「む…無理…っだよ」(麻井麦)

 人前で必要以上に緊張し、声がまったく出なくなってしまう少女が、ひょんなことから演劇の世界へと引き込まれていくお話。ちょっぴり勇気を出せば、自分だって、世界だって、変わっちゃうんだよ、というテーマを演劇を通して描いていこうという作品なんだけど、

「元々不可能なものを可能にしろってもんが無理な話よ。人間やればできるなんてウソにきまってんじゃん。だめなものはだめなのよ!!」
「このマンガを全否定するような台詞を吐くなよ!」


 と、定期テストの順位発表を前に、演劇とはまったく関係ないトコロでぶっちゃけてしまう辺り、熱いです


 第三巻まで通読していくとはっきりとわかるんだけど、「ひとひら」という作品は麻井麦の自立物語でもあるんですね。自分では何も決められない、高校は親友の遠山佳代が行くところを選んだ(これはでもよくあることだけど(笑))麦が、その場から逃げるためとはいえ、自分の意志で入部届けに名前を書くというトコロから始まる、ビルドゥングスロマン。



 なんて、小難しいお話は、今回これぐらいにして、とにかく雰囲気が良い作品なんスよね。勢いよく話が進むからぐいぐい惹き込まれる。麦の演劇部員としてのライバル、神奈ちとせ(通称オリナル)の登場辺りからグッと面白くなってくる。

 野乃先輩が演劇部を辞めた理由、演劇部部長、榊美麗との関係もわかって、またまた面白くなって……。麦が一方的に野乃先輩に憧れているわけではなく、野乃先輩も表情豊かな(シャイというのは表情が豊かという意味です)麦を羨ましいと思っていることがそれとなく文脈で判断できたりして、大変微笑ましい。そういえば、榊部長も表情豊かな方ですね。すぐ真っ赤になるし(笑)。



 あと異様な雰囲気の勉強会とか、楽しいですね。ああいう部活良いなぁ。僕は中学までバリバリ体育会系(野球)、高校はバリバリ文化系(新聞)なんですが、演劇研究会ではその両方の雰囲気を楽しめる感じ。

 みんなで汗を流して一緒に目標に突き進む体育会系なノリと、和気藹々といつも楽しげな文化系なノリと……、どちらも良いですよー。



 最後の4コマ漫画で突っ込めるところがあったので突っ込んでみる。

「知ってた?日本じゃ貯金で百万を倍にしようとすると二千年かかるらしいよ」

 というのは、多分これが元ネタ↓

M.I.Q. 1 (1)


 ちなみにオリナルが麦に薦めた演劇の本はこちら↓

演劇やろうよ!


ひとひら 1 (1)

ひとひら 2 (2)

ひとひら 3 (3)

ひとひら 4 (4)