「いずれにせよ、僕はあなたに出会って、全力であなたを駄目にします」(小津)

 滋賀でも一週間遅れで放送されているアニメ版『四畳半神話大系』のネタバレ感想です。原作のことを考えると、文字では魅力を語りにくいというのが不思議でもあるんですが、これはつまりアニメならでは面白さを掴んでいるということなんだろうなぁ。原作小説を読んだのはだいぶ前なのでいい感じに内容を忘却していて、楽しみです。


 今回の見所ベスト3は以下
■3位 小津くんはイイやつ

「おい! 今日はここまでなんて思っているんじゃないでしょうなっ! 神の言葉に逆らわず、とっとと恋路を走りやがれ!!!」(小津)

 小津くん、イイやつ。「私」と明石さんが結ばれるように、影ながら動き回って、時には邪魔し時には手をさしのべるというのが彼ですが(神が電話していた相手は多分小津くん。明石さんの居場所を聞いていた)、いやぁ、本当にイイやつだよなぁ。あんだけバカ騒ぎできて、満足できない「私」が信じられない。もうあれだけ楽しいキャンパスナイフなんてないだろう、最高じゃないですか。

■2位 約束

「借りは良いですから、“約束”を果たしてください」(明石さん)

 約束。どのサークルに入っても、小津くんと明石さんには出会うんですが、そこで交わす一つの「約束」。薔薇色のキャンパスナイフへの第一歩。そのきっかけはいつだってあるのに、「私」が自分の殻にこもって、おもしろおかしく言い訳し続けるので叶わないという。明石さんすげー可愛い。真綾さんの声がここまで合うとは思いませんでしたよ(←声優としての真綾さんの大ファンだったりする)。

■1位 「私」の語り

「しかし、私は負けなかった。負けることができなかった。しかし、負けていた方が、私もみんなも幸せになれたに違いない! 小津は幸せになれずとも良い!!」(私)

 原作小説の一番の魅力ともいっても良い、「私」の一人語りがホント素晴らしいなーっ! これはもう実際放送を見てもらわないと面白さが伝わりにくいんですが、いやぁ、本当によく舌が回る。「私」のみならず、登場人物全員早口。あんだけ早口でよく喋れるものだ、声優さんすげー。

 原作小説を読んだ時には気づかなかったんですが、この「私」の一人語りって重大な意味を込めていたんだなぁ。彼が一人で何かを喋っている時の方が圧倒的に饒舌で面白い言い回しになっているんだけど、最後の明石さんのときなんかはダメダメで、早速言い訳し出すという。ちょっと頑張れば(=決断すれば。逆に言うと、今回小津と私で「私」と決断している辺り、このお話がある程度最終話に繋がっているんだと思う)、薔薇色のキャンパスナイフも夢ではないっ!

 今回の「ラリーどころかまともに打ち返せない、打ったボールは返ってこない」とうまくレトリックを使って、「私」のコミュニケーションできてない感を出しておりましたね。だから、自分だけで話す一人語りの時は素晴らしい饒舌。ある種のナルシズム。これがないと森見小説の主人公になれない。所謂、サブカル批評でいうところの「自意識の迷宮」に陥っている状態なんだろうなぁ、と。最終的にその象徴とも言える状況に「私」は立ち向かうことになるので(ここはアニメ版でも変えないと思う)、結構そういう下敷きを持っていた作品なんだなーっと。それを思うと、その迷宮に堕ちることを防いでくれている(「私」の話し相手になってくれている)小津くんはやっぱりいいやつだよなぁ。

→OP&EDは原作を読んでるとニヤニヤしてしまう。

迷子犬と雨のビート
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神様のいうとおり
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