DARKER THAN BLACK ~漆黒の花~ 1 (ヤングガンガンコミックス)「契約者になりたい」(月森梓)

 岩原裕二『Darker Than Black−漆黒の花−』第一巻のネタバレ感想です。収録話についてはヤングガンガン掲載時に書いた感想の再掲になってます。単行本派の方は、この機会にまとめてお読み頂けたらなと。


■第01話「暗雲」

 本編ラストで契約者の「合理性」と人間の「人間性」を止揚し、第三の選択――人間か契約者かではなく、その真ん中の道――を黒<ヘイ>は選んだ。警察側が黒<ヘイ>の象徴であるワイヤーを取り入れたのも、人間側が「合理性」を受け入れたことを表現していて、第三の道(契約者と人が共存していく道)をポジティブに描いたのが、アニメ(そろそろ第一期と呼んでもいいのかも)だったわけです。

 それがこの漫画、漆黒の花では揺らいできた

 石戸を殺した間崎は間違いなく契約者なのに、合理的に行動してない。「合理性」を失った契約者の出現、そして、そこに見えるBK201の影。未咲さんが再び彼を追う物語が、ここに始動しました。やっぱり、彼女は黒<ヘイ>を追っているのが良いですね。たとえ捕まえられなかったとしても、彼を追っているのが未咲さんっぽいですよ。



 黒<ヘイ>が追う男の、「人はなぜ…… 合理的になりきれないのだろう」という台詞が良い。アニメ本編が中庸的な選択とはいえ、「人間性」に重きを置いたストーリー展開だったので、今回の「合理性」に重きを置いていく流れはすごく興味深い。「人間性」も「合理性」も描いた上で、人という存在を浮き彫りしていく感じなのかなぁ、と俄然期待に胸がふくらみます。

 それを、黒<ヘイ>に問うのも良いですよね。仮面が割れ、人間の目と契約者の目で世界を見る――おそらくは人にもっとも近い――中間者としてのシンの兄に問うている。




■第02話「少女」

 さっさと解答編へ。
 この辺りが実にダーカーらしいところ。大きな謎が物語の軸にあるのではなく、小さな小さな人の感情が物語の軸になっている。今回もそんな感じですね。

 霧原未咲さんが仮説を立てたように、間崎が石戸を殺す直前に契約者へと変貌した。そして、それを促したのが月森梓の前に現れた、頭に杭を差した男(以下「杭の男」で)ということで良いのかな。

 ここで疑問に思えてくるのは、なぜ杭の男は間崎を殺したのか、ということ。

 これは、前回この男が「人はなぜ…… 合理的になりきれないのだろう」と言っているのが、ヒントだろうな、と思うわけです。

 間崎がなぜ契約者になりたかったのかと言えば、おそらくは罪の意識を感じずに石戸を殺すため。石戸を能力で殺している以上、彼は契約者になり、合理的に殺した。だけど、それは長くは続かなかったというのが、上の台詞からわかります。

 現場に残された花との関連はまだよくわからないけれど、間崎は合理的であり続けることができなかった。罪の意識から逃れることができなかった。ゆえに、杭の男は彼を殺したのだろうな、と。彼が欲しているのは、極めて合理的な存在だから。



 そして、その存在として、次のターゲットとして選ばれたのが梓ちゃんで。この子を黒<ヘイ>が――そして、彼女を追う未咲さんが――救えるのかどうかというのが、本作のキモでしょうか。何気に、銀<イン>が活躍してくれるんじゃないかなぁ、って期待してますよ。彼女は感情を完全に失うドールとなっても、それでも自分の「心」を求め、動かした子なので。

 誰よりも、銀<イン>は心を失う切なさをわかっているだろうと。




■第03話「黒い花」

「キサマはオレの…オレたちの守ろうとしたもの…壊す!!」(BK201)

 これまで生命の進化は合理的な淘汰とサイクルによって生み出されてきたから、合理的な思考をする契約者へと「進化」するのはむしろ自然だという、ハーヴェスト(杭の男)に対して、真っ向から「否!」と突きつける黒<ヘイ>が爽快です。「中間者」格好イイな。

