「結果がわかっていても、戦わずにはいられなかった……。お前のせいだ……お前に会ったおかげで」(魏<ウェイ>)

 すべては魏<ウェイ>のこの台詞に終始しているんじゃないか、そう思いました。良くも悪くも、黒<ヘイ>と関わったことによって、みんな変わってしまった、と(銀<イン>や黄<ホァン>、猫<マオ>、ノーベンバー11、アンバーetc)。
 では、黒<ヘイ>、お前はどうなんだ、と。そんな風に黒<ヘイ>に選択を迫る形でラストを締めるのかなぁ、と“想像”してみたり。


 タイトルが示すように、契約者を指す偽りの星が「流星群」のように流れた第二十四話「流星雨」。このエピソードを見てしまうと、子供に「人間はね、死んだら“お星さま”になるんだよ」とは到底言えないような気がしてきた(切なすぎて)。

 今回は珍しくキャラクターに絞って、感想を書いてみよう。

■踏むだけ踏んで逝きやがったぜ、あの野郎はよぉ

 前回のラスト「乗れよ。送ってってやるぜ。行けるところまでな」から始まり、冒頭から「この戦争が終わったら、俺は……」的な、所謂死亡フラグを踏み続ける黄<ホァン>。この辺りで、既にじんわり……。

 いつもの態度を崩さない猫<マオ>。
 煙草はやめろと忠告する黒<ヘイ>。
 黄<ホァン>をハグする銀<イン>。
 年甲斐もなく照れる黄<ホァン>。
 そして、辛そうにぎゅっと肩を掴む銀<イン>(←この辺りで決壊)。

 囮として逃げる以上、再び会える可能性は万に一つもない。

 やっとチームらしくなれた、家族らしくなれた、その矢先に、これか!と思ってしまうほど、切ない。また、ちゃんと空気を読んで、チームの別れの儀式を黙って待ってくれる辺り、魏<ウェイ>もかなり良い奴だよなぁ。

 この辺りのシーンで、冒頭にもかかわらず今回は満足しちゃった感があったんですが……

■3→2→1(→0?)

 菅正太郎さんがノーベンバー11やエイプリル、ジュライ、大西信介さんが久良沢凱やキコといった自身で登場させたキャラクターを自分の脚本の回で退場させたように、今回は魏<ウェイ>を登場させた砂山蔵澄さんが彼を退場させます。

 魏<ウェイ>もノーベンバー11と共に、黒<ヘイ>に影響を受けた男で、所謂ライバルキャラクターですよね。初めて登場した時なんか、なんでスピード勝負してるんだこいつら(苦笑)、なんて思いましたが、最期の最期まで立派な(?)ライバルでした。あの能力と対価が、まさか最期に自分ごと壁を吹っ飛ばすためのものだとは思わなかった。むちゃくちゃですが、すごい伏線です。

 魏<ウェイ>の運命に抗わない行動は猫<マオ>には「契約者には考えられない非合理的な行動だな」といわれましたが、ある種非常に「契約者らしい」行動なんじゃないかな、とも思ったり。契約者がさいごに優先するのは“自分”。ゆえに“他者(の思惑)”ではなく、“自分(の欲求)”を魏<ウェイ>は優先したに過ぎない……、とも取れます。この辺りも、ノーベンバー11と同じ部分だよなぁ。彼もまたアンバーの思惑に与するのではなく、自分の仲間を守るため(=自分の欲求のため)、死地に赴いたわけですから。
 まあ、しかし、そんな類似性はさておき、素直に“人間らしい”行動だったと捉えるべきトコロですよね。相変わらず砂山さんはストレートに表現するなぁ、と脚本の特徴を再確認。このストレートさが好きな人も多いんだろうなぁ、と思いますが、ホントのトコロどうなんでしょう(例えば、Sunithaさんとか)。

■餌はカリカリじゃない方で頼む

 最後の最後でようやく、組織に服従するのではなく、チーム――黒<ヘイ>たちのために組織に反逆した猫<マオ>。自分のサーバーが落とされるのを覚悟で手に入れた情報にしては、少々物足りないような気もしないでもないですが、黒<ヘイ>たちを選んでくれてありがとうって感じです。僕も猫<マオ>に似た猫がいたら、カリカリじゃない方の餌をあげることにします(笑)。



 とまあ、主要三人に絞って感想を書いたのですが、なんとなくみんな生きてるんじゃないかと思ったり。というのも、アンバーが幼くなりすぎですよね、あからさまに。雨霧とブリタを助けた一回だけで、あれだけ小さくなる対価なら、ホントに使えない能力だと思うんですよ。だから、複数回、黒<ヘイ>の仲間と自身の仲間を助けるために使ってるんじゃないかなぁ、と思ったり(あるいは、最期にそのために使う?)。
 まあ、どういう使い方にせよ、雨霧とアンバーのゆで卵談義辺りで、アンバーは自分の命を賭してでも何かしようとしているので、ラスト一回能力を使うと思います。あの時間操作って、ミステリーのギミックに使っても、面白いよなぁなんて思うんですが。一度東京は消滅させて視聴者をどっきりさせて、アンバーの能力で戻って……みたいな感じで。まあ、何にせよ、現段階での契約者の“生き死に”はその時「星が流れたか」を確認すれば良いと思います。

