「あったでしょ、この前の爆破事件とか。みんな平気な顔してるけど、やっぱりなんとなく“今”が不安なんじゃないの。だから、思い出に浸りたくなる」(松吉改め久良沢凱)

 今回の凱さんもよく語るなぁ、と思ったけれど、考えてみれば、久良沢凱が登場するのは大西信介さんの脚本だけなので、さもありなん、という感じです。作品の特徴上、寡黙ながらも結構大西さんの脚本は雄弁に語るような気がします。まあ、一番魅せられたのは、あまり語らない「銀色の夜、心は水面に揺れることなく…前編」ですが。
 結論。すべてのエピソードひっくるめても、僕は大西脚本が好き。


 今回は、なんとなく「夢」で括りたくなるエピソードでした。

 偽物の空に本当の空が一夜だけ戻るという噂――不安な“今”ではなく、安心できる思い出があった“昔”に一瞬だけでも戻るという夢――を信じて(あるいは願って)、夜空を見上げる人々のシーンが、胸を打ちました。星を少しでも見るために、ビルの灯りが消えていくシーンとか、特に良いよね。こういう特殊な世界でもなければ、皆が都会で夜空を眺める光景を見られないと思うと、切ないですね。

 でも、星空は見えない。
 神がいるという天は、雨を降らす(別にエイプリルのせいじゃない)。

 ある種、この雨はそういう“昔”の否定でもあるのかな、と思ったり。契約者がいなかった“昔”はそれでも良かったかもしれないけれど、“今”は違う、人間と共に契約者も生きていると。スタッフ(というか、大西信介さん)が願うのは、“昔”が説く人間讃歌(人間主義?)ではなく、あくまで人間と契約者の“共存”。今回明らかに「タメ」に入った「本当の星空」がラストで帰ってくると共に、今輝いている(偽物の)星もそのまま輝き続ける、みたいな締めだったら、フツウに泣きそう。

「星は星だろ? 別に違いなんかわからないよ。昔の星も今の星も」(海月荘の大家さん)
「だけど、今輝いている偽りの星が全部消えたとしたら、それはそれで哀しいような……」(霧原未咲)
「星が消えようが、ヘンなゲートができようが、周りの状況がどう変わろうと、人の営みに変わりはない」(中略)「すべて世はこともなし、か……」(久良沢凱)


 今も昔も違いはないと豪語する大家さん。新しく生まれてしまった偽りの星が消えると哀しいという未咲さん。どんなに状況が変わろうとも、結局人の営みは変わらないと、人の強さを、世界の不変さを穏やかに語る凱さん(お前のどこがリアリストなんだ、このユートピアンが!なんて突っ込みは“今さら”だ)。

 この三人は、どちらかというと“今”を肯定している人たち。そして、これからどうなるかは、(アニメ情報誌などから)黒<ヘイ>の手に託されるらしいですが、未咲さんと李くんの手が添えられたベンチが二人の間で断絶されていたのが、かなり気になる。というか、二人の理念は分かち合えないという暗示か? あるいは、二人はもう会えないという暗示?

 いやぁ、ホントに続きが気になるなぁ。



「夢」関連ではないんですが、黒<ヘイ>が白<パイ>の首を絞めようとした辺りは胸が詰まる思いでした。自分は一人殺そうとしただけでも殺人を躊躇うのに、白<パイ>は何十人も殺しても「星流したよ。今日も一杯……」とただ「星」のことだけを語り、対価を払うだけ。人を殺すことさえも何とも思わない妹に、これ以上何もさせたくないから、首を絞めて殺そうとする黒<ヘイ>。その気持ちがわかるだけに、この辺りフツウに切ないです。それでも、首に手をかけるだけで殺せなくて涙を流す辺りで……もう、ね。

 ヤバくないですか、今回!

 とことん映像で魅せる、絵で魅せるっていう感じで、こうやってわざわざ文章にして感動を伝えようとしても、陳腐に思えてきますよ(いや、まあ実際陳腐だけどさ(苦笑))。



 そして、もうひとつの「夢」。
 今回明かされた白<パイ>の対価が「眠り」ということで、すぐさま「夢」というキーワードを想起した人も少なくないのでは? 穏やかな寝顔も(お兄ちゃんに抱かれているのもあると思うけれど)穏やかな「夢」を見ているからじゃないかな、と思ったり。

 今まで、黒<ヘイ>の対価について、「これ!」というものが思いつかなかったので、コメントを避けてきましたが、今回思いついたので、書いてみる。もちろん、黒<ヘイ>の対価がちゃんとあると仮定してのものですが。

 黒<ヘイ>と白<パイ>が「夢」を軸に対比されているとしたら、黒<ヘイ>の対価は「眠れない」すなわち「夢を見られない」ことじゃないかな、と思いました。アルマの対価「老化」やアンバーの対価「退行」といった精神的呪縛ではない対価も登場しているので、この対価は十分アリかな、と。第一、白<パイ>の対価はその逆だし(笑)。

 そういえば、黒<ヘイ>が寝ているシーンってあったかなぁ、と思うんですよ。第12話冒頭で悪夢のようなシーンがあったかと思うんですが、あれって寝ていたんでしたっけ? 僕の記憶は怪しいんで、黒<ヘイ>が寝ているシーンがあったよ! と思われる人は連絡ください。確認します。



 前回の感想で、黒<ヘイ>の能力は白<パイ>の能力が移ったものか、みたいなことを書きましたが、これ見よがしに、池のど真ん中に立っている白<パイ>とその周辺に横たわる死体は、白<パイ>の能力が電気系だったという示唆にも思えますが、うーん。

 今回ふと思ったのは、あの「BK201」といった契約者に起因するという星は本当に契約者のものなのかという疑問でした。ようは、あれって契約者じゃなくて、その「能力」に対応している星なんじゃないか、ということです。

 考えてみれば、あの星、契約者が能力を発動した時に光るという設定です。別に契約者自身に反応しているわけじゃない。あくまでも、星は能力に反応としている、と考えられる。

 そう考えれば、あの偽りの星空を消し去り、契約者を消すというパンドラの目的も、不発に終わるんじゃないかと思います。偽物の星空を消しても、契約者は能力を失っただけで依然生き残っているという展開。というか、あの前提(星−契約者)は、そういう展開のためにあえて反転させる設定だった(本当は星−能力だった)と考えると、なるほどアリかも、などと一人納得していました。まあ、それならアンバーが目の色変える必要ないよね、っていうもっともな突っ込みがあるかと思いますが(笑)。

 でも、こういう設定だと考えると、白<パイ>は「BK201」という「能力」の契約者で、その能力が移譲したから黒<ヘイ>も「BK201」(の契約者)だったという説を押せますよね。まあ、アンバーのところで頓挫するんで、逆にこの星と能力の関係は間違っている、すなわち黒<ヘイ>と白<パイ>の能力は別物という説を導き出すというのもアリでしょうか(いや、ナイ)

 いずれにしても、こうやって色々考えている間が一番楽しいという結論に至りますね。作品の考察としては今回は今ひとつでしたが、そういう意味では有意義だったなぁ、と(個人的に)。

 皆さん、あと二話盛大に楽しみましょう。

DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 4
↑黄<ホァン>さんが目印のDVD第四巻がAmazonに登録されていましたー。いや、なんかこれ異様に黄<ホァン>が格好良くないか(笑)。





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