 アンバーの誘いを蹴ってまでも守った、人類と契約者が共存するという道をあくまでも守ろうとするわけですね。「オレ」から「オレたち」と言い直した辺りがまたイイ。

 その「共存」を望んでいるのは、黒<ヘイ>だけではない。

 散っていった黄<ホァン>や猫<マオ>も、そして、梓さんを必死に追う未咲さんも同じ。第一期では同じ理想を抱きつつも、共闘できなかった二人なので、第二期では是非とも二人が同じ方向を向くところが見たいですね。未咲さんは未咲さんで、警察上層部と戦うらしいんで、いかにも……って感じです。




■第04話「捜査」&第05話「パンドラ」

 第一期ラストで黒<ヘイ>が人類と契約者の共存を願ったがゆえに現れた、黒い花の契約者ハーヴェスト。人と契約者がわかりあう世界を目指す黒<ヘイ>にとっては、ヤツを倒さない限り、その理想をかなえることはできない。まして黒<ヘイ>の選択によってハーヴェストが現れたのならなおさらだと。黒<ヘイ>が好きすぎて(笑)、夢の中までも追っかけてきたアンバーは指摘します。これはアナタの責任だよ、と。

 ある意味黒<ヘイ>の「エゴ」がそうした選択を選んだわけなので、この展開至極当然な感じです。ですが、ただ一人で戦っているわけではないというところが救いで。その理想を同じように目指しているというよりは、ただ黒<ヘイ>と一緒にいる――一緒にいたい――という感じの銀<イン>の存在感が俄然増してきました。

 今回ちらっと登場しましたが、猫<マオ>や黄<ホァン>がいなくなってしまった結果として、ぐぐっと彼女に焦点が当たってきた感じがします。ダーカーのマスコットキャラといえば、俄然猫<マオ>押しだった僕も、ここ数話は完全に銀<イン>寄りになってしまった(笑)。
 てか、もうはちゃめちゃに可愛くなってるな。添い寝とかお腹をぐーっと鳴らしちゃうところとか可愛すぎる。黒<ヘイ>との絡みっぷりがそこはかとなく熟年夫婦っぽいのも、ステキです。黒銀いいな。



 一方、黒<ヘイ>から遠ざかりつつある未咲さんですが、理想の求道という意味では未咲さんの方が黒<ヘイ>のパートナーっぽい感じは出てますよね。今回謎の契約者に飲み込まれたことで、黒<ヘイ>との再会がありそうなので、そこに期待したいところ。

 後々警察上層部と戦うことになるとするなら、どうしても別の組織とのパイプが必要となってくると思うんですが、どうなるんだろうなー。PANDORA(パンドラ)内部でも相当な規模のスパイが暗躍してそうなので、その辺りからだろうか。シュレイダー博士はともかく、ミーナ・カンダスワミまで再登場してきたので、その辺りの陣営シャッフルも見たいなぁ。




■第06話「親友」

 悲劇の前章、幕間という感じの今回ですが、響子も先生と関係してたっぽい事実が判明し、守るべき日常を微塵も感じさせない。梓を裏切るなんて、とか響子は言ってますが、もうだいぶ裏切っている感じが痛々しい。

 黒い花による疑似契約者化の対価は、先の事件からも予測できたとおりに、最も大切な者との絆を断ち切ること。響子からしてみたら先生と関係していることですでに梓との絆が切れ、その事実を知らない梓は梓で契約者となるべく彼女を切ろうとしている。

 それにも関わらず、それまでの関係を続けているような、二人の思い出の場所を待ち合わせの場所にする辺りが、どこまでもハリボテの日常を感じさせます。

 事実上、崩壊している絆が心底痛々しいですが、正直黒<ヘイ>側の方が心配で仕方がない。衣服も満足にないのかおそろいのワイシャツ姿の二人が何とも微笑ましいですが、いいのか放っておいて。

 前回の、夢は消え残るのは黒<ヘイ>一人という台詞、第二期キャスト欄にいない銀<イン>、そして、番宣CMで髪をぼさばさに伸ばした黒<ヘイ>と、こう何かを彷彿させずにはいられない。

「オレたちの守ろうとしたもの」と称したように、人間と契約者の共存という夢は黒<ヘイ>だけのものではないはずで。ゆえに、その意味するところが少し恐ろしくなった今回のエピソードでした。




