「なあ、いつか本当の星空が戻ってくると思うか?」(黒<ヘイ>)

 今回のエピソードもまた難解でしたね。
 でも、結局の所、個人で受け取りたいように受け取ったら良いんじゃないかという結論に至りました。うん、素直に自分の感想を書こう。


 一度は「契約者が夢を見るはずない」と絶望しかかった黒<ヘイ>でしたが、ゲートが見せた束の間の「夢」によって、ある種の希望を得たんじゃないかなぁ、と思ったりします。
 それが上述した猫<マオ>への問い、そして、銀<イン>に必要のない飴をプレゼントすることに繋がっているんじゃないかなぁ。



 それはゲートの中だからこそ起こる、ありえないことだったのかもしれないけれど、今回、黒<ヘイ>がニックに見たのは、「可能性」じゃないかと思うんですね。

 黒<ヘイ>以外にも、心がある、夢を語れる契約者がいる――という可能性。
 あるいは、失ったはずの心を、夢を、契約者が取り戻せる――という可能性。

 それはつまり、(おそらくは)契約者となり心を失ってしまった黒<ヘイ>の妹が、心を取り戻せるかもしれないということ。

 その可能性を見出したからこそ、前述した、

「なあ、いつか本当の星空が戻ってくると思うか?」

 という問いを発することができたんだと思います。でも、黒<ヘイ>が本当に聞きたかったのは、

「いつか、妹に心が戻ってくると思うか」

 だったんじゃないかなぁ。



 この契約者が心を取り戻すというのは、第5話、6話のハヴォックに端を発しているのですが、その時の脚本を書いたのも、今回と同じように菅正太郎さんなんですね。

 菅さんの脚本には、契約者が心を取り戻す以外にも、実はもうひとつ共通点があります。

 それが、今回黒<ヘイ>が見つけたもう一つの可能性。



 第六話で、銀<イン>が黒<ヘイ>の袖を掴んだシーンを覚えている人も多いと思います。能動的な行動をしないはずのドールが、何故黒<ヘイ>の袖を掴んだのか。それは何を意味するのか。

 今回もまた、ぼかされてはいますが、銀<イン>は自発的に黒<ヘイ>を助けたようです。生命活動に必要なこと以外、命令されない限りしないはずのドールが何故?

 これもまた、「可能性」ですよね。
 受動霊媒と呼ばれ、心を完全に失ったはずのドールにも、心がある、戻ってくるかもしれないという可能性(この可能性は、第2話の時点ですでに掲示されていますが)。

 この「可能性」が、あの飴玉をあげるという黒<ヘイ>の行為に繋がっていると僕は思います。袖を掴まれた時、乱暴に振りほどいたのは、銀<イン>をドールとしか思っていなかったからです。

 では、今回の飴玉は?

 飴を必要としないドールとしてではなく、時には飴も必要とする人間として、これからは接していこうという黒<ヘイ>の意識の表れではないでしょうか。




前回第11話「壁の中、なくしたものを取り戻すとき…前編」の感想へ
次回第13話「銀色の夜、心は水面に揺れることなく…前編」の感想へ
『Darker Than Black−黒の契約者−』の感想インデックスへ