「私はきっとこの日を忘れない」(麻井麦)

 本番中に、声が出なくなった野乃先輩が、必死で声を出そうとしたシーンがやはり良い。美麗さんには文字で伝わったとしても、麦には言葉として、実感として伝わらなければ意味がないという野乃さんの魂の咆哮と、僕は受け取った!
 そこからの流れがまた良くて、前巻同様に、涙のブックマークが挟まれたトコロでは、何度も泣けてきます。本当に第2巻以降毎回泣かされるなぁ、自分。


 今回のベストは、やはり、野乃さんが必死に声を出そうとしたシーンでしょう。それまでの流れが、もう、感極まる! って、感じでまた良いんですね(ストレートな感動表現は、ホントに上手いと思います。桐原いづみさん、素敵です)。

 理咲のことを思い出し、桂木のことを思い出し、甲斐のことを思い出し、そして、麦のことを思い出して、そんなみんなが認めてくれて、今この舞台に立っている――

 だから、こんな所で終わらせるわけにはいかない――と、

 美麗に教えてもらった大好きな演劇を、
 こんな所で終わらせるわけにはいかない――と、

 必死に声を出して、麦を勇気づけようとする。

 ここで美麗さんにシンクロして、涙が出ないようじゃあ、この先の展開が思いやられますよ?



 そして、そこで終わらないのが「ひとひら」です。

 野乃先輩の必死の咆哮を聞いて、野乃先輩に憧れる麦が黙っていられるはずがありません。

「――…わかったわよ!」

 から始まる一連の台詞で、舞台の雰囲気を一気に変え、舞台は一気に怒濤の展開に(アニメだとこの辺り、どうするんだろう?楽しみだ。今からハンカチ用意して待ってます)。当然のことながら、僕は麦にシンクロして、また涙。どんだけシンクロすんねん!? どんだけ涙腺緩いねん!? とか野暮なことは言ってはいけません。
 ハートに響けば、男だって泣くんです

 そして――僕同様――麦に魅了された人の代表として、麦の舞台以外での姿を知っている――けれど、演劇にはまったく興味がない――きょーちゃんを置く辺り、素直に上手いなぁと思います。もちろん、ちとせとか、演劇部のクールな音響担当、川崎響とかでも、その役は十分なのですが、そこはやはり、演劇にまったく興味がない人を魅了してこそ。講演終了後に、ちゃんと「…面白かったです」と観客を代表して、麦に伝えるあたり、きょーちゃん、ホントに破格の扱い(当然のごとく、再登場します。ケイコちゃんを袖にして(苦笑))。



 その後の、解散劇も、もはや言うことはあるまい。
 というか、何が言いたいかは割とわかってしまうのではないかと思ったり(笑)。

 あっ、でも、ひとつだけ。

「二人に後を押しつけるのも嫌だしね」

 と理咲さんは言ったけれど、それはつまり、押しつけじゃなければ良いってことだよ。自分から、立ち上げたいなら、また立ち上げればいいっていうメッセージ。理咲さんらしいなぁ、ホントに大雑把な言い方(笑)。



 遠山佳代の留学について詳しくは、4巻で話すとして、でも、さわりだけでも。

 佳代ちゃんの留学も、「ひとひら」が麦を主人公とした自立物語と考えるなら、必然、って感じ。麦を変えてくれた研究会がなくなった今、佳代ちゃんと一緒にいたら、麦はやっぱり変われないと思うんですね(桐原いづみさんも、同じように思ったから、佳代ちゃんを留学させたんだと思います)。
 ある意味、佳代ちゃんにとっても、麦にとっても、お互いの存在が頸木になっているみたいなトコロがあるんじゃないかなぁ。ホントに仲が良い友達が出来ると、他の人と新しい関係を構築するのが難しくなるという経験、したことありません? まさにそんな感じで。

 そういうわけで、ここで一度離れて、またステップアップ(変化)して、また新しい関係を築くってことだと思っています。佳代ちゃんは、確実に文化祭シーズンに帰ってくるでしょうし(笑)。そこで変わった二人が再開する――、ああ、胸が躍るな。



 でも、劇中の少女の変化も、佳代ちゃんの留学による変化も、外側から変化であって、実は内側からの変化ではないですね。麦が2巻で願った「先輩のように変われますか」という自発的な変化に対する欲求はまだ叶えられていない感じです。だから、もう一山、来るんじゃない? と予測しているんだけど、さあ、どうでしょうか。
 それが研究会再開なら、良いのになぁ、と一読者なら当然思うところですが、果たして――

ひとひら 1 (1)

ひとひら 2 (2)

ひとひら 3 (3)

ひとひら 4 (4)