「どんな手を使っても 辻褄を合わせてやる」(不破真広)

『スパイラル』の城平京さんの新連載。今度は魔法使いものに挑戦?


 大きく二つの筋があって、一つは真広の家族を襲った殺人事件と「この世の関節を外そうとする」魔法使い鎖部一族のお話。この二つの軸にいったい主人公の滝川吉野はどう関わっていくのかというのが、序盤の見所なんでしょうか。

 一般的に、殺人事件が合理で、魔法が不合理っぽいですが、真広曰くこの場合どちらも不合理。ゆえにそれらを相殺することで自分の妹愛花を殺した犯人を見つけ出し、そいつを殺すというのが彼のストーリー。そのために、一族に見捨てられた鎖部葉風に手を貸している、と。

 これ、結構どちらかが不合理かとか考えてみると面白いですね。一般的にいえば先述したような結果になるんですが、本作の場合実は真広一家殺人事件の方が不合理で、魔法の方が合理に見えたりする(真広とはまた見解が違いますが)。事件から一年経っても動機のかけらも見えないというのはどう考えても不合理ですし、一方で今作における魔法は「供物」(マジックアイテムみたいなもの?)を必要とする合理がある。道具を使う辺り科学っぽさがありますね。

 合理不合理でいえば、「ボランティア」で黒鉄病を追うエヴァンジェリン山本もだいぶわけがわかりませんし、主人公の滝川吉野も物語の本筋から逸脱しているように思えますね。

 まあ合理不合理なんて、認識によって大きく変わってしまうものですが。それこそ世の中の関節が外れてしまったら、その判定にも大きく変化がでてきますよね。

 こういうミクロな登場人物たちとマクロな世界がカチッと填るパズル系の作品だったらだいぶ面白そうな気がしてます。『スパイラル 推理の絆』『スパイラル・アライヴ』『ヴァンパイア十字界』で見事な解決劇を魅せてきた城平京さんなので、もうかなり期待しちゃってますが。これは毎号楽しみすぎるな!

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