「否定するわよ」
女は言う。
「わたしは否定する。奇策士とは違う、それがわたしのやり方――わたしは何も肯定しない。わたしはわたしさえも認めない。現実も現状も現象も――限界も限定も限外も、ありとあらゆる森羅万象を否定する。事実は小説より奇なり――小説は事実より粋なり。しかしてわたしはそれを肯定しない。粋な世界に無粋な言葉で穴を開けるわ。そう、わたしこそ――例外なくすべてを否定する、否定姫」
双刀・鎚
四季崎記紀が作りし変体刀完成形十二本が一本。十二本の内、もっとも「重さ」に特化して作られたそれは、常人には運ぶことすら叶わない――。かの虚刀流当主さえ、持ち上げることができなかった双刀・鎚を、紙切れのように、縦横無尽、自由自在に扱うのは――凍空一族唯一の生き残り、凍空こなゆき。
十歳程度の純真無垢な少女が背負うことになった宿命はあまりに重く、絶対凍土の地、踊山で偶然出会うことになった孤独な少女を、虚刀流当主・鑢七花は、奇策士・とがめは、救うことができるのか――
大河ノベルもこれにて折り返し。
これ以降もまだまだ怒濤の展開がドドンと待ってるぜ、なんて軽口を叩こうかと思っていたら、ラスト一文に驚かされて……、ったく、どれだけ読者をヤキモキさせたら気が済むんだい、西尾維新さん?
◇
七花の人間性の変化(あるいは成長)が、目覚ましいけれど、今回は「否定姫」について書いてみようかと思う。すべてを否定してみせる女、否定姫、なんとなくだけど、彼女の役割みたいなものが見えてきた……多分だけど(苦笑)。「かもめは本を読まない」で
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