしまうバッドエンド。スタドラ史上初めて、単発では完結しない作りにもなった。

「巫女のあたしと違って、スガタくんは出ようと思えば、島から出られる。でも、その強い力を外で使わないよう、スガタくんも島から出ることを禁じられ、この離れ小島に囚われてる」(アゲマキ・ワコ)

 第一話から、何かと道場にいるスガタが印象的に描かれていたわけですが、今回それが彼なりの「閉じられた空間」、彼にとっての「離れ小島」と同義に描かれていたのが印象的でした。そうか、そうだったのかと。ワコの台詞にもあるとおり、スガタは出ようと思えば島から出られる。

 だけど、彼は自身の選択として決して島から出ようとしない。

 ワコの台詞がどこまで真実なのかというのは若干疑問があるところなので(スガタは禁じられて島に囚われているというが、それは本当なのか?というのはやっぱりラブコメ好きとしては気になるところ(笑))、こんな風に感じてしまいますね。スガタって、本当に本音をあまり語らないので(許嫁って何? 現代は自由恋愛でしょ! という言葉に象徴されるよう、建前ばかりを語っている)。

 だけど、彼自身はちゃんと自分の「本音」をわかっていると思うんですよね。ワコのピンチに、自分に課していた束縛を破って、道場から出てくるし、彼女のためにアプリポワゼし自分の命すらも投げ出してしまう。

「ワコから、離れろ」(シンドウ・スガタ)

 お前、どんだけワコのこと好きなんだよ、と。恋愛は自由なんて建前、あえてそうした言葉を使っているようにしか思えない。ワコのこと大好きなのに。

 なぜそんなことを言ってしまうのか?

 ワコは閉じ込められ、タクトはぶち破る。なら、サカナちゃんを閉じ込めてるヘッドと対応してそうな、スガタは「閉じ込める」ものかというのが僕の予測でしたが、今回のを見る限りは自発的に「閉じこもる」ものっぽい。そして、それぞれが各プロセスの内に「両義性」を持っているというのが僕の見立てで、ならば「閉じこもって良いの?」と疑問を持つのも彼なんですよね。

 シンドウ家とアゲマキ家の「しきたり」という形で許嫁の二人。だけど、慣習という閉じられた関係をそのまま享受する形で、ワコと付き合ってもいいのか? 結婚しちゃってもいいのか? どうせなら、なるべくなら、叶うならば、できることなら、そんな理由ではなく、彼女に「心の底から想われたい」というのが彼の「本音」のところなんじゃないでしょうか。

 奇しくも、

「大切な人よ。わたしとスガタくんは、小さい頃からずっと一緒だった。私はこの皆見神社で生まれて、封印の巫女を受け継いだもの。この島に囚われて生きる運命だって教えられて、でも、今日まで頑張ってこれたのは、きっと同じような運命を背負ったスガタくんがそばにいてくれたから。スガタくんね、いつもポケットにナイフを持っているの。なんで持っているのって、わたし、怖くて聞けないの」(アゲマキ・ワコ)

(あの人か……)(ツナシ・タクト)


 ワコのもう一つの「本音」に触れたタクトが、何かを諦めたように、スガタはスガタでそうした願いを諦めていた。だけど、タクトの出現と彼の今回の行動によって、諦めかけていた何かのために「颯爽登場」を果たしたのはスガタ。

 タクトが主人公のようでいて、いつもスポットが当たるのは南十字島の人々。

 良くも悪くも、僕はタクトは「一陣の風」にしかならないと思っていたりするんですが……。彼自身の「物語」はこの島に来るまでに終わっているような印象もあり、予告の口上が「君の銀河はきっと輝く」という形で「君」(自分ではなく、他者)というのに焦点が当たっている辺りからも、そうした印象を強くします。

 何かの「きっかけ」にはなるかもしれないけれど、本質的には何にも関与することができない(これまでの綺羅星十字団もそれぞれ自身の本音を取り戻しているだけで、銀河美少年の存在によって何かが劇的に変わったりはしてない)。今回も積極的に関わった結果として、スガタに悲劇を招いてしまった。そうした切ない立ち位置になりそうだなぁ、と。

 それこそ、オープニングムービーで南十字島を駆け巡るタクトに、誰も反応を示さないように。そして、柵を乗り越え、島から飛び去ってしまう彼を誰も見送らないように。

 島を駆け抜けた風。風だけにいつかは忘れられてしまうかもしれないけれど、それでも何かを残していく。スタドラのラストシーンは、タクトが島を出て行くところで終わるというのが形として美しいと個人的に思っているんですが、それがOPのような「ありえない方法」で人知れずなのか、それともフェリーのような「ありふれた方法」で誰かに見送られるのかで印象も変わってくるなぁ、と思っていたりします(僕は後者で変化球が来ると思ってます)。今後も楽しみです。

→DVD&Blu-ray第一巻予約受付中

STAR DRIVER<スタードライバー>輝きのタクト 1 【完全生産限定版】 [Blu-ray]
STAR DRIVER<スタードライバー>輝きのタクト 1 【完全生産限定版】 [Blu-ray]
STAR DRIVER<スタードライバー>輝きのタクト 1 【完全生産限定版】 [DVD]

前回第05話「マンドラゴラの花言葉」の感想へ
次回第07話「遠い世界」の感想へ
『STAR DRIVER 輝きのタクト』の感想インデックスへ