「――でも 次は絶対に負けない」(二海堂晴信)

 羽海野チカさんの『3月のライオン』第一巻の感想です。あらすじがえらくサスペンス調だったので、どうしようかと思いましたが、読んでみると普通に羽海野さんのお話でした。良かったです。



 将棋のプロ、棋士って、孤独じゃないですか。
 一対一の真剣勝負。頼れるものは、“自分”しかない。孤独の戦い。だから、「自分には何もない」――ゼロ――だと言われた桐山零は、せめて一であろうと、孤独であろうとして、棋士になったのかなぁ、なんて思いました。孤独なら、一なら、何もないわけじゃない、と。

 だけど、多分棋士の戦いっていうのは、本当は孤独の戦いなんかじゃない(少なくとも、この作品では)。それは、零の先輩がコンビで出てきたりとか、二海堂くんには「じいや」がいる辺りからも想像できて、一人で戦っている(棋譜の研究も一人でした方がはかどると言っている)零くんにはいずれ限界がやってきて、勝てなくなるんだろうなぁ、と。そのときに先輩や二海堂くんみたいな、一人で戦っているわけじゃない人に敗れるんじゃないかなぁ。

 そこに、あかりさん、ひなたちゃん、モモちゃんらの応援が効いてくるんじゃないですかね(=零くんも、一人で戦っているわけじゃない)。まあ、多分零くんが勝てなくなるのも、彼女ら三姉妹のせいなんでしょうが。孤独になって、だから、将棋の戦いに勝てる、強い零くんが、孤独であることに耐えられなくなっていく。そのときに、孤独であることで保っていた零くんの強さが剥がれ落ちていく。だから、今度は、(二海堂くんみたいな)別の強さで勝たなきゃね、みたいな。



 要するに、このお話は、将棋という競技に埋没することで強くなった零くんが、三姉妹とのふれあいを通じて、別の強さを獲得していく、将棋の外に目を向けていくお話なのかなぁ、と思うわけでした。しかし、あかりさんがホステスをやっていて、びびりました。これが本作でいちばんのサプライズ(笑)。

→単行本

3月のライオン 1 (1) (ジェッツコミックス)