「アルトくん、君、夢はあるかい?」(リチャード・ビルラー)
ビルラー氏の夢VSグレイス達の夢という体裁になってきた、第16話「ランカ・アタック」の感想です。「アイモ」が戦闘中に流れると、どうしても戦闘に乗れませんね。十四話でもそうだったけど。
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「僕はね、断層で隔てられた銀河を一つにしたいんだよ、十万光年もの星々を繋ぎ、より早くより近く、あまねく銀河を、我らの世界を。それが僕の夢さ。びっくりしてる、びっくりしてるね。デカルチャーって、顔してるよ。でもね、可能なんだよ、僕らプロトカルチャーの子供達にもたらされたクイーン、バジュラのおかげでね」(リチャード・ビルラー)
フォールド断層で隔てられた銀河を解放しようというビルラー氏の夢に対して、前回グレイスが語った夢とは一体どういうものなのか。そういう焦点で物語が進んでいっている感じ。
マクロスFが初マクロスな僕からすると、プロトカルチャーが何を出来なかったのかよくわからないんだけど、グレイス達の目的は、やっぱり前回の感想でも書いたような、銀河を一つにすることだと感じますね。
でも、ビルラー氏の夢とは違って、銀河とはいっても、物質的な意味じゃなくて、精神的に、ヒトの意志を統合しようとしている、という印象ですね。ガリア4での一件で、人々の意志をバジュラ殲滅に持って行こうとしたみたいな。
まあ、バジュラ殲滅が目的に即したものかはちょっと疑問の余地があるけれど。というのも、前回S.M.S.の軍事力を見誤っていたと反省していたわけですが、そうなるとグレイスはフロンティアがバジュラに負けることを予測していたことになり、殲滅とは真逆ですよね。
とはいえ、これは劣勢であるからこそ、ランカの代わりを成す予定だったフェアリーナインことシェリル・ノームのカードが切れたっていうのは、可能性としてアリっちゃアリのような気もする。本来の計画だと、バジュラを鎮めるのはシェリルの役割だった可能性はあるか。
可能性の話は置いといて、実際には、リトルクイーンことランカ・リーを確保したことによって、シェリルは用済みに。で、その彼女がやっていることは、バジュラの被害を受けた人々を訪問することとバジュラの気を静めることなので、バジュラ殲滅へ一直線。
となると、やっぱりグレイス達はバジュラをこの世界から消したいのかな。何かしら銀河を一つにしたくない理由でもあるんだろうか。
対して、ビルラー氏の夢はヒトを一つにすることではないんじゃないかと。銀河を解放することで、これまでフォールド断層で隔てられていたせいで出会うことが出来なかった種族と出会うことになるかもしれない。もしかしたら、その種族とはそりが合わなくて、戦うことになってしまうかもしれない。
それでも閉じ込められた世界で生きるよりは……、という感じかな。まあ、率直にそうせずにはいられないだけど、その原動力は、やっぱ「本能」ってことかも。「本能」というか、感情をそのまま出すっていうのが一つポイントなんだろうな、と最近感じてますよ。
アルトはビルラー氏の語りに思うところがあるようでしたが、いやいや!そこじゃないだろ!と突っ込みたくなった。夢なら夢らしく、ビルラー氏みたいにもっと楽しそうに語れよ、と、アルトくんに言いたい今日この頃です。
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「おまえの歌を宇宙を感じさせる。それも突き放す宇宙じゃない。包むような、銀河の渦がそのまま形になった……」(ブレラ・スターン)
恋は人を詩人にする、でしょうか(笑)。
と、まあ、冗談はさておき、戦闘中にアイモが流れるとしっくり来ないような、萎える気がしていたんですが、その理由が自分の中で腑に落ちました。
ようは、ランカの「アイモ」っていう歌には、作中「否」の側面があるんですよね。今回彼女は、彼女自身の意志を奪われ(閉じ込められ)、リトルクイーンの役割を演じることになってしまったけれど、彼女もまたバジュラの意志を奪ってしまっている、閉じ込めてしまっているんですよね。
本当は彼らの意志を解放してあげなくちゃいけない。
コミュニケーションする手段が現状はないとしても、彼らが何かしらの目的で行動しているのは確かなので(個人的に「母親の奪還」だと思ってますけど)、それを解放してあげなくちゃいけない。
(バジュラの)感情の解放。
それが本当のランカの役割じゃないかなぁ、と妄想してみたりとか(ガリア4で鼻血を出させた時みたいな感じで(笑))。
そういう意味では、最後のシェリルの表情は悔しがっているんじゃなくて、怒っているんじゃないかなぁ、と思います。歌は感情を閉じ込めるものじゃない、押し出すもの、押し出るものでしょ!みたいな感じで。何気に、シェリルの曲はそういう感情を押し出した、情熱的な曲が多いような気がするんですが。
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