「どっちか一方が無理なら、両方取れ」
「契約者らしく、そして、人間らしく……」(黄<ホァン>&猫<マオ>)


 第20話以降、ダーカーでは「人間性」だけではなく「合理性」もまた人間には重要なファクターなんだ、と訴え続けたつもりですが、最終話はまさにそれらが包括された内容のように思いました。上記の黄<ホァン>と猫<マオ>の台詞とか、もう……ね、グッと来たよ。


■黒<ヘイ>と呼ばれた男が選択した第三の道

 彼が選んだのは、契約者側の選択肢(人類消失)でもなく、人間側の選択肢(契約者消滅)でもない。それはまた、「合理性」に特化した黒<ヘイ>の選択でもなければ、「人間性」に特化した李舜生の選択でもないんですね。

 言ってみれば、それらの中間――合理性と人間性が入り交じった第三の道(人間と契約者の共存)。そして、それを選んだのは、妹のために暗殺者になるという道――それは人間的でもあり、合理的でもある選択というニュアンスで描かれていると思う――を選んだ哀しい男。

 李舜生という「人間性」に富んだ男の仮面と黒<ヘイ>という「合理性」に富んだ男の仮面を被り続け、本当の自分をひたすら隠し続けていた男が、

「お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ。だから、もう無理しないで」(白<パイ>)
「どっちか一方が無理なら、両方取れ」(黄<ホァン>)
「契約者らしく、そして、人間らしく……」(猫<マオ>)


 と、死んでいった人達から、本当の自分(彼の本名がわからないので、「シンの兄」と表記する)としての選択を促され、ようやく決意を決めた第三の道。それは「人間性」を捨てるわけでも、「合理性」を捨てるわけでもない、適度に合理的で適度に人間的な「シンの兄」の選択。

 ゆえに、「待って、李くん!」という未咲さんの呼びかけに対して、彼は

「李という男はもういない」

 と答えるわけです。
 そこにいるのは、李舜生でもなければ、黒<ヘイ>でもないから。未咲がいずれまた出会うことになるのは、人間と契約者の共存を願った「シンの兄」。

■霧原未咲が選択した第三の道

「契約者といえど人間です」の精神の則り、「契約者と人間が共に生きること」を選択した未咲さん。「近い将来私たちにも選択の時が来る」と予言するその時までに、いかに契約者と人間が共存できる社会を構築するかが彼女の課題かなぁ。

 増加する契約者犯罪に、黒<ヘイ>のワイヤーを取り入れること(契約者の流れを汲むこと)で対抗するのが良かったですね。これまで公安側に契約者はいませんでしたが、いずれ契約者が配属されることも想像に難くない。

■銀<イン>の決着

 第14話で、黒<ヘイ>の「仲間」発言によって(チームのみんなといたいから)、チームへの残留を選択した銀<イン>だけに、あの「私を一人にしないでっ!」は効きました。猫<マオ>や黄<ホァン>を舞台から退場させたのも、この辺りを表現したいがため、っぽいなぁ。しみじみ。

 ラストの観測霊は、視聴者に委ねられたシーンだと思います。

■アンバーは救われたのか

 これだけは唯一不満かな。確かに黒<ヘイ>とキスすることはできましたが、アンバーの祈願は「黒<ヘイ>のぬけるような笑顔」だったはず。最後の能力をあのタイミングで使うだろうなぁ、と予測はできていましたし、彼女の結末も納得いくものでしたが、やはり黒<ヘイ>の笑顔を見て満足したから最後の能力が使える……みたいな流れを期待していただけに、そこは残念。



 とまあ、主要人物についてはがっちり各々の帰結を描いたわけですが、世界的な視野で見ると、それまでとほとんど変わらないまま(契約者の存在が明るみに出たぐらいで)、これからも世界は続いていく……そんなラストです。「適度に余所余所しくて、適度に暖かい」という李くんの言葉を思い出し、そして、久良沢凱の「すべて世は事も無し」という言葉を思い出した次第。

『Darker Than Black−黒の契約者−』という作品は、社会というか、世界というか、その大きな流れの内の「ほんの小さな変化」、気づかないぐらい「些細な振動」を描いた作品だったなぁ、という想いが強いですね。アンバーはその変化が何をきっかけにしたものかわからないと言っていましたが、その変化をもたらしたのは間違いなく“あの男”。そして、ラストできっかけになった“あの男”が選択して、物語を終わらせるという結末が、本当に美しくて良かったです(欲を言えば、上でも書いたようにもう少しアンバーに気を遣って欲しかったなぁ、と思いますが)。
 初めて最初から最後まで感想を書いた作品がこれで良かった。大満足。あとは星見様の言う「だーれも見たことがない未来」に想いを馳せるのみ。



 良くできた作品だっただけに、最後はあまり書くことがありませんでしたが、とりあえず『Darker Than Black−黒の契約者−』の感想はここまで(DVD収録の番外編は書きます)。

 半年間ご愛読して頂き、ありがとうございました。

 第一話の感想とか今見ると、顔から火がでるほど恥ずかしい出来だと思うんですが、どうでしょう? この半年間で少しは成長した姿を見せられ、感想を楽しんで読んでいただけるようになったでしょうか。それなら本望ですが、はてさて。

 それでは皆さん、名残惜しいですが、これぐらいにして(とか言いながら、普通にまた追記しそうですが(笑))。またいつか。Blu-ray DiscでBOXが出た時にでも(笑)。あるいは、第二期が始まった時にでも、また会いましょう。では〜。

 ※追伸
 これからも本作を楽しむため、考察ページを作りましたので、どうぞご利用ください。今はまだ少ないですが、数は追々増やしていきます。

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