絶園のテンペスト 1 (ガンガンコミックス)「どんな手を使っても 辻褄を合わせてやる」(不破真広)

 城平京原作の『絶園のテンペスト』第一巻のネタバレ感想です。収録話については月刊少年ガンガン掲載時に書いた感想の再掲になってます。単行本派の方は、この機会にまとめてお読み頂けたらなと。


■第01話「魔法使いは樽の中」感想

 大きく二つの筋があって、一つは真広の家族を襲った殺人事件と「この世の関節を外そうとする」魔法使い鎖部一族のお話。この二つの軸にいったい主人公の滝川吉野はどう関わっていくのかというのが、序盤の見所なんでしょうか。

 一般的に、殺人事件が合理で、魔法が不合理っぽいですが、真広曰くこの場合どちらも不合理。ゆえにそれらを相殺することで自分の妹愛花を殺した犯人を見つけ出し、そいつを殺すというのが彼のストーリー。そのために、一族に見捨てられた鎖部葉風に手を貸している、と。

 これ、結構どちらかが不合理かとか考えてみると面白いですね。一般的にいえば先述したような結果になるんですが、本作の場合実は真広一家殺人事件の方が不合理で、魔法の方が合理に見えたりする(真広とはまた見解が違いますが)。事件から一年経っても動機のかけらも見えないというのはどう考えても不合理ですし、一方で今作における魔法は「供物」(マジックアイテムみたいなもの?)を必要とする合理がある。道具を使う辺り科学っぽさがありますね。

 合理不合理でいえば、「ボランティア」で黒鉄病を追うエヴァンジェリン山本もだいぶわけがわかりませんし、主人公の滝川吉野も物語の本筋から逸脱しているように思えますね。

 まあ合理不合理なんて、認識によって大きく変わってしまうものですが。それこそ世の中の関節が外れてしまったら、その判定にも大きく変化がでてきますよね。

 こういうミクロな登場人物たちとマクロな世界がカチッと填るパズル系の作品だったらだいぶ面白そうな気がしてます。『スパイラル 推理の絆』『スパイラル・アライヴ』『ヴァンパイア十字界』で見事な解決劇を魅せてきた城平京さんなので、もうかなり期待しちゃってますが。これは毎号楽しみすぎるな!



■第02話「彼女はとてもきれいだった、と少年は言った」感想

 城平京作品らしくないみたいな感想が結構出ているみたいですが、それは多分鳴海清隆やストラウスのような神のごとく超越した存在がいないからではないかと。彼らの企んでいることを見抜くというのがこれまでは本筋でしたが、それが大きく広がったのが本作なんじゃないかなー、って気がしてます。

 今までの作品ならば論理の大元が清隆やストラウスのような人にあったけれど、本作ではそれが世界(物語の世界観)そのものになったというイメージですね。グローバルな感じです。

 すなわち、理(ことわり)そのものにフォーカスが当てようというのが本作なのではないかと。だいぶ妄想しちゃってますが、まったく無根拠というわけではなく、

「復讐したって 犯人を殺したって 不合理は不合理のままです。何も変わりません」(滝川吉野)

 という台詞や、吉野、真広両名共に「人は死んだらそれまで」という至極当たり前の死生観を語らせている辺りが、いかにもという感じです。吉野に至っては、この関節の外れた世界ならば死んだ彼女にもできることがあるのかもしれませんね、とまで語らせている。

 不合理が不合理のままなのは、それがより堅固な理(死者は甦られない)に支配されているからで、その理が揺らぐのならば……と。まあただの戯言なんですけどね。



 とまあ、妄想はこれぐらいにして、ちゃんとした感想をば。
 本筋から置いてけぼりじゃん!と思っていた吉野は、愛花の彼氏で、フロイライン山本を普通に圧倒する「できる子」でした(笑)。でも、これはなんかもう少年に圧倒されてばかりの山本さんを愛おしむ漫画ですね。吉野もいいキャラしているけれど、やっぱり山本さんだな(←格好良いけど、ダメな女が好き)。無職で二十七歳の女、最高ですw

 真広が葉風と取引したように、吉野もまた山本さんと取引。で、早速魔法使いと交戦中の真広の所に赴くわけですが、城平京さんの作風からいえば今までに登場した防御と高速移動の魔法を使って逆転する感じかな。切り札はまあ山本さんでしょうけれど。

 異能バトルものとしても期待しているので、次号は楽しみですね。城平京さん特有の相手の心理を読みながらの知能戦も合わされば、バトルの方でも毎号楽しみになりそうです。『ヴァンパイア十字界』では後半になればなるほど、バトル要素が消えていったので、その辺りどうなるかだよなぁ。



■第03話「できないことは、魔法にもある」感想

「我らの魔法はこの世の理を守り・直し・治めるための力 それに特化した魔法だ」(鎖部葉風)

 ゆえに、ファイアボールみたいな攻撃魔法がない。攻撃手段は硬化して、高速移動のみという。どんなガチンコバトルものだ、って感じなんですが、魔法を使うには文明の力がいることといい、これはこれでいい。相変わらずの城平京っぽい世界観だ。この辺の舞台装置がそのまま作品の展開にかかってくるんだろうな。今回吉野が疑問に思っているような、守りに特化した魔法や文明を必要としていることなんかは、そのままダイレクトに関わっていきそうなところ。

「始まりの樹」が守っている理が何なのかってことですが、ここは死者は甦らないというよりかは、死後の世界的なものかなぁ、と思ったり。黒鉄病で人々が金属化していってるのも、あちら側に取り込まれているみたいな。吉野がずっと愛花の甦りを願っているので、まあそういうものなんだろうな、と。

 最終的には蘇生を認めない真広(葉風)と蘇生を願う吉野(左門)という対立項になっていきそうな感じ。



■第04話「全てのことには、わけがある」感想

「左門 貴様では勝てん 世の理が私と共にあるかぎり 貴様に勝機は巡りはしない」(鎖部葉風)

 左門がいかに「絶園の樹」を復活させようとしたところで、そのコントロールを誤れば命取り。それを制御できるのは葉風さんだけだから、そうなったら左門は葉風さんを島から呼び戻すほかない。と、完全に葉風さんが左門をチェックメイトしたところで、大どんでん返し。

 鎖部葉風はすでに死んでいた。

 これ、どういうことなんだろうな。「はじまり」の理が彼女を味方につけるために蘇らせたとかなのか。逆に前回の感想に書いたような、はじまりの樹が守っているものが死後の世界だとしたら、しっくりくるか。彼女がいるのは死後の世界における孤島で、他の人と会わないから、自分の現状を理解していなかったみたいな。



「日々起こる悲劇も不幸も いつか明かされる最良の結末のため 価値ある出来事なんです」(不破愛花)

 その「最良の結末」は吉野のためであってほしいな。愛花は彼のことを本当に大切に想っていたようなので。それにプラスして、二人が恋人同士であることを伝えられなかったことや黒鉄病など、それら全てが最後には意味のあるものとして繋がっていくなら、それだけでもうガチで超傑作な気がする。ホント、城平さんらしくて面白い。

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