自分ではない他人がいるのだということを、なかったことにはできない。お互いがお互いをいないことにすることなどできなかったのだ。二人ともお互いを知っていると気づいた瞬間から、たとえ無視をしようと、すでにふれあうことは始まっていた。

 暗闇に対してたいていの人は恐怖を覚える。俺、夜大好きだぜ、とか思っている人も、子供の時暗闇に対して恐怖を抱いたことが少なからずある、と思います。その恐怖は潜在的なものなのか、あるいは教育的なものなのか、わかりませんが、何も見えない暗闇というのはやはり怖い。「かもめは本を読まない。」で続きを読む。



 アキヒロが、自分は突き落としていない、と独白したあたりで、漠然と、ああ、あの女はカズエなのか……と思った。ミチルに外に一人で出るよう諭すのも、直に自分がいなくなるからだ……と考えた。これを知ったアキヒロはどうするのだろう……、罪を被ってしまうのではないか、とさえ思ってしまいました。
 あいにく、それは違ったのだけど、初めて読む作家はやはり不安だなぁと思いました。どういう所に物語を落とし込んでいくのかわからないのが不安で、読み終わるまでずっとドキドキしている。でもそれが一番の魅力で、既読の作家からはこの緊張感は生まれない、と思っています。時々、同じ作家の本はもう読まないでいようかとも思うのですが、実行する気は全然ありません。読書が趣味でなくなったら、実行するのも良いかもしれませんね。でも、今の所その様子はありませんけれど。



 物語の始まりでは、アキヒロもミチルも、一人で生きられると考えていて、でもそれは違うと、一人では生きられないと、終盤の展開で裏返っていくのはただただ優しいなぁと思いました。がしかし、その反面、あの表紙は全然優しくない(笑)。というか、めちゃくちゃ怖いよ。作中ホラー的な展開は一度も見せなかったけれど、表紙だけはずっとホラーでしたね(苦笑)。あの写真を採用した理由が僕には皆目見当がつきません。……もっと優しい写真で良かったんじゃないですか。全体が真っ黒な写真に一粒だけ紅い優しい光を灯す、そんな写真だったら良いのに、と思ったりしますが、それは何だか狙いすぎかもしれないなぁ、とは思います。