「アキユキがナキアミに教えてあげたんだって」(ユンボ)

『亡念のザムド』第五話「調停する者 しない者」のネタバレ感想です。戦いを本当の意味で調停するのは垣巣凍二郎(=当事者)ではなく、アクシバやアキユキといった「手紙」を届ける者(=第三者)だと明示された回ですよね。


「そっか、ナキアミ、字が書けなかったな」(紅皮伊舟)

「母と子」「帰るところ」なんかのキーワードで語られてきた伊舟、ナキアミのすれ違いが解消された、今回のエピソード。その解決法はずばり、

 自分の思いを相手に伝える

 という実にシンプルなこと。で、その方法が「手紙」。PS3配信版のオープニングでも、ハルからの手紙がアキユキに届くシーンが描かれていますので、「手紙」が重要になっていくんだろうなぁ、とは思っていましたが、なるほどなぁ。

 ガンダムダブルオーなんかでは、紛争を停止させる術として「対話」があげられていましたが、ここでは「手紙」。いったい何が違うのかというと、「対話」というのが基本的に二人で行われるものだとしたら、「手紙」は三人で行うものですよね。

対話:想いを伝えるわたし−想いを聞くあなた
手紙:想いを書くわたし−想いを届ける彼(あるいは彼女)−想いを受け取るあなた

 つまり、「対話」はわたしとあなたという当事者同士で行うけれど、「手紙」は当事者以外に手紙を届ける第三者がいる。

 この第三者にスポットを当てているのが、『亡念のザムド』という作品なんでしょう。今回なら、ハルや伊舟に思いを届けたいという気持ちを汲みしたアクシバやアキユキですね。設楽さんが変異したヒトガタを殺すことで、戦いを止めた垣巣中佐ではなかった。彼は「永久なる戦犯」としての加害者(=当事者)に今はまだ囚われていますからね。

 実際設楽さんを救えなかったせいで、次回ハルは軍人への道を進むことになるので、垣巣中佐は戦いを止めることができなかった(戦いをまた生み出してしまった)。



 こんなことを書いていると当事者が悪いんだな、と思われるかもしれませんが、それもまた違うんだろうな、と。

 アクシバがめちゃくちゃ旨いという河山羊の乳を我慢して走れたのはなぜかというと、それは思いを伝えたい人(=当事者)の気持ちを分かっているからに他ならないですよね。アキユキがハルに伝えたい気持ちがあるように、アクシバにもまたナキアミに伝えたい「想い」がある

 だからこそ、彼らは思いを届ける、届け続ける。
 その思いの尊さを分かっているから。

 だけど、まだ彼らは「手紙」に秘められた三つの役割の内、二つしかこなせていないので、最後の手紙を受け取ってからの行動に俄然期待です。アキユキは両親の喧嘩の仲裁者になるんだろうけど、アクシバはどうなるんでしょうな。登場人物の中では二番目に好きなキャラクターなので、動向が気になるところ。



「だが、忘れるな。ナキアミはいつかおまえの元を離れる」(ゼーゲンドォ)

 子であるならば、いつか親の元を去っていくことになる。一足先にゼーゲンドォからナキアミが離れていっているので(笑)、この台詞だいぶ深みを感じるな。



「帰りたいよ、みんなの所に帰りたいよぉ」(設楽)

 場所は遠く離れていたけれど、ナキアミのifとして機能していた印象のある、設楽さん。ナキアミが伊舟の元へちゃんと帰るためにアキユキ(第三者)の手を取ったのに対して、設楽さんは決してハルの手を取ろうとしなかった。

「帰る場所がない……、その寂しさよく分かるよ」(汗馬礼蔵)

 といっている博士も設楽さんと同じなんですが、帰るところは自分で掴むもんだ。テシクに帰るのが筋だと言われたナキアミが、ザンバニ号を、てか、伊舟さんを選んだように。誰かが与えてくれるものじゃない。

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EXPOSED
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