「知ってれば良いってものでもないでしょ。知らない方が良いってこともあるんだし」(岸田志保子)

 『DTB 黒の契約者』第十九話「あさき夢見し、酔いもせず…前編」のネタバレ感想です。今回の脚本はあの「銀色の夜、心は水面に揺れることなく…」を書いた大西信介さんということで、否が応でも期待に胸を膨らませてしまいましたが……、果たして。


 くうぅー、やられた
 黄<ホァン>さんのエピソードといえば、それはもう期待していましたけれど(僕は割と親父キャラが好きなんですよ)、これほどまでとはっ! 早く後編が見たいですよ。

 言葉で多くを語らず、演出やら状景でいろんなことを語る『Darker Than Black−黒の契約者−』ですが、上記で引用した台詞なんかは痺れました。

 志保子さんが、黄<ホァン>さん(今回は久野さんと書くべきか)に近づいたのは、偶然か故意か、と考えていたのですが、あの台詞を考える限り、故意に近づいてきたと見ても良いんじゃないでしょうか。その直前、久野さんを酔わせようとしたのもポイントですね。

 というのも、磯崎静香さんの「警察のお仕事って、下手に酔って、大事なことを漏らしたりしたら大変でしょ」という台詞が伏線なわけですよ。「酔わせて大事なことを聞き出す」という。
 この台詞があるから、志保子さんが久野さんを酔わせようとしたのは、何かしら情報を得ようとしたからでは、という推測が成り立ちます。そして、さらにすごいのは、そういう前提に立ってみると、志保子さんがどれほど久野さんを想っていたかが垣間見えるわけですよ。

 もしその情報を持っている人物が久野さんだった場合、久野さんを殺さなければならない(磯崎さんが殺されたのは、つまり、そういうことだろう、と)。だけど、志保子さんは情報を得ようとして近づいたにもかかわらず(契約者であるにもかかわらず)、久野さんを愛してしまった。だから、「知らない方が良いってこともあるんだし」と言うわけですよ。知らなければ、殺さなくて済むから。



 だけど、どれほど志保子さんが想っていても、久野さんには伝わっていないのが切ないですよ。久野さんが契約者に対して憎しみ(もっといえば「不信感」みたいなもの?)を持っているのは、間違いなく志保子さんに原因があるわけで……、でも、久野さんも志保子さんのことを信じたいから、(心配して)銀<イン>に観測霊を飛ばさせたりと……、後編に備えて仕込みも十分。切なくも、余韻のある、良い「シーン」を期待しています。楽しみー。

 おそらくは、「不信」状態に陥った黄<ホァン>さんが、志保子さんをちょっとだけ「信じられる」という形に昇華して、物語を締めると思われますが、それを「信じれば救われる」的な「宗教」を交えて語る辺り、ひたすら面白いですね。

「宗教団体」が崩壊する(信仰がなくなる)のと対比するように、黄<ホァン>さんが「信じられる」形にするのかなぁ。うん、何度も言いますけれど、次回が待ち遠しくてたまらないっ!

DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 3
↑なんか、DVDシリーズのジャケット、収録の内容と関係なくないですか(苦笑)。
DARKER THAN BLACK-黒の契約者- 劇伴





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