「その名で呼ばれたことを忘れたくないのです」(ソーマ・ピーリス)

 第六話「傷痕」の感想です。アンドレイの「乙女だ」という台詞に思わず笑ってしまったけれど、これは上手いわ。真っ先にセルゲイさんが同じ台詞を言った前期第五話を思い出した。本作の解みたいなお話ですが、あのときセルゲイさんは超兵としてのソーマの能力を認めつつも、それでも彼女は女の子だ(=「乙女だ」)と言ったんだよな。そうですよ、超兵であっても乙女で良いんだよ。幸せを求めて何が悪い!


「君も来い。ここにいたら、何をされるかわからないからな」(ティエリア・アーデ)
「私は死んでも良かった! アザディスタンの為ならっ! 私は……っ!!」(マリナ・イスマイール)


 対照的な二人。

 ティエリア良い感じだなぁ。かなり深読みしている気はするんですが、彼は死を罰として受け入れることを是としていないような気がする。生きている限り、どんなに罪を犯しても、生き続ける、罰を受けても救いを求めていく、そういうスタンスを肯定しているような気がする。沙慈を放っておかない彼にすごく好感が持てたよ。ティエリア、イイ。

 それと対照的なのが、マリナさん。
 生きている限り、何かできるかもしれないのに、それを放り投げて死んでもいい、と宣うのは、ダブルオー的に考えて「ダメ」ですね。良い感じでヒロイン化してきたのに、ここに来てダメヒロイン化。ああもう、ダメすぎる(笑)。本当に、この人は愛おしいなっ! もう!! 頑張れ。



「あれが……、あれこそが本当の戦場」(ソーマ・ピーリス)

「実感」する、本当の戦場。
 前期はソレスタルビーイング対策部隊に所属し、今期はアロウズに参加するまで隠居していたので、今でも実はソーマは人を殺したことがないんじゃないの(=死の実感を持っていない)、とか思っているんですが、はてさて。

 彼女にとっての「罪」が他の人とは違うのは、行いによって為されたものではなく、彼女の存在そのものに根ざしている点ですねぇ。それが災いして、

「ありがとうございます、大佐。大佐のおかげで私は、自分が超人特務機関の超兵一号であることを再認識しました。私は兵器です。人を殺すための道具です。幸せを手に入れようなどっ!!」(ソーマ・ピーリス)

 という結論に至ってしまう。ですが、他者から与えられた「役割」から脱却する――今回のエピソードを汲みしていうなら、抗えぬはずの運命に抗う――ことを是としているのが、ダブルオーだと思うので、彼女自身の顛末にはあまり不安はありません。怖いのは大佐。本当に次回怖いんですけれど(パイロットスーツを着ているのは、ピーリス捜索のためだと踏んだ)。



「私は超兵。どんな任務でも忠実に実行する。そのために生み出された存在」(ソーマ・ピーリス)

 それでも揺れる。

 揺れているからこそ、自分に言い聞かせるように、何度も口にする。この抜けがたい迷宮を打破するには、あれだな、もう「恋」しかないな。「超兵」という生き方を忘れるぐらいに、恋い焦がれて、「乙女」になってしまえ。そうだよ、夫婦別姓でも良いんだろうし、これなら「ピーリス」という名も残るよ。

 そういう意味で、「恋する乙女」改め「復讐者」と化しているルイス・ハレヴィとの邂逅は良かった。二人でちょこんと作戦を聞いているシーンも微笑ましい。二人とも乙女に戻れると良いなぁ。



 あえて、今回の沙慈はスルーする方向で。

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