クーラーのリモコンが壊れ、部室が暑くてたまらない「SF研究会」部員たちの前に、突如タイムマシンが現れる。昨日に戻り、クーラーのリモコンを取ってこようと考え過去へ飛ぶが、過去を変えると連鎖的に「今」が消えてしまう可能性に気づく。「今日」を消さないために大慌てで「昨日」を再現しようとする部員達の奮闘を描く、タイムトラベルコメディ。
すごく良かった。元々
七瀬さんのところで知ったので、これは見たら絶対に面白いだろうなーと思っていたのですが、どんぴしゃ。良い。最近の作品だと
小林尽さんの『夏のあらし』と同じ構造になっているので、初日の段階である程度その日がどうなっているのか想像がついたんだけど、予想外の部分も多くて(カッパとか!(笑))終始楽しみかつ笑いながら見られた。初日の部員達の不可解な行動もあとで全部説明されるので、単純にミステリーチックな楽しみ方もできる。すごく完成度の高いシナリオ。
このシナリオを書いているのが『四畳半神話大系』でも脚本を担当されている上田誠さんだというのがなんか感慨深いなぁ。ラストのメッセージはどちらかというと真逆なんだけど、それでも両方を見ていると通じる部分がある。こっちが好きな人は四畳半を見ても楽しめるだろうし、四畳半が好きな人はぜひ一度こっちも目を通してもらいたい。
以下、ネタバレで少し。
最後の「名字って変えられるんだっけ?」が、僕としてはグッと来た。作品の構造上すでに甲本たちが生きている世界はタイムトラベルの影響を受けているので、タイムマシンを使っても歴史は変えられないんじゃない?という結論が出る。出るには出るのだがそれは確定事項としても、映画館がいつかつぶれることを知った春華が、なくなると寂しいといって「いま」映画館に行くことを決めたように(別の描写から未来で彼女が映画館に通い続けていたことがわかる)、逆に「いま」の決断に焦点が当たるようになっている。タイムマシンを使っても歴史を変えられないんだし、変えられるとしたら「いま」だけ。どうせフラれても確定事項だったんだと諦められるんだから、その確定事項に滑り込めるように「いま」もがいとけ!みたいな結論が前向きで良い。