「過去なんかに縛られるのは時間の無駄さ」(早乙女アルト)


 第13話「メモリー・オブ・グローバル」の感想です。ヒロインが閉じ込められる、マクロスFらしい展開。


「思い出さなくていいことだから、忘れてるんだろ?」
「ああ、過去なんかに縛られるのは時間の無駄さ」(早乙女アルト)


 おまえがそれを言うか、ってかんじの励まし方に思わず笑った(笑)。アルトらしい励まし方だとは思いますが、これはただ思い出したくない記憶を閉じ込めているだけで、本作の傾向からいえば、はっきりとしたネガティブ記号。事実、彼女が忘れているから、第117調査船団に何が起こったのか、バジュラの存在の意味なんかはわからないわけですし。

 やはり、過去とは向き合わなければならない。

 これはもちろんアルトにも言えることで、過去(=役者の血)とはいずれ向き合わなければいけないように、なるんでしょうね。



 いろんな意味で、ランカが一つの惑星のみならず、銀河全体を巻き込んだ、人類の危機を呼び起こしつつある今日この頃ですが、そのせいで(前回テムジンが言ったように)一つに成りきれない銀河を一つにまとめるのも彼女の役割だったりするんだろうなぁ、と思います。

 というのは、前回の台詞「みんな、抱きしめてっ! 銀河の、果てまでっ!」が、それを連想するからってだけの理由なんですけどね(苦笑)。逆に、シェリルの「私の歌を聴けー!」という台詞は、もちろん他の人も仰っているように過去作品のオマージュっていうこともあるんでしょうが、第六話で語られたような誰にも相手にされなかったギャラクシーでの出来事を超えて、私の方を見てほしいという切実な願いを投げかけているように思える。

 その点でいうなら、多分アルトも同じなんですね。彼の場合、誰にも相手にされなかったということはないんでしょうが、少なくともお父さんからは「役者」としてしか見てもらえなかった。だから、彼は今駄々をこねている。本当の僕を見てよ、的な意味で。

 そういう類似性なんかもあるんで、やっぱり僕は、作品のヒロインはランカ、アルトのヒロインはシェリルみたいな印象を受けますね。奇しくも、ブレラが代弁してくれてますが。「貴様は、あの娘に相応しくない」と。



 ここまで話をすると、なんとなく「過去」に向かって物語が進んでいるような感じを受けるなぁ。一体誰が未来に向かう物語として書き直すのか楽しみだったりします。

 過去といえば、ランカのお母さん、出てきましたねー。良かった、これはシェリルじゃない(笑)。シェリルではないけれど……、そういえば、シェリルの両親ってまだ出てきていないんで、あるいは二人は姉妹っていうことがあったりして(笑)。うーん、しかし、これじゃあ、『マクロスゼロ』そのままか。



 今回はこんなものですかね。ラストのディメンション・イーターが発する閉塞空間から、逃げ延びるアルトやミシェルたちに燃え、ランカが閉じ込められるところにもまたマクロスFらしさを感じたエピソードでした。次回は、ストレートに閉塞空間にいるランカを引っ張り出す話になるんでしょうね。

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