■第07話「塔の上」

 進化とはそもそも合理的なものだから、合理的な契約者は人類の進化の形である。ゆえに、その契約者を超えることこそが進化なのだと、ハーヴェストは語る。その手段となっているのが、黒い花による寄生。

 けれど、皮肉にもそれがまた非合理な結果を生んだのが今回のエピソード。上手いなぁ。響子もハーヴェストの洗礼を受けていて、梓が響子を殺そうとしたのと同じように、響子もまた梓を殺そうとしていた(契約者になりたい理由も同じ)。これはびっくりの種明かしで、騙された。

 これはすごい。

 契約者は他者のために何かをすることがない、みたいなことをハーヴェストは以前に言ってましたが、真逆の展開へと繋がっていった。自身のことだけを考えて、お互いを殺そうとした二人だけれど、同じ境遇を味わっていたことはお互いにわかっていて、それがゆえにお互いを殺さない結末へと至った。梓は殺し合いをやめようとして、響子はまた彼女を助けようと自分を犠牲にした。

 自分のことしか考えないのを合理的とは思わないけれど、それがそうだというなら、真逆の展開ですよ。他者を助けるために自己犠牲。自分がどうなっても、自分の大切な人を守りたいなんて、あまりにも非合理。美しい。

 だけど、これはこれで合理的なんだよなぁきっと(梓から見ると)。自分とは縁のゆかりもない人ならまだしも、自分にとって大切な人なら自分の一部だ。だからこそ、それを断ち切ることで(対価を払うことで)進化できると、そういうことなんでしょう。

 これで最初のもくろみとは大きく異なってしまいましたが、間違いなく梓の悪意は黒<ヘイ>(あるいはハーヴェストにも)へ向かっていくと。彼らを恨むことに何の抑制も必要ないですからね。実に合理的に憎むことができる。私の一部を奪ったのだから。疑似契約者へと覚醒してしまう。



 東京エクスプロージョンの際に自分がいつまでも追われることを了承した上で、自分の知らない人までも守ろうとしたのが黒<ヘイ>でした。それが可能だったのはまだ銀<イン>との絆が残っていたからですが(第一期自体が黒<ヘイ>と銀<イン>の絆構築物語でもあった)、果たしてそれが失われても同じことができるのか。

 梓は黒<ヘイ>のifでもあるのかな。黒<ヘイ>自身二期開始時には同じような立ち位置っぽいですが。感情がない、合理的とは言っても、どこか人間味を残していた契約者がほとんどだった第一期に対して、第二期には割と人間味をなくした契約者もでてくるのかな。同じ道を辿りそうになる黒<ヘイ>だけどすんでの所で人の心を残した上で、合理的な契約者らしい契約者(契約者を超えたもの)と対峙するみたいな展開だと結構熱いものがあるな。




■第08話「覚醒」

 見開き一ページ使って描かれる、覚醒後の梓にすげー引き込まれる。見惚れてしまった。つい先日までただの中学生だったのに、なぜこうも色気を感じるのだろう。首元から華が咲いてるだけなのに。これはやばい。ぜひ一読していただきたいところです。これはやばいよ。

 覚醒後の梓は黒<ヘイ>もいうとおり契約者ではないな。感情が「殺意」に特化している人間兵器。肝心の梓は黒い花がつくる「理想郷」に囚われ、響子と百合百合しい感じになってるし。逆に言えば、ちゃんと響子を大切に思う梓(の精神)は生きているので、大逆転はあるかも。



 一方、未咲の方ではちょっと面白い展開が。第二期情報に、四課から離れて行動しているとありましたが、パンドラと協力体制に。大塚さんと共に、セルゲイさんとニーナさんに手を貸して、梓を包囲しようとしてます。黒<ヘイ>は黒<ヘイ>であのブラックホール少年を捕らえているんで、未咲さんとの共闘もあるいは……というところで今週は引き。

 予定調和として何かしらの悲劇は約束されていますが、ひとまず燃えずにはいられない展開です。表だって共闘しているんじゃなくて、人知れず協力しているとなお好い。未咲さんと黒<ヘイ>はそういう関係。

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