「いーや、私はむしろ契約者であることに誇りすら持っている。合理的に判断するさ。……断る」(ノーベンバー11)

 マキが問うた「どうして契約者のくせに人間なんかに使われているの?」に(まだ)答えない辺りで、イブニングプリムローズ(以下EPR)と思想面で戦うのは、黒<ヘイ>たちではなく、MI-6なのかなぁ、と思った。


 EPRの理念は「契約者は選ばれた存在であり、人間とは違う」というもの。あまりにベタな思想に、思わず吹き出してしまったのはナイショです(笑)。

 今まで、散々契約者を人間らしく描いてきているので、この理念というか思想は打倒される以外、何の可能性も孕んでいない感じ。それが、「何故、人間に従っているの?」という先んじた問いに答える形で描かれたら、綺麗だなぁ、と思ったわけですよ。

「契約者であろうと人間であろうと関係はありませんよ。ただ、私のジョークがわからないあなたに……云々」というイメージですね(笑)。

 ノーベンバー11的に答えるなら、「ジョーク」はやはり欠かせませんと思いますが、ノーベンバー11に限定しないなら、「契約者も人間も同じ人間だ」辺りが着地地点になるかと思います。めちゃくちゃベタです、ええ(あっ開き直った)。



 アンバーの能力および対価は、『Darker Than Black−黒の契約者−』のテーマというよりは、ギミックに関わってきそうな感じでした。
 アンバーの能力は、一見すると「時間を止める」もののように思えますが、そう考えると、雨を予知してビニール傘を買ったり、王理花さんの水撒きを回避できた理由が説明できない。

 ここで、アンバーの能力は「時間操作」であって、「時間停止」はその一環に過ぎず、彼女の能力の真骨頂は時間の「早送り」あるいは「巻き戻し」にある、……と言ってしまうのは、ちょっとだけ早計ですね(苦笑)。

 でも、そこに「私ね、たくさん旅をしたよ。時間のあっちからこっちまで」という彼女の台詞と、前回ディケイドが語った「覆水盆に返らず」という諺を絡めて考えると(詳しくは前回の感想で)、当たらずとも遠からず、という感じに思えてきませんか?

 ただ(僕は少なくともそう考えていますが)彼女の能力が上述したようなものだとしても、アンバーはその全貌をEPRのメンバーにすら話していないんじゃないかなー、と思うんですよ。「時間を止められるだけ」とか語っていそうです。何せ、彼女は「裏切り者」ですからね(笑)。能力の全貌をあっさりと晒すほど、お間抜けさんではないでしょう。

 ……で、その対価というのは、どうも「肉体年齢の喪失」(結果的に若返る)というもの(だから、払える対価に限界がある)。今まで登場した契約者の対価が、基本的には自分から行える「行為」であったのに対して、アンバーの対価は「現象」とも言うべき、イレギュラーなもの。

 そういう意味では、この対価はどうなんだろうなぁ(少なくとも「失われた人間性を求める行為」ではない)、とは思いますが、アンバーは契約者としても異質なので、まあアリかなぁ、と思います。
 もはや消滅した設定のような気がしないでもないけれど、契約者が結局優先するのは「自分」であるにも関わらず、アンバーは、

「彼もね、一度だけ本気で笑ってくれたことがある。飛びっきり、抜けるような笑顔だった――。そのとき、思ったの。ああ、こりゃあ、やられたなって。あたしはきっと、この人のためなら何だってできるなって。あの笑顔がもう一度見られるなら、何だって

 と言って、「自分」のためではなく、黒<ヘイ>のために動こうとしている。EPRのメンバーとして、東京に南米の悲劇を起こそうとしているのも、黒<ヘイ>のため。
 そういう意味では、彼女も黒<ヘイ>同様に「特別な契約者」と捉えられるから、対価もまた特別な、イレギュラーなものだって、良いんじゃないか、と思ったりするわけですよ。

 ああ、でも、黒<ヘイ>のことを想いすぎて、あまり無理しないと良いけれど。「あの人のこと、見ててあげてね」と言って、銀<イン>に黒<ヘイ>を託したり、彼女の能力が自分には影響がないっぽいのが、どうもなぁ。暗い結末しか予想できない。

 黒<ヘイ>に「契約者は嘘つきで……裏切り者だ」と言わしめたのは、アンバーで、「友達に裏切られるのはつらいですよね」と言わせたのもアンバーで、でも、彼女からもらったペンダント(?)は今でも持っている。だから、今でも大切に想っていることは確か。
 黒<ヘイ>が本気で笑ったことがあるからには、そういうことなんでしょうね。でも、そこには、きっと、白<パイ>もいて、アンバーもいたんだろうから、その風景をもう一度。

 でも、アンバーの最期の台詞が「ねえ、笑ってよ」というのはガチ。……って、最期なんて言うなよっ! 縁起でもない。冗談じゃないよ、まったく(でも、ありそうなんだよなぁ、これが(苦笑))。



 前々回のイツァークの詩を考えている辺りで、この世界の昼の空はホンモノなのか、と少し疑問に思うようになった。星は偽物だけど、太陽はどうなんだ、と。
 奇しくも今回のエピソードが太陽に関連するものだったんだけど、あんまり語れることはなかったり。……正直に言いますと、星見様が何を言っているのかはっきり聞き取れないわけですよ(笑)。「憤怒かい、慈しみかい」というのはわかったけれど……、まあ、あまり考えても仕方ないかなぁ、と思ったりはするんですけどね。本筋よりも、少し脇道に逸れた辺りを探すのが楽しいですよね。人はそれを「道草を食う」と呼ぶんですが。

DARKER THAN BLACK-黒の契約者- 1 (通常版)

DARKER THAN BLACK-黒の契約者- Vol.2
↑DVDはもちろん購入決定で。ライナーノーツを絡めて、もう一度感想を書きたいなぁと思うんですが、今すぐ時間が取れるかどうかわからないです。時間が取れなかったら、ライナーノーツというか限定ブックレットの感想だけは残しておこうかと。

DARKER THAN BLACK-黒の契約者- 劇伴
↑「銀色の夜、こころは水面に揺れることなく…」で流れた「インのピアノ」が一番の聞き所かなぁ。個人的には、戦闘中に流れる曲(李くんから黒<ヘイ>に移行する時に鳴る曲)が好きなんだけど。でも、やっぱり、一番の見所は、このやる気のない猫<マオ>ですかね(笑)。




前回第15話「裏切りの記憶は、琥珀色の微笑み…(前編)」の感想へ
次回第17話「掃きだめでラブソングを歌う…(前編)」の感想へ
『Darker Than Black−黒の契約者−』の感想インデックスへ