 ※追記
 アンバーの支払える対価は、おそらくあと一回なんでしょうね。雨霧を再び助けられない辺りで、そう想像してみたり。ラスト一回はもちろんヘイのために残している。東京を消滅させないという選択をしたとしても、黒<ヘイ>はアンバーの能力のために一度だけは妹に会うことができる。一度「東京エクスプロージョン」を引き起こして、白<パイ>と再会。そして、時間を戻して、サターンリングの破壊という流れ
 第十五話の感想で、「覆水盆に返らず」という諺を引き合いに出して、アンバーはこぼれた水を元に戻せる唯一の人と称していますが、この場合、こぼれた水が東京消滅だったというお話。もし本当にそういう流れだとしたら、時間操作というアンバーの能力と言い、あの「覆水盆に返らず」という諺と言い、これまた美しい伏線だっだなぁ、と思います。



■宝来善充の「大人になれ」という台詞は、「(契約者と人間の共存なんて)夢は捨てろ」というニュアンスですよね。

 ヘルズゲートでのアンバーたちの戦いと同じくして、進行しているのは霧原未咲さんの戦い。「正義とは何なのか」と苦悩する未咲さんだけど、「契約者といえど人間です」が作中唯一の正義。前回のエピソードでも、「だけど、今輝いている偽りの星が全部消えたとしたら、それはそれで哀しいような……」と(黒<ヘイ>やノーベンバー11と関わることによって)契約者の存在を肯定していた未咲さんなので、全然心配していません。むしろ、未咲さんの選択と黒<ヘイ>の「東京か?妹か?」という選択をシンクロさせるという“燃え”演出があるんじゃないかな、と期待(いや、カラーじゃないとは思うけれど)。次回予告で黒<ヘイ>が仮面を被っているシーンがありますが、あれはきっとサターンリングを破壊しに行くところ(と信じたい)。
 今回、南米消失時の「BK201」が黒<ヘイ>ではなく、別の“女性”だったいう情報が視聴者と共に、未咲さんに知らされたので、ようやく黒<ヘイ>=李くんというピースは揃った感じ(南米消失時の「BK201」が黒<ヘイ>ではないのは第17話で既出)。さあ、未咲さん、あと一話しかないぞ。がんばれ。



 ※再び追記
■雨霧のポケットに仕込まれた卵について

 アンバーの能力は、作中で明示されているのは「時間を止めて、戻す」ことだけ。あたかも未来を予知しているのかのように見えるのは(例えば、ノーベンバー11の死が予見できたのは)、ただそういう未来を見て、それよりも前の時間に戻っているから(このときアンバーは記憶が保持されるから、その先に何がを起こるのか知っている)。アンバーにできるのは、「時間を止め、戻す」ことだけ。そういう前提で話を進めますね。

 あの卵でアンバーは一体何を知らせたかったかというと、それはひとえに「私(アンバー)が来たよ」→「時間を戻した」という事実に他ならないと思います。雨霧視点であの部分を解説すると、ブリタと共に侵入→敵兵の服を奪う(このとき服にはまだ卵が入っていない)→サターンリングに向かって歩いている途中、突然ポケットに卵が現れる→卵が突然現れた理由を理解→「アンバーか」という流れ。

 で、卵が(自分の知らぬ間に)突然現れた理由として、雨霧が考え得る可能性は二通り。アンバーが時間を止めて、卵を雨霧のポケットに入れた。あるいは、アンバーが時間を戻して、卵をポケットに入れた。この二通り。雨霧たちが絶体絶命というピンチでポケットに卵が現れたのなら当然前者。でも、卵が現れたのはサターンリングに向かう途中(特に危険はない)。なら、当然考えられるのは後者。

 では、何故アンバーは時間を戻す必要があったのか。何故対価に制限がある能力を今発動する必要があったのか、雨霧はそう考える。

 それは当然自分(雨霧)が、(まだ見ぬ未来で)任務達成の前に死んでしまうからだと彼は理解できる。卵はそのためのもの。「時間を戻したよ」という事実を知らせ、あとは雨霧が勝手にアンバーの意図を理解した。だからこそ、雨霧はあのあと死ぬんだよ。だって、アンバーが伝えた「時間を戻した」という事実だけでは、舞の能力がわからないから。ちなみに、あのあと、もう一度時間を戻して、雨霧さんを救わないのは、上にも書いていますが、アンバーの対価が底を突いたから(この辺りからEPRの敗走が始まりますしね。それまでアンバーの能力をフル活用して、戦況を牛耳っていたのだと思われます)。とはいえ、あと一回残っていると信じていますが。使ったら、まあ赤ちゃんまで戻りそうだけど(さあ、この子誰が育てるんだ?)。



 他にも、もう一つわからない、という所がありましたら、コメント欄にでもお書きください。できる範囲で、解説しようと思います(一応、第一話からの熱心なファンですから、期待に応えられると思うのですが)。



 最終話タイトルの「死神の見る夢は、黒より暗い暗闇か?」というのは、当然「黒より暗い暗闇ではない」と反語的に使われるだろうなぁ、と思いながら、びくびくしてもう一週間過ごすことになりそうです。これ終わったら、一週間は抜け殻みたいになっているだろうなぁ、それぐらい好きな作品だ